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脅威は日常に潜む 作家・綿矢りささん (3.11を胸に)
家族 再生へ

2016/3/11 3:30
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 東日本大震災が発生した時は京都に住んでいて、東京にいた父や知人が心配になって電話をかけた。津波の被害を知った時、地震の揺れそのものよりも海が脅威になるという認識は全然なかったので、すごいあわててしまった。自分がその場にいたらきっと何もできなかっただろうと思った。

 わたや・りさ 京都府出身、32歳。早稲田大学卒。2004年「蹴りたい背中」で芥川賞を史上最年少で受賞。巨大地震に見舞われた首都で暮らす大学生らを描いた「大地のゲーム」を著した。
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 わたや・りさ 京都府出身、32歳。早稲田大学卒。2004年「蹴りたい背中」で芥川賞を史上最年少で受賞。巨大地震に見舞われた首都で暮らす大学生らを描いた「大地のゲーム」を著した。

 数カ月後に訪問した宮城県気仙沼市の中学校では、書きためた小説のデータごとパソコンが流されたという文芸部の女の子の話が忘れられない。波にさらわれて何もない港周辺の景色と、真っ青な空のコントラストが胸に刺さった。

 震災以降、自分の中で地震に対する認識が大きく変わった。私生活ではいつ起きてもおかしくないと気になって、無意識のうちに「今揺れたらどう逃げよう」と考えるようになった。

 小説でも雨が降るくらいの日常的な自然現象として、気付いたら地震の場面を書くようになった。当時連載していた「かわいそうだね?」では終盤に地震が出てくるし、続いて書いた「大地のゲーム」は近未来に起きた巨大地震を巡る物語だ。意識的にというより当時は地震のことで頭がいっぱいだったんだと思う。

 書きながら「故郷の大地が揺れた時、人々はその大地に対してどう思うのか」と考えていた。事故や事件で人が死んだら怒りや憎しみが生まれるけど、東日本大震災や当時小学生だった阪神大震災の時も、自然への畏怖や悲しみはあっても、揺れた大地を本気で憎む人はいなかったと思う。

 2014年の結婚を機に東京に移り住んだ。ある日、乗った電車が駅に止まった時に結構大きな揺れがきた。私は怖くてすぐ電車を降りたけど、他の乗客は反応せず。そのまま電車は発車して、1人ホームに取り残された。地震に対する人々の意識が薄れているのか、慣れなのか、私との違いを実感した。

 震災を風化させないために私にできるのは、被災者の気持ちをリアルにとらえて、真正面からではなく想像力を付加して作品として表現すること。地震は日常に潜む脅威だ。いつでも起こりうるけど、例えば順風満帆な時と落ち込んでいる時では、受け止め方が全然違う。小説の中でも、突然起きて日常を覆すものとして著したい。

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