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遠隔診療、事実上解禁 「ソーシャルホスピタル」へ前進

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2015/11/24 6:30
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■「ソーシャルホスピタル」実現にも関わる

 病気になってからの診断・治療から、未病段階での健康管理や重症化予防へ。病院でのケアから、地域や街、家庭といった日常生活の中でのケアへ―─。政府が打ち出した遠隔診療の推進はこうした、社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」の実現に向けた医療のパラダイムシフトと深く関わっている。「医療資源を効果的・効率的に活用」し、医療費を削減するための仕組みづくりに、遠隔診療が重要な役割を果たすと期待されているのだ。

日経デジタルヘルスが提唱するソーシャルホスピタルの概念図(イラスト:楠本礼子)
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日経デジタルヘルスが提唱するソーシャルホスピタルの概念図(イラスト:楠本礼子)

 例えば、高齢者が要介護状態となっても住み慣れた地域で生活を続けられるようにする地域包括ケアシステム。その推進は遠隔診療の推進にも「大きく影響する」(日本遠隔医療学会の長谷川氏)。離れた場所にいる医師と患者をつなぐ遠隔診療のニーズは、在宅中心のケアにおいてより高まるからだ。

 医療情報の専門家で遠隔医療への造詣も深い京都大学 教授/医学部附属病院 医療情報企画部長の黒田知宏氏はより広い視点から、遠隔診療の必要性を説く。対面診療が必ずしも必要ないと判断される患者に通院を強いることは「社会全体の労働力、すなわち生産性を低下させる」(黒田氏)。同氏は医療側のリソース確保の面からも、遠隔診療は有効とみる。

 臨床の現場に立つ医師からも遠隔診療の活用を望む声は強い。お茶の水内科の五十嵐氏もそうした医師の1人。同氏が遠隔診療の活用を訴えるのは、高血圧症やメタボリックシンドロームなど、重大な疾患につながる生活習慣病はできる限り「上流(早期)で食い止めることが大切」(五十嵐氏)だからだ。

■時間的制約からも解放される

お茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏
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お茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏

 五十嵐氏のもとを訪れる患者には多忙なビジネスパースンも多く「通院する時間を持てないばかりに、治療を中断してしまう」(同氏)。結果として、薬の内服を続けさえすれば良好な状態を保てる症例でも、重症化してしまうケースがしばしばあるという。

 離島やへき地の患者のように物理的制約があるわけではないものの、こうして時間的な制約から孤立してしまう患者が都心部には多い。遠隔診療はそうした患者に手を差し伸べる手段ともなる。

■新たなエビデンス生む

 診断のエビデンスの観点からも、遠隔診療には追い風が吹き始めている。例えば、日本高血圧学会(JSH)が2014年4月に発行した「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)。医療機関で測る「診療室血圧」と家庭で測る「家庭血圧」の診断が異なる場合、家庭血圧を優先するとの内容が初めて盛り込まれた。

 病院で測る値に比べて「遠隔でモニタリングした値は“精度が落ちる”のが常識だったが、むしろ(診断材料としての)精度は高い可能性がある」(五十嵐氏)。それにお墨付きを与えた事例の1つが、同ガイドラインというわけだ。

 このほか、政府による規制改革実施計画の「有用な遠隔モニタリング技術の評価」の項目でも、睡眠時無呼吸症候群に対する治療法(CPAP療法)の遠隔モニタリングの評価を検討するとの内容が盛り込まれた。社会問題化している睡眠時無呼吸症候群についても、診断や治療方針に関する新たなエビデンスを遠隔モニタリングが生みだす可能性がある。

 現在、日常のバイタルデータに基づく予防医療的な行為には基本的に保険点数が付かない。遠隔モニタリングが生む新たなエビデンスが、その状況を変える起爆剤になると期待されている。

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