若者のパソコン離れ、「新たなデジタルデバイドに」
橋元良明・東京大学大学院情報学環教授に聞く

2016/3/13 3:30
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 スマートフォン(スマホ)で最初にネットに触れる「スマホネーティブ」世代を中心に若者のパソコン離れが進んでいる。長年にわたって日本人の情報行動を分析している東京大学大学院情報学環の橋元良明教授に、若者のパソコン離れの現状や、今後の懸念などについて聞いた。(聞き手は本田幸久)

東京大学の橋元良明教授

 ――若者世代の情報行動の変化について、どう分析していますか。

 「私たちは1995年から5年おきに2015年まで、全国の13~69歳(95年のみ13~59歳)の男女を対象に情報行動の大規模調査を続けてきた。結果をみると、近年はとくに10~20代でスマホなどのモバイル端末を通じたインターネットの利用時間が大きく増えている。用途はソーシャルメディアが圧倒的に多い」

 「2010年を過ぎたあたりからスマホの使い勝手が非常に良くなり、11年には若者に人気の無料対話アプリ『LINE』がサービスを開始したことも影響しているだろう。20代ではまだパソコンを利用する時間も一定量あるが、とくに10代でのパソコン離れが著しい。パソコンは立ち上げるのに時間がかかるうえに重くてかさばり、価格も高額だ。多くの若者にとってほとんどの用途はスマホだけで足りてしまうので、あえてパソコンを持つ必要がなくなっている」

 ――海外と比べても日本の若者のパソコン離れはとくに進んでいると言われます。

 「米国や韓国などの若者ではパソコンを利用する人もまだ多く、日本の若者のパソコン離れは海外より進んでいると思う。どうしてここまで急速にパソコンの利用率が低下したのかはよく分からない。日本人は手先が器用なのでスマホの操作に適していることなどが影響しているのかもしれない」

 ――パソコンをうまく使えない大学生が増えてきているという話も耳にします。

 「東大生に限ればみなパソコンを問題なく使いこなしているが、非常勤で教えに行っている別の大学などの様子を見ると、自分のパソコンを持っているという学生は非常に少ない。(学力が)中程度以下の大学ではうまくタイピングをできないという学生も多く、リポートを書くのもスマホで済ませているという話も聞く」

 ――若者のパソコン離れは今後、日本社会にどのような影響を与えるでしょうか。

 「学校を卒業して社会に出れば、ビジネスの現場でスマホというわけにはいかない。複数の作業を同時に行う『マルチタスク』などを考えればスマホやタブレット端末では不十分で、複雑な仕事をこなすのにパソコンなしで済むとは考えられない」

 「パソコンの苦手な若者でも(企業などで)少しトレーニングをすれば技能はすぐに獲得できるだろう。ただ、すべての人がこうしたトレーニングの機会を得られるわけではない。パソコンを使わなくてもできる仕事しか得ることができず、スタートラインで差が付いてしまう事態は十分に考えられる。かつて言われたような世代間でのデジタルデバイドは解消したが、若年層がパソコンによる高度な技能ができる人とそうでない人に分断され、新たなデジタルデバイドとなっていくかもしれない」

 ――今は初等・中等教育でも情報教育が幅広く実施されています。改善点はありますか。

 「中学校などの情報教育ではパソコンの代わりにタブレット端末を導入しているところも多く、タイピングなどの技能が十分に身についていないケースがある。タブレットの利用も決して悪いことではないが、もう少しパソコンを使ったマルチタスクなどを教えていく必要があるのではないか」

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