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マイナス金利はペナルティー

2016/2/1 8:48
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 マイナス金利という用語を使うから、一般の人たちには分かりにくくなる。要は、ペナルティー金利を課すということだ。分かりやすく解説してみよう。

 発端は量的緩和。巨額マネーが日銀から民間銀行の日銀口座に振り込まれた。ところが、民間の資金需要は盛り上がらない。銀行サイドも不良債権の学習効果で、貸し渋りが目立つ。そこで、量的緩和マネーの多くが、日銀の当座預金に預けられていた。その額は250兆円あまり。業界用語では「ブタ積み」と呼ばれる。

 ところが、民間銀行が、おカネをただ日銀に預けておくのでは、世の中のためにおカネが生きた働きをしない。それでも、銀行から見れば、ゼロ金利の時代に0.1%を得られる。民間銀行の企業行動としては、当然の「資金運用」だ。しかし、マクロ的に見れば、その結果250兆円もの巨額マネーが日銀に退蔵されるという「合成の誤謬(ごびゅう)」が生じた。しかも、0.1%の金利の総額年2000億円強は、最終的に国民負担だ。その国民が銀行預金するときは、ゼロに近い金利しか得られない。

 そこで、以前から、日銀が民間銀行に払う「付利」もゼロ金利方向に下げる案は議論の俎上(そじょう)にあった。民間銀行が安易なブタ積みに走らず、日銀が民間銀行に「汗を流して優良融資先を探せ」と言わんばかりにハッパをかけるごとき発想だ。しかし、そもそも民間資金需要が停滞しているときに、果たして有効か、との懐疑論が根強かった。そこで、黒田東彦総裁が出した結論は、「付利」をゼロにするのではなく、さらに踏み込んで、民間銀行のブタ積み預金に対して、0.1%のペナルティーを課すという方法だった。

 しかし、民間資金需要の低迷は実体経済に根差す構造要因であり、金融政策の限界を超える。結局、マイナス金利政策から期待できるのは、黒田総裁がかねがね言い続けてきた「必要とあれば躊躇(ちゅうちょ)なく調整する」との強い決意を表すアナウンスメント効果。さらに、本陣の第3の矢の構造改革が結果を出すまでの、時間稼ぎにとどまるという限界は見えている。

 マーケットは当面熱烈歓迎しても、その高揚感相場の持続性には疑問符がつく。

 市場の反応については「サプライズ」といわれるが、1月25日の時点で、本欄はヘッジファンドなどの日銀追加緩和議論では、マイナス金利がもっぱらトピックになっていたことを伝えた。

 その理由は至極簡単で、欧州中央銀行(ECB)が、量的緩和とマイナス金利の合わせ技をすでに実行しているからだ。だから、日銀がいまだ手を付けていない追加緩和といえば、マイナス金利という反応だった。ただし、ECBは、まずマイナス金利導入から始め、追加的に量的緩和に踏み切っているので、日本と順が逆だ。

 それでも、ECBの合わせ技にもかかわらず、欧州連合(EU)圏の物価上昇率は安定目標2%にはほど遠い。LTROと呼ばれた長期流動性供給オペを行ったときも、結局、供給されたマネーを民間銀行が有効活用できず、ECBに返済されてしまった、という苦い体験も経てきている。

 加えて、金利水準が押し下げられたので、欧州の民間銀行が利ザヤを稼ぐことが困難になり、欧州の銀行株は大幅に売られている。

 「デフレ」では日本が先輩格ゆえ「欧州経済の日本化」が懸念されているが、マイナス金利となると欧州のほうが先行して経験済みなのだ。

 現在、ECBのマイナス金利は0.3%まで進行して、ほぼ限界といわれる。劇薬ゆえ、投入量も「経過観察」しつつ無制限とはいかない。

 この事例から推せば、日銀には、まだ0.2%程度の「マイナス金利利下げ」という政策ツールは残る。金利政策は伝統的金融政策だが、マイナス金利利下げとなると、伝統的とはいいかねる。未体験の海図なき航海にともなう不透明感は残る。

 マーケットの反応は、ヘッジファンドなどの株買い・円売りがまず顕在化しそうだ。1月は中国発世界株安連鎖だったが、2月は日本発世界株高連鎖の可能性さえある。しかし、欧米年金などの長期マネーは、日銀金融政策の限界を見極め、相対的に、甘利リスクのアベノミクスへの影響度を重く見る傾向がある。マイナス金利政策の賞味期限は長くないようだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://gold.mmc.co.jp/toshima_t/index.html
ツイッター(http://twitter.com/#!/jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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