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染色×IT 服に革命 セーレン、オーダーメード47万種

2017/8/10 23:38
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 タブレット(多機能情報端末)で形や柄、色をデザインし、液晶モニターで自分だけの服を「試着」――。店頭と工場をIT(情報技術)でつなぐ染色技術で、ファッション業界の常識を塗り替えた企業がある。福井県に本社を置く創業128年の総合繊維メーカー、セーレンだ。衣料から非衣料へと事業を広げ、カーシート材で世界一のシェアを築いた現在、新たな領域で革新に挑む。

メイクユアブランドはモニターとタブレットで洋服をデザインする(福井市、本社店)
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メイクユアブランドはモニターとタブレットで洋服をデザインする(福井市、本社店)

■AIで未来読む

 同社が展開するオーダーメードの婦人服ブランド「ビスコテックス メイクユアブランド」はタブレットで47万通りに及ぶ色や柄の組み合わせの中から好きな服を選べる。ワンピースの場合、7万円台のオーダーが多い。デザインを決めてから3週間ほどで自宅に届くシステムで、店側は在庫を持つ必要がない。

 同ブランドを愛用する福井県坂井市の酒井聡美さん(49)は「だれも持っていない服をつくれて楽しい。親戚や娘も愛用している」と話す。

 土台となっているのは独自の染色技術だ。コンピューターで色や柄、凹凸をデザイン・設計し、インクジェットプリンターで仕上げる。顧客の購入データは蓄積し、一人ひとりの好みのデザインを分析する。効果的な提案につながり、客が選びきれず帰ってしまう事態を未然に防げる。

 川田達男会長は「ものづくりというより情報産業」と語る。同社は10年後を見据えて経済統計や生産状況、顧客情報のビッグデータをAI(人工知能)で分析し、新しいサービス・製品につなげる体制を模索する。その先駆けとなるのがメイクユアブランドだ。

 福井、東京などに続き、4月には全国で8店目となる店舗を大阪・梅田に出した。21年3月期に50億円規模の事業に育てる計画だ。さらに今後、同様のモデルを非衣料やBtoB(企業間取引)に展開する。5年間で計24億円を投じ、国内外の関連会社や営業拠点、工場を一括管理する社内システムを整備する。

 「今は過去で、今からが未来。現在の常識を疑って先の常識を考えることが次の100年につながる」と川田会長。振り返れば、現在のセーレンを支えているのは過去に批判された事業だ。

■車シートで飛躍

 売上高の約6割を占め、米国や中国、メキシコなど海外7カ国に工場を持つカーシートなどの車両資材。着手した1972年は社内で「非常識」との声が多かった。染色で「委託賃加工」という下請け的な事業が売り上げの約97%を占めていただけに、売れるか分からない製品への投資は論外との風潮が強かった。

 だが当時、製品開発グループ係長だった川田氏は工場に人が少ない夜間に隠れて試作し改良を重ねた。77年に大手自動車メーカーへの納品が始まると採用が広がった。

 04年、旧カネボウの繊維事業を買収しようとした際も業界から「うまくいくわけがない」といった声を受けた。原糸製造、縫製販売などの分業体制が定着している繊維業界にとって、事業買収による一貫体制の構築は秩序を打ち壊す脅威と映る。それでも反対を押し切って決断を下したことが、開発力で競合他社に差を付ける転機となった。

 セーレンのビジョンには「無人工場」「人工衛星」などの言葉が並ぶ。福井県や富士通と進める超小型人工衛星のプロジェクトは19年度の打ち上げを目指して開発中だ。

 「今はカーシート材が稼ぎ頭だが、いずれは人工衛星の方が伸びるかもしれない」(川田会長)。変化を恐れない挑戦の舞台は宇宙にも広がる。

(福井支局 吉田啓悟)

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■化粧品や電子部品も

 セーレンはパリにエッフェル塔が完成した1889年、染色の準備工程の精練を手掛ける「京越組」として創業した。

 化粧品や電子部品、環境資材も幅広く展開している。ゴルフクラブのシャフトに使う液晶ポリエステル繊維、スマートフォンの極薄の導電両面テープにも同社の技術が生きている。

 1980年代に業績が悪化したが87年に社長に就いた川田達男氏(現会長)が改革を主導し回復した。2018年3月期売上高は1120億円の見通し。

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