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目指せ起業大国、失敗ですべて失う慣行変えよう
伊佐山 元(WiL 共同創業者兼最高経営責任者)

2014/5/25 7:00
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 日本からシリコンバレーを訪れる人は後を絶たない。ゴールデンウイーク中も、数人の政治家や官僚が訪れた。日本でも成長戦略の実現に向けて、米国経済の成長のけん引力になっているシリコンバレーから何かを学び、感じ取りたいのであろう。リスクを取ることを奨励する社会を作ることは、今後の日本の大きな課題だ。

■リスクは「計算された行動」

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

 「ベンチャーはリスクが大きいから、なかなか日本人にはなじまない」「制度を欧米型に変えても、日本は農耕民族で、国土も安定しているから、ベンチャーは根付かない」――。よく聞く話だ。もっともらしく聞こえるが、そもそも「リスク」という言葉の解釈が違う。

 日本語で「ベンチャー」や「リスク」という言葉を聞くと、何とも危なっかしい行為で、まともな教育を受けて育った人間には無縁の世界のように感じる。それはギャンブルや投機といった行為を想起させる。失敗した場合は、すべてを失い復帰不能な世界観だ。

 ところがシリコンバレーでは、「リスク」には「計算された行動で、うまくいった場合の成果が大きい」という意味合いが強い。つまり、向こう見ずに攻めることや、猪突(ちょとつ)猛進することではなく、「スマートに失敗する」という要素が強い。失敗しても、すべてを失うことはない。再トライの機会がある。

 このような差異を生むようなビジネス上の慣行が、日本には根強く残っていることも原因の一つだ。例えば、ベンチャー企業が増資する時には、投資家がベンチャー経営者に株式を買い戻すことを要求する権利が契約書に盛り込まれることが多い。また、金融機関で借金した場合は、個人の資産も担保に含まれてしまう。これでは、いくらベンチャー支援の制度や資金が世の中に増えようとも、実態としてリスクマネーの体をなしていない仕掛けがある以上、個人の資産も名誉もすべて失うような行動は、まともな人間であれば取るはずが無い。

 私は、ベンチャー起業家は、ベンチャー投資家(その多くはベンチャーキャピタル)の資金で思う存分自分の理想を追求すべきで、個人の資金や資産はベンチャーと切り離すべきだと考えている。失敗したときは、お互いさま。そこから何かを学ぶ限り、失敗とは言わない。私がよく口にするのは、「シリコンバレーのベンチャー経営者はうらやましい。人のカネで思う存分好きなことやって、うまくいったら大金持ち。失敗しても、また違う金持ちから出資を受けてトライすればよい。そりゃ優秀な人間であればあるほど、大企業に就職するよりもベンチャーを選ぶだろうな」という話だ。

■再挑戦の可能性を与え続ける環境を

 日本が起業大国を目指すのであれば、ベンチャーに挑戦する人間を適度に守り、再挑戦の可能性を与え続ける環境づくりが必須だ。その意味で、くだらない買い戻し条項や、過度な個人保証に基づく融資は止めるべきだ。そんな制度があるから、まともなベンチャーキャピタルが日本からは育たない。金融側もプロとして、もっと真剣に審査して、リスクを取り、失敗したら取り返す投資をすればよい。

 リスクを取ること。世界的に見れば、社会も安定していて、裕福な社会を持つ日本であるからこそ、もっと一般的な行為にしなければならない。多少の失敗を吸収する富がこの国には存在する。新しいことに挑戦したことを評価して、雇用してくれる企業も増えている。仕事がなくなっても、そう簡単には飢え死にはしない。日本の優秀な人材誰もが「計算されたリスク」を取れる社会にするために、全力でベンチャーへの挑戦者を応援し続けたい。


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