音楽市場世界一の日本、次の一手は
(テクノロジー編集部BLOG)

2013/4/10 7:00
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 日本の音楽業界が久しぶりに明るい話題で持ちきりです。8日に国際レコード産業連盟が発表した2012年の音楽市場の世界統計によると日本は米国を抜き世界一の市場規模になりました。CDなど音楽ソフトパッケージや配信サービスなどの売上高の合計は約43億ドル(約4250億円)。1973年の統計開始以来で初めての快挙というから驚きです。

 「昨年は御社はアイドルグループでヒットを連発でしたね」「いやいやそちらも年末出したベテラン歌手のベスト盤CDが売れまくったじゃないですか」――。日本レコード協会が毎年1月に開催する賀詞交換会。その場では音楽業界関係者の笑みであふれました。各社の売り上げの大半を占める音楽CDの売り上げが、軒並み好調だっただけに当然と言えるでしょう。

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 日本レコード協会の調べでは、CDなど音楽ソフトパッケージの12年の総生産金額は前年比で10%増の3108億円。14年ぶりに前年実績を上回ったことが世界一の座を奪取する原動力になりました。若年層を中心としたアイドル人気で「AKB48」「嵐」「関ジャニ∞」などの売れ行きが良かったことが一つ。握手会参加券付きで1人で何枚も買う人がいる作品も多いようですが、音楽ソフト店に足を運ぶ消費者を増やしたことは間違いありません。加えて「Mr.Children」「松任谷由実」「山下達郎」らベテラン歌手のベスト盤の発売が中高年層の需要を喚起したことも奏功しました。

 2013年もこのまま好調が続くのでしょうか。音楽ソフト会社の幹部に質問をぶつけると決して楽観視していないという慎重な答えが多く返ってきました。最大の懸念は音楽配信の世代交代の遅れです。スマートフォン(スマホ)やパソコン向けだけみれば43%増と好調なのですが、全体では542億円と前年から25%も落ち込みました。要因は従来型携帯電話向けが4割減となったこと。一部の消費者がスマホへ買い替えた際に、音楽配信を使わなくなっているのです。

 こうした状況を打破しようと、音楽ソフト会社や配信会社は次々手を打っています。代表的なのが定額配信。毎月一定額を支払うと聴き放題になる新しい形の配信サービスです。12年にNTTドコモやKDDIらが低価格を売りに参入し、3月には音楽大手各社が出資するレコチョク(東京・渋谷)が邦楽を大量に品ぞろえて開始しました。欧米では英スポッティファイが約10ドル(約990円)を毎月支払うと2000万曲以上を制限なく聴けるサービスで人気を集めています。現在20カ国で約2400万人が使っており、日本でも根付く可能性があります。

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 しかし定額配信だけでは息の長い音楽人気は生まれないでしょう。スマホの画面はゲームなどさまざまなアプリ(応用ソフト)を簡単に切り替えることができ、移ろいやすい消費者の心はすぐに音楽以外に向かってしまいがち。デジタルの力を過信せず、アナログな工夫で消費者に日常生活の中で音楽に触れてもらう機会を増やすことが肝心でしょう。

 例えば音楽ライブ。幸い07年以降、ライブの観客動員数は右肩上がりで、11年は前年比3%増の2630万人が楽しみました。チケット販売などを合計した音楽ライブの市場規模も11年は1634億円と前年を超え好調です。例えば新潟県湯沢町で毎年開かれるフジロックフェスティバルは、もはや夏の風物詩。熱心なロックファンを中心に12年は延べ14万人が現地へ駆けつけています。

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 問題は現時点では必ずしも音楽ライブの盛り上がりがCDや音楽配信の売り上げ増に結びついていない点です。せっかく音楽との接点を積極的に築こうとするファンがいて彼らの手元にはスマホがあるのです。ライブ会場でアプリ経由で簡単に楽曲を購入してもらいやすくするなど、新たな販促に知恵をもっと絞ってもよさそうです。

 国内最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション」ではランウェイをモデルが歩くたびにその着ている服を気に入った女性が、手元のスマホで電子商取引(EC)サイトにアクセスし次々と同じ服を買っていきます。チャンスはすぐ目の前にあるのです。ファンを音楽に夢中にさせたうえで利益をアーティストにきちんと還元させ、再び良い音楽をファンに届ける仕組みをどう作るか。好循環を作れればまだまだ音楽業界は活況が続くのではないでしょうか。

(高)

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