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NOを言える慣習 イスラエルに学ぶ起業のヒント
榊原健太郎・サムライインキュベート社長

2014/11/22 7:00
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 イスラエルに住み始めて、ようやく半年になった。ずいぶんと長く滞在しているつもりだったが、まだ半年だ。日本ではできない経験や出来事の連続で、ずいぶんと新鮮な体験をしてきたからだろうか。現地の起業家と交流していると、カルチャーショックを受けることも少なくない。

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業
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74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業

 イスラエルに来てみて面白かったのは、上下関係がなくフラットであることだ。イスラエル人はNOと思ったらNOと、上司であっても率直に言う。日本とは真逆の本音社会だ。どれだけ上司が偉く、長く守られている慣習があっても、それが間違っていれば、その上司に主張し、慣習を変えることまで許される。

 一方、建前社会である日本の大企業では、自分の意見を通すには上司の機嫌取りや根回しが必要なことが多く、社内での承認に時間をとられることになる。そのため、結果的にスピードが落ちてしまう。また、縦割り組織であることが多いため、自由な発想がしにくい。大きな組織からイノベーションを起こすためには、この体質を抜本的に変える必要がある。

 チャレンジしやすい風土でもある。出る杭(くい)を引き上げて更に伸ばす風土、と言ってもいい。メンバーが失敗しても、その非を責めることはせず、何度でも次のチャレンジを促す。イスラエルの教育では、失敗から学べる限り、失敗することは恥ずかしいことはなく、世の中を変えるために必要なことと子供の頃から教わるのだ。

 日本ではどうだろうか。許すとしても、2回までが限度であろう。また、「炎上」は日本の文化の如く、ネットで誰かがたたかれるニュースをソーシャルメディアで見ない日はない。

 会社内でも同様だ。新しい社内事業の立ち上げに失敗すると、居場所がなくなる。一度そのような体験をしてしまうと、当事者はもう挑戦したくなくなるだろうし、それを見てしまった人たちに新しいことをやる気力が起きるはずもない。

 失敗を経験せず、難なく成功できてしまう人間も世の中にはいるかもしれない。しかし、過去に失敗経験があり、その経験から学んで成功する事例の方が多いのではないだろうか。

 米国の有名な例でいうと、タクシー・ハイヤー配車サービスのウーバーテクノロジーズの創業者は、起業以来数々の失敗を重ね、10年たってようやく世界的な事業を創った。無料通話サービス「スカイプ」の創業者も2度の起業に失敗している。旅行先でユーザー同士の部屋を貸し借りするサービスを提供するエアbnbも、創業期は投資家からアイデアを認められず、資金繰りに苦しんでいたそうだ。しかし、3社とも今の企業価値は1兆円近くある。

 イスラエルで感じた日本との考え方の違いから、まだまだたくさん学べそうだ。そして、日本の大企業は、創造性豊かなスタートアップと付き合うべきだ。

 スタートアップは数年後の当たり前を作る存在だ。例えば、アクションカメラで一世を風靡した米ゴープロは、撮影の仕方を少し変えただけでイノベーションを起こした。消費者の要求に思考を巡らせ、今の常識を疑い、新しい常識を作っていく視点をスタートアップから学べるような「イントレプレナー(社内起業家)」が増えれば、大企業でもイノベーションを十分起こせる。

 特に、イスラエルの起業家たちは柔軟な発想の持ち主で、我々が考えるより更に進んだアイデアが多い。私も驚くようなアイデアが山ほど出てくる。これまで思ってもみなかったアイデアに触れていると、世界が一変する。ものの見え方が変わってしまうような体験をしたい方には、イスラエルの起業家たちとの交流をお薦めする。

[日経産業新聞2014年10月25日付]

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