ニュースの深層

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

遠隔診療、事実上解禁 「ソーシャルホスピタル」へ前進

(1/4ページ)
2015/11/24 6:30
共有
保存
印刷
その他

日経デジタルヘルス

 離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う「遠隔診療」。これまでは「原則禁止」と認識され、活用が進んでこなかったが、その状況が変わりそうだ。きっかけは厚生労働省が出した1本の通達。政府が遠隔診療を推進することは、社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」の実現とも深く関わる

 東京都心で働くビジネスパースンなどを対象に内科診療を行っているお茶の水内科 院長の五十嵐健祐氏は2015年夏のある日、医療関係の知人や法律の専門家と熱のこもった議論を交わしていた。

 テーマは、同年8月10日に厚生労働省(厚労省)が各都道府県知事宛てに出した1本の通達である。「臨床医の立場から、この通達をどう解釈したらよいか」─―。議論は長時間、尽きなかった。

■事実上の「解禁」

 議論の対象となった通達は、互いに離れた場所にいる医師と患者を情報通信機器でつないで行う診療、いわゆる「遠隔診療」に関するもの。同省が過去の通知で示した遠隔診療の適用範囲を、必要以上に狭く解釈しなくてよいことを強調する内容だった。

 これまで遠隔診療は、離島や僻(へき)地の患者を診察する場合など、対面診療が物理的に難しいケースを除いて「原則禁止」と捉える医療従事者が多かった。患者との対面診療を原則とする医師法第20条への抵触などを恐れてきたためだ。

 遠隔画像診断のように、医師同士をつなぐ「Doctor to Doctor(DtoD)」の領域では遠隔医療の活用が比較的進んでいるのに対し、「Doctor to Patient(DtoP)」の領域での活用が遅れてきた理由がここにある。

 今回の通達では、厚労省が遠隔診療を事実上解禁─―。関係者の多くがそう受け取った(図1)。心電や呼吸状態などを計測できるウエアラブルセンサーを手掛ける米Vital Connectの大川雅之氏(Vice President and General Manager, Japan)は、今回の通達は「遠隔診療に関心を持つ者にとっては大きなインパクトがあった」と話す。

図1 潮目が変わる
画像の拡大

図1 潮目が変わる

 社会や医療現場からの要請(ニーズ)、それに応える技術(シーズ)の両面からも、遠隔診療の活用が期待される場面は確実に増えている。変わり始めた遠隔診療の潮目。それを読み解く上で、まずは今回の通達の中身を見ていこう。

■事前の対面診療は前提にあらず

 厚労省が8月10日に出した通達は、同省が1997年(平成9年)に出し、2003年と2011年にその一部を改正した「平成9年遠隔診療通知」をベースとするものである。

 平成9年の通知で厚労省は、遠隔診療に対する「基本的考え方」を示した。診療は医師と患者が「直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべき」というものだ。医師法第20条を踏まえた内容である。

 ただし、直接の対面診療と「同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」と注釈をつけた。そしていくつかの「留意事項」を示し、遠隔診療の適用が認められる場面を具体的に挙げた。

 例えば、「在宅糖尿病患者」を対象に、「テレビ電話等情報通信機器を通して、血糖値等の観察を行い、糖尿病の療養上必要な継続的助言・指導を行うこと」といった内容である。

 この通知を多くの医療従事者は、遠隔診療はあくまでも「原則禁止」であり、厚労省が挙げた事例でのみ例外的に許されると解釈してきた。厚労省の事例をいわば“ホワイトリスト”と見なしてきた。

 これに対し今回の通達では、平成9年遠隔診療通知の「基本的考え方」や「留意事項」で挙げた事例を必要以上に狭く解釈しなくても良いことを強調した。明確化したのは次の3点だ(図2)。

図2  事実上の「解禁」
画像の拡大

図2  事実上の「解禁」

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

関連キーワードで検索

厚労省遠隔診療ウエアラブル

日経BPの関連記事

【PR】

ニュースの深層 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

北海道豪雨では多くの畑が被害を受けた(2016年8月31日、北海道北見市)

北海道で「気候変動予測」加味した水防災対策 [有料会員限定]

 2016年8月に北海道を襲った一連の台風による「北海道豪雨」は、これまでにない新たな課題も浮かび上がらせた。氾濫流による農業被害である。四つの台風による被害面積は4万ヘクタール弱。農作物が浸水や流失…続き (4/21)

写真6 白花橋の近くに架かる川上橋。橋が周辺の土地よりも低い谷地形に架かっていたため、雨水が集まり、橋台背面土を洗い流した(写真:北見工業大学)

少雨地帯が先駆ける新・水防災対策、北海道豪雨の教訓 [有料会員限定]

 堤防や橋台背面の浸食、盛り土の崩壊、落橋――。2016年8月に北海道を襲った一連の台風による豪雨は、過去の水害と比べて人的被害がそれほど大きくなかったものの、今後の河川事業に重要な教訓が詰まっている…続き (4/20)

図3 離陸する飛行試験機2号機。2017年1月5日には、米国ワシントン州のグラント・カウンティ国際空港を発着する飛行試験を開始した。現在、4機体制で飛行試験を実施している(写真:三菱航空機)

三菱重工、知見不足が招いたMRJ5度目の延期 [有料会員限定]

 ジェット旅客機「MRJ」の量産初号機の引き渡し時期は2020年半ばに変更――。三菱重工業と三菱航空機(愛知県豊山町)は5回目の納入時期変更を2017年1月23日に発表した(図1)。2015年12月時…続き (4/7)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年4月25日付

2017年4月25日付

・ICタグ、高温下でも利用OKに 京セラ、アンテナ一体の保護部品
・富士フイルム、医療用画像システム事業強化、カテーテル治療容易に
・すべてのモノにAIを ルネサス、IoT機器への搭載技術
・バイオマスを「地産地消」、洸陽電機が循環型モデル提案
・米アディエント、炭素繊維使い自動車シート4割軽く…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト