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[FT]欧米が困惑するトルコ大統領の独裁(社説)

2016/4/4 6:30
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 ワシントンの核安全保障サミットのため訪米しているトルコのエルドアン大統領は、メリーランドのイスラミックセンターの開館式に同氏を招待したオバマ米大統領と1対1で会談する予定はない(1日時点)。代わりに、バイデン副大統領と会うことになりそうだ。バイデン氏は1月にアンカラを訪れた際、エルドアン氏の主導でスパイ容疑で提訴され裁判にかけられている新聞編集者に味方する発言をし、エルドアン氏を激高させた経緯がある。

 また、エルドアン氏はこの裁判に必ず出席するドイツと欧州連合(EU)の外交官らをののしっている。独公共放送ARDがエルドアン氏の独裁者としての気まぐれを風刺したミュージカル風の動画を放送したことにも腹を立てている。

 同氏が批判を寛大な心で受け止められないことは明らかだ。大統領就任後の18カ月間で同氏は1845人に名誉毀損罪を適用した。このことはメルケル独首相とEUが、急増する欧州へのシリア難民流入を制限するための気乗りのしない取引でトルコ政府と合意するうえで、障害にはならなかった。実際、交渉が進んでいる最中に、エルドアン氏のいいなりになっている裁判所が同氏に批判的な「ザマン」のメディアグループを政府管理下に置くと決めている。

 だが今週、ドイツとEUは言論の自由について一歩も引かない構えをみせた。欧州諸国は、戦略的な役割を担う北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でEUの加盟国候補のリーダーでありながら、民主主義の価値を公然とさげすみ、法の支配を踏みにじるエルドアン氏との融和政策に今後制限をかけるだろうか。

 歯止めがきかない移民流入にEUがパニックになっている状況が、欧米諸国がエルドアン氏に借りをつくる結果を招いている。ギリシャに向けて出発する、ほとんどがシリアからの難民を送り返すことにトルコ政府が合意するのと引き換えに、EUは既にトルコにいる250万人のシリア難民らを毎年7万2000人ずつ引き受けて域内に再定住させる。緊急事態の規模が大き過ぎてこの数字は小さく見えるが、このプロセスの実施は国際法の下では難しいかもしれない。トルコ政府が最も評価している合意項目――トルコ人がシェンゲン条約に加盟するEU各国をビザなしで自由に移動できるようにするという約束――は政治的に履行できないかもしれない。

 また、この他にも長い間行き詰まっているEU加盟交渉を再開する約束があるが、欧州クラブのルールを順守する意思がエルドアン氏のトルコにないことは、日々の行いからすぐに証明されるだろう。例えば先月、トルコ政府は治安部隊とクルド人武装勢力との間で再燃した紛争の停戦を求める嘆願書に署名したとして3人の学者を投獄した。3人は主に(この衝突が)クルド人によるテロ行為だという政府の主張に倣わなかったことをとがめられている。

 エルドアン氏は米国とも衝突してしまいそうだ。トルコ南東部で同氏が展開するクルド労働者党(PKK)との戦いは、議会で60議席を持つクルド系の国民民主主義党(HDP)との衝突に発展しようとしている。トルコ政府、そしてPKKと同盟関係にあるシリア系クルド人武装勢力との衝突激化のリスクは高まっている。トルコ国境にまたがる占領地で自治を宣言している後者は、米国が過激派組織「イスラム国」(IS)に対抗する攻撃部隊として重視し空爆で援護する集団だ。イスラム色の強いトルコ政府はISの問題をあまり重要視していない。

 エルドアン氏がHDPを攻撃するようなことがあれば、欧米は同氏の独裁主義について本当に決意を固める必要がある。HDPに対する攻撃はクルド人をさらにPKKの武装集団に近づけ、内戦のリスクを高める。エルドアン氏の目的の一つは、HDPの議席のいくつかを選挙で奪回し、憲法を改正したり議会と裁判所から権力をさらに奪ったりするため必要な過半数を獲得することだ。同氏は、自らの実行力のある統治によってのみ安定がもたらされると言う。すべての証拠が逆の方向を指しているのだが。

(2016年4月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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