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コスト100分の1の保育器 新興国の未熟児問題解決へ

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2015/7/28 6:30
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リアル開発会議

 先進国で当たり前に存在する物やサービスが、発展途上国ではコストの壁によってなかなか普及しない。業界を問わず、よく聞く話である。

ジェームズ・ロバーツ 英マム・インキュベーターズ クリエイター&ディレクター(写真:加藤康)
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ジェームズ・ロバーツ 英マム・インキュベーターズ クリエイター&ディレクター(写真:加藤康)

 体温調節機能や呼吸機能が不十分な新生児を守るための「インキュベーター」(保育器)も例外ではない。新生児を外界から隔離し、温湿度や酸素濃度などを調整する箱形の医療機器だ。途上国では、この保育器がほとんど普及していない故に、多くの未熟児が生まれて間もなく命を落としている。

 だが、英マム・インキュベーターズ クリエイター&ディレクターのジェームズ・ロバーツ氏が考案した保育器「MOM(マム)」は、この問題を解決できる可能性がある。先進国の一般的な保育器のコストが3万英ポンド(約540万円)であるのに対し、MOMのコストは250英ポンド(約4万5000円)と100分の1以下だ。サイズも非常に小さいので、途上国の病院が導入しやすい設計になっている。既存の汎用的な部品や技術を組み合わせることで、低コスト化や小型化を実現しているという。

■「ジェームズ・ダイソン・アワード」で最優秀賞

 ロバーツ氏がMOMのアイデアを着想したのは、英ラフバラー大学プロダクトデザイン・テクノロジー学部に在学していた時のことである。コストを100分の1に下げるという斬新なコンセプトが評価され、2014年に「ジェームズ・ダイソン・アワード」の国際選考で最優秀賞を受賞した。

開発途上国向けの保育器「MOM」(写真:加藤康)
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開発途上国向けの保育器「MOM」(写真:加藤康)

 同アワードは、英ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏の個人財団が主催しているもの。英国や日本など20の国・地域の大学生/大学院生/卒業後4年以内の卒業生を対象として、社会問題を解決するデザインを募集し、優れた作品を表彰する。

 最優秀賞の賞金は、3万英ポンド(約540万円)だ。現在、ロバーツ氏はこの賞金を開発資金として自身の会社であるマム・インキュベーターズを創設し、MOMの製品化を目指している。

■テレビ番組がきっかけに

 ロバーツ氏が保育器に着目したきっかけは、たまたま見ていたテレビのドキュメンタリー番組だった。この番組の中で途上国の未熟児を特集したパートがあり、多くの未熟児が生後すぐに亡くなっていること、あまりに多くの命が失われている故にこの世代は「ロストジェネレーション」(失われた世代)と呼ばれていること、そして保育器があれば助かっていたかもしれないことを初めて知ったという。「途上国の問題には常に関心を向けていたが、保育器については何の知識も接点もなかった」(同氏)。

 当時、ロバーツ氏は大学で取り組んでいたプロダクトデザインのプロジェクトに飽きていたところだった。「誰かに与えられた課題をひたすらこなすだけで、自分にとってあまり面白いと感じなかった」(同氏)。

 そんなロバーツ氏の脳裏をよぎったのは、大学に入って2年目に産業界で1年ほど働いた経験だった。米国ニューヨークのデザイン会社に勤務し、さまざまな開発プロジェクトに関わったという。

 産業界で刺激を受け、大学で退屈な日々を過ごしていたロバーツ氏にとって、未熟児と保育器の問題を取り上げたドキュメンタリー番組は、大きな転機になった。「新しい何かを始めたい」という漠然とした思いと、具体的な目標が結び付いたのである。同氏は、途上国向け保育器の開発を決意する。

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