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「きたないはきれい」石炭火力の挑戦
編集委員 西條都夫

2010/4/26 9:00
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 「きれいはきたない。きたないはきれい」。シェークスピアの「マクベス」に出てくる魔女の台詞に、こんな言葉がある。この言葉に触れて思い浮かべたのは、(やや唐突ながら)石炭火力発電のことだ。

 地球温暖化問題が深刻化するなかで、二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭火力発電は「悪玉電源」に分類される。低炭素型の原子力発電や太陽光が脚光を浴びるなかで、産業革命以来の「古豪エネルギー」の石炭はどことなく居心地が悪そうだ。

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 だが、石炭は他の化石エネルギーにはまねのできない美点も多々ある。

 1つは埋蔵資源量が豊富で、向こう100年以上にわたって枯渇の懸念がないこと。もう1つは、世界全体にバランスよく分布し、中東などに偏在する石油に比べて、地政学リスクの影響を受けにくいことだ。投機マネーの流入で価格が乱高下する度合いも、石油や天然ガスより格段に小さい。

 このため中国とインドでは発電量全体のうち石炭火力がそれぞれ81%と68%を占め、米国でもその比率は49%に達する。石炭産出国でもあるこうした国々にとって、石炭火力を捨てる選択肢はあり得ないだろう。むしろ石炭火力をクリーンなものにすることこそ地球規模の課題である。

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 幸い日本は「きたない」を「きれい」に変えるクリーンコール技術に優れている。燃焼効率のいい超々臨界圧(USC)と呼ばれる新型の発電所が2000年前後から続々と実用化し、世界から注目されている。昨年7月に稼働を始めたJパワーの磯子火力発電所(横浜市)の新2号機は43%という熱効率を達成し、英BBC放送から「世界一クリーンな石炭火力」と称賛されたという。

 Jパワーの竹股邦治取締役によると、「これまで亜臨界圧という旧式の技術をつかってきたアジア各国も高効率の超臨界圧、超々臨界圧にシフトし始めた」という。インドは合計で80ギガワットの超臨界圧設備の導入を計画中。インドネシアやベトナムでも国内炭の不足や温暖化防止の観点から効率のいい超臨界圧導入に前向きだという。

Jパワーは石炭復権に向け若松研究所(北九州市)でガス化複合発電の実証実験をしている
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Jパワーは石炭復権に向け若松研究所(北九州市)でガス化複合発電の実証実験をしている

 すでに技術の陳腐化した亜臨界圧では中国勢などがコスト競争力を発揮するのに対し、「超臨界圧以上なら日本勢に技術的に一日の長がある」と竹股取締役はいう。仮に米中印の石炭発電3大国の効率が日本の新鋭設備並みに上がれば、年間のCO2削減量は13億トン。日本の総排出量に相当する炭酸ガスがそっくり削減できる。

 ただし、チャンスを生かすためには課題もある。1つは機器をつくるメーカーや運転技術に習熟した電力会社、そして資金を提供する金融機関(公的機関含む)など日本全体で売り込みの体制を整えられるかどうか。

 もう1つは「クリーンコール技術」の意味合いを国際社会に認知させ、石炭火力を効率化する動機づけを多くの国にもってもらうことだ。CDM(クリーン開発メカニズム)は削減したCO2を途上国とそれに協力した先進国で分かち合う仕組みだが、国連のCDM委員会は環境団体などの批判を意識してか、石炭火力のCDM認定に厳しいハードルを課している。

 だが、石炭火力を今後も人類が手放せないとすれば、その効率化は本来奨励すべきことであり、効率化投資を促す枠組みが不可欠だ。「温暖化ガスの25%削減」と景気のいい数字は打ち上げたものの、具体策の見えない民主党政権。石炭火力のCDM化を国際社会に働きかけるなど、日本と相手国双方にメリットのある制度づくりに知恵と熱意を見せてほしい。

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マクベス、石炭、CO2、太陽光、Jパワー、CDM、火力発電、石油、化石エネルギー

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