改正臓器移植法1年、家族承諾で脳死移植急増
過去最多の4倍超に

2011/7/17付
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 本人の意思が不明でも家族の承諾だけで脳死での臓器提供が可能になった改正臓器移植法施行から17日で1年。この間の脳死移植は55例と、過去最多だった年の13例の4倍超に急増した。同時に可能となった15歳未満の小児からの脳死下での臓器提供も1例あり、小児を含めより多くの命が救われるようになった。一方で移植を待つ患者が多い状況は変わっていない。

 「大切なことは患者と家族に寄り添う気持ちだと知った」。17日、東京都内で開かれたシンポジウムで、九州大学病院(福岡市)救命救急センターの野田英一郎医師はこう語った。昨年11月と同12月に、脳死となった患者の家族承諾での臓器提供を2度経験。「救急医としての考え方を変えた」という。

 「患者の死は救急医にとって敗北」と考え、脳死状態と判断しても臓器提供は考えなかった。だが法改正をきっかけに初めて家族に脳死移植の選択肢を示し、移植後に家族から臓器提供できたことを感謝するメールを受け取った。「救急医は人のために役立ちたいという提供を承諾した家族と、移植を待つ患者の懸け橋になれる」と考えるようになったという。

 脳死移植を認めた臓器移植法の施行は1997年で、昨年7月17日の改正法施行までの約13年間で86例しかなかった。改正法施行後1年で週1回ペースの55例となり、過去最多だった2007、08年(ともに年13例)の4.2倍に。55例のうち約9割の49例は家族承諾で、法改正がなければ6例のみだったことになる。

 日本臓器移植ネットワークによると、提供を承諾した家族には「身体の一部が誰かの身体の中で生きていてくれればうれしい」との声が多く、「誰かの役に立った」という思いが家族の死を受け入れることにもつながっているようだ。

 一方、法改正で可能となった脳死の15歳未満からの臓器提供は、4月の1例のみ。特に小児の心臓移植は、1億円を超す経費を募金などで集め海外で受ける移植が最後の望みである状況が続く。

 ある大学病院の救急医は「脳死状態の小児の親に脳死移植の選択肢を提示したが、『まだ心臓が動いている』として望まなかった」という。「児童虐待のおそれがある場合に、脳死移植を認めない判定基準が厳しすぎる」という指摘もあるが、救急医は「子供の死を受け入れにくい親の心情が強く影響しているのではないか」と話し、親が脳死を受け入れる難しさを実感している。

 心臓停止後に移植できるのは腎臓、膵臓(すいぞう)、眼球のみだが、脳死ならば心臓、肺、肝臓など多くの臓器を移植できる。法改正前の脳死と心臓死を合わせた移植件数は09年が213例だったが、今年は6月末までの半年間だけで186例。2倍近い患者が救われている。

 ただ小児を含めて臓器移植を希望して移植ネットに登録している患者は6月末現在で心臓が177人、肺が150人、肝臓が352人。移植件数は増えても法改正を受けて登録も増え、1年前とほぼ変わっていない。

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