「牛置いて逃げられぬ」 福島第1原発近くの畜産農家
屋内退避区域 妻と2人、牛舎守る

2011/3/17付
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 福島第1原発に近い被災地には、牛などの畜産農家も多い。飛散する放射線への恐怖は高まるが、「家族同然に愛情を注いできた牛を置いて逃げ出せない」と、踏みとどまる農家もある。

 福島県東部を縦断する阿武隈高地。東側のなだらかな丘陵地帯には豊かな草原が広がり、酪農業が盛んだ。南相馬市の但野忠義さん(65)は40年前からこの地で乳牛約30頭を育てる。第1原発からの距離は約25キロで、4号機で火災が発生した15日に屋内退避の対象範囲になった。

 「放射線は怖い。ただ息子同然の牛を死なすのは嫌だ」と但野さん。現時点では避難区域ではないが、同じ集落の約15軒の酪農家のうち半数はすでに牛を残して避難した。但野さんも16日、「将来の健康に影響があるといけない」と、酪農を手伝う同居の長男(39)を避難させ、今後は妻と2人で牛舎を守るつもりだ。

 近隣に住む親類は15日に放射線量の検査を受け、「(放射線を洗い落とす)除染が必要なレベル」と判断されたという。放射線への恐れは強まる一方で、エサやりと搾乳以外は外出せず、帰宅後にはすぐ衣服を洗い、風呂に入っている。「それで放射線が消えるか分からないんだけど……」。付近に防災無線はなく、つけっ放しのテレビに不安の目を向ける。

 「家畜が死んだら、誰が補償してくれるのか」と漏らすのは、原発から約23キロ地点で養鶏業を営む田村市都路町の男性(58)。約100万羽の養鶏に、家族と従業員ら約40人の生活が懸かる。今後、避難指示の範囲がさらに拡大した場合にどうするか。「命は惜しいが、判断はまだできない……」と声を詰まらせた。

 原発から約33キロ地点の田村市常葉町で黒毛和牛19頭を育てる白石道枝さん(53)も「この子たちは1日でも世話ができないと病気になりやすくなる」と避難しない理由を説明。「事故が収まるよう毎日祈ることしかできない」と話している。

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