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あるはずだが見えない「暗黒物質」 謎の存在に新説

2015/8/29 6:30
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 暗黒物質(ダークマター)は私たちの身の回りにもたくさん漂っていることは確実なのだが、見ることも触ることもできない。この暗黒物質の正体について、素粒子物理学の研究で世界的に知られる東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長らが新説を発表した。先ごろ死去したノーベル賞学者の南部陽一郎博士が提唱した理論がベースになっており、歴史をさらにさかのぼると湯川秀樹博士が存在を予言した粒子に行き着くという。

■実は複数の粒子で構成?

現在、世界各地の鉱山などで暗黒物質粒子を直接検出する実験が行われている。日本では奥飛騨山中の神岡鉱山の地下1000メートルで、東京大学宇宙線研究所が中心となった「XMASS実験」が進んでいる(画像提供:日経サイエンス)
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現在、世界各地の鉱山などで暗黒物質粒子を直接検出する実験が行われている。日本では奥飛騨山中の神岡鉱山の地下1000メートルで、東京大学宇宙線研究所が中心となった「XMASS実験」が進んでいる(画像提供:日経サイエンス)

 暗黒物質は「物質」という名前がついているが、これまで知られている物質粒子とはまったくの別種の粒子からできていると考えられている。暗黒物質粒子についてわかっているのは、ある程度の質量を持つこと、宇宙全体で見ると、その総量は星やガスなどの普通の物質の総量の5倍に達すること、普通の物質粒子とはほんのごくわずかだが相互作用するとみられることだ。

 現在、有力視されているのはWIMP(ウィンプ)説だ。暗黒物質粒子は1種類であり、それは極微の世界を支配する力の1つ、「弱い力」に似た力を持つ重い粒子であるとする。弱い力は原子核の崩壊を起こすほか、太陽が燃えるのに必要な力として知られる。このWIMP説を検証しようと、いくつもの実験が行われているが、なかなかその存在がつかめない。また銀河スケールでみたときの暗黒物質の分布が理論予想と実際の観測とでは食い違っていた。

 こうした状況を受けて村山機構長らが提唱したのがSIMP(シンプ)説だ。暗黒物質粒子は1種類ではなく、複数種類あって、それらは極微の世界を支配するもう1つの力、「強い力」とそっくりの力を持つ重い粒子であるとする。強い力はクォークという素粒子どうしを結びつけて核子(陽子と中性子)を形成し、さらには核子どうしを結びつけて原子核を形成する力で、文字通り弱い力より桁違いに強力だ。この強い力の理論研究のパイオニアが南部博士だ。

 また強い力の特徴は、2つの粒子が結びついてできた複合粒子が安定していることで、この複合粒子が,核子どうしを結びつける力の担い手となる。そうした粒子「パイ中間子」の存在を予言したのが湯川博士だった。SIMP説によれば、パイ中間子と非常によく似た粒子が暗黒物質粒子として宇宙を漂っていることになる。

 SIMP説はWIMP説と同様、宇宙に存在する暗黒物質の総量をうまく説明できるほか、理論から予想される銀河スケールの暗黒物質の分布が観測とよく合うという。本当にSIMP説の方が正しいのか。検証実験がこれから始まることになる。

(詳細は25日発売の日経サイエンス10月号に掲載)


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