日経産業新聞セレクション

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

有機ELの「次」狙え 次世代ディスプレー競争

2017/8/7 6:30
共有
保存
印刷
その他

 電子部品材料を手掛ける昭栄化学工業(東京・新宿)は色再現性の高い次世代ディスプレー技術「量子ドット」フィルム用の半導体ナノ粒子を年内に量産する。量子ドットは有機ELの先の技術として注目を集めており、同社は材料技術で先行する狙い。ディスプレーが液晶から有機ELに転換する中で、有機ELの「次」を見据えた動きが始まっている。

波長の短い光を当てれば粒子の大きさに応じて発光色が変わる
画像の拡大

波長の短い光を当てれば粒子の大きさに応じて発光色が変わる

 昭栄化学は有害物質のカドミウムを使わない独自の製法を確立し鳥栖事業所(佐賀県鳥栖市)に約10億円を投じて量産ラインをつくる。インジウムとリンを熱反応させて半導体ナノ粒子を成長させる製法を確立した。韓国サムスン電子の子会社や米ベンチャー企業などの製法と比べて製造コストを下げて安定供給できる強みがあるという。

 鳥栖事業所で2017年中に生産設備を整備し、18年中にも月産で数百キログラムの材料生産を始める。ナノ粒子を含む溶液をフィルムメーカーや感光剤(レジスト)メーカーなどに量子ドット溶液として供給する。安定量産することで1グラム5千円程度に抑えられるという。

画像の拡大

 量子ドットディスプレーは特殊な材料が光の波長を変化させて、青から緑、赤の色の三原色を鮮やかに再現できるのが特徴。現在主流のディスプレー構造は、青色発光ダイオード(LED)の光を量子ドットフィルムを通して緑や赤の色を出す仕組み。フィルムは数ナノ(ナノは10億分の1)~十数ナノメートルの粒子状結晶で構成され、省電力で高い輝度、広い色域を再現できる。

 量子ドットは有機ELよりも広い色域を持ち、より美しい映像を楽しめると期待されてきた。ただ毒性のあるカドミウムを使ってナノ粒子を制御する必要があったため活用が進んでいなかった。ソニーも一時自社ブランドのテレビに採用する意向だったが、有害物質が含まれることで断念した経緯がある。

 民間調査会社の矢野経済研究所によると、昭栄化学などが手掛ける量子ドット向け電子材料の出荷量は2017年に前年比2.6倍に拡大。「中国の複数のテレビメーカーが採用することで市場が大きく伸びる」(同社)と予測している。

■マイクロLED、台湾勢が先行

 米アップルによるiPhoneへの採用で、本格普及期を迎える有機ELパネル。色鮮やかで端末形状の自由度が高いとして液晶パネルからの置き換えが進むが、韓国、台湾、中国ではさらに先を見据えた研究開発が活発化している。ただ、長く業績不振が続いてきた日本のディスプレー産業は有機ELでも出遅れ、さらに次世代技術への布石も打てないままだ。

 「有機ELでは韓国勢に水をあけられた。我々は『マイクロ発光ダイオード(LED)』で挽回しよう」――。台湾のマイクロLEDの部材メーカー幹部は同業各社に呼びかけている。

ソニーはマイクロLEDを使った大型ディスプレーを手掛ける
画像の拡大

ソニーはマイクロLEDを使った大型ディスプレーを手掛ける

 マイクロLEDは、赤・緑・青色に光る微細なLEDを敷き詰めて映像を表示するディスプレー。屋外広告からウエアラブル端末まで大小様々な用途に活用できる。普及の鍵はLED素子の価格。台湾、中国のメーカーが急速にコストを下げており、有機ELの次として急浮上している。

 シャープは5月に鴻海(ホンハイ)精密工業グループと共同で米国の技術ベンチャーを買収すると発表。アップルも米半導体大手クアルコムから買い取った台湾の研究所で自社のウエアラブル端末に搭載するマイクロLED技術の開発を進めているもようだ。

 ソニーは既に「クリスタルLED」の名称で展開。小型パネルを数十~数百枚組み合わせて幅20メートルほどの巨大ディスプレーを構成する。自社開発したLED素子が光源で、色鮮やかな映像を映し出せる。美術館のデジタル展示やパブリックビューイング、監視モニターとして販売している。

 ディスプレー技術動向に詳しいテック・アンド・ビズ(大津市)の北原洋明氏は「20年代半ばには量子ドットとマイクロLEDがディスプレーの本命になる可能性がある」と分析する。国内でも昭栄化学だけでなく、素材メーカー大手は次世代技術のトレンドを読みながら研究開発を続けているという。

 ただ韓国や台湾勢との設備投資競争で疲弊してきた国内ディスプレーメーカーは研究開発投資を絞り後手に回る。電機大手の事業を統合してきたジャパンディスプレイは有機ELへの転換期に直面し苦境が鮮明だ。潮流を読む情報収集力と手厚い開発投資力がないと、日進月歩のディスプレー産業では生き残れない。

(企業報道部 細川幸太郎)

[日経産業新聞 2017年8月7日付]

「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。

日経産業新聞セレクションをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

【PR】

日経産業新聞セレクション 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

資生堂のしわ改善効果のあるスキンケア商品の人気は高い(都内のドラッグストア)

しわ取り化粧品、最高益の立役者 資生堂とポーラ

 資生堂とポーラ・オルビスホールディングス(HD)が相次いで発売したしわ改善効果のある化粧品の売れ行きが好調だ。いずれも「しわを改善する」などと表現することを承認されており、中高年女性らへのアピールに…続き (8/18)

JFE環境が増設した水銀ランプの処理ライン(横浜市)

水俣条約が発効 水銀ランプ処理需要に的

 水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す国際条約「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」の発効を受け、環境各社が関連需要の取り込みに動いている。JFEエンジニアリングは水銀ランプの解体ラインを増設、2…続き (8/18)

ちょっと紹介 明日(18日)の紙面

■デブリ一掃へ 筋肉ロボ
 日経産業新聞の明日(18日)の紙面を紹介。「ガシャンガシャン」と音をたて、筋肉ロボットのアームが燃料デブリに見立てたコンクリートの塊をぎこちない動きでつかみます。広島市の中心…続き (8/17)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

8/19 1:00更新 ビジネスリーダー 記事ランキング

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<8/14の予定>
  • 【国内】
  • 4~6月期の国内総生産(GDP)速報値(内閣府、8:50)
  • 8月のQUICK外為月次調査(11:00)
  • 7月の投信概況(投資信託協会、15:00)
  • 4~6月期決算=富士フイルム、出光興産
  • 【海外】
  • 7月の中国工業生産高(11:00)
  • 7月の中国小売売上高(11:00)
  • 1~7月の中国固定資産投資(11:00)
  • 1~7月の中国不動産開発投資(11:00)
  • タイ市場が休場
  • 7月のインド消費者物価指数(CPI)
  • 7月のインド卸売物価指数(WPI)
  • 6月のユーロ圏鉱工業生産(18:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/15の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 7月の首都圏・近畿圏のマンション市場動向(不動産経済研究所、13:00)
  • 6月の鉱工業生産指数確報(経産省、13:30)
  • 【海外】
  • 豪中銀理事会の議事要旨公表(1日開催分、10:30)
  • 4~6月期の独国内総生産(GDP、速報値)
  • 7月の英消費者物価指数(CPI、17:30)
  • 7月の米小売売上高(21:30)
  • 7月の米輸出入物価指数(21:30)
  • 8月の米ニューヨーク連銀製造業景況指数(21:30)
  • 6月の米企業在庫(23:00)
  • 8月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数(23:00)
  • 6月の対米証券投資(16日5:00)
  • 5~7月期決算=ホーム・デポ
  • 韓国とインドが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/16の予定>
  • 【国内】
  • 8月のQUICK短観(8:30)
  • 1年物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 7月の訪日外国人客数(日本政府観光局、16:00)
  • 【海外】
  • 6月の対米証券投資(5:00)
  • タイ中銀が政策金利を発表
  • 4~6月の英失業率(17:30)
  • 4~6月期のユーロ圏域内総生産(GDP)改定値(18:00)
  • 7月の米住宅着工件数(21:30)
  • 米エネルギー省の石油在庫統計(週間、23:30)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月25~26日開催分、17日3:00)
  • 5~7月期決算=シスコシステムズ
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/17の予定>
  • 【国内】
  • 7月の貿易統計速報(財務省、8:50)
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 5年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 【海外】
  • 7月の豪雇用統計(10:30)
  • 4~6月期のフィリピン国内総生産(GDP)
  • 7月の英小売売上高(17:30)
  • 6月のユーロ圏貿易収支(18:00)
  • 欧州中央銀行(ECB)理事会の議事要旨公表(7月20日開催分)
  • 米新規失業保険申請件数(週間、21:30)
  • 8月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(21:30)
  • 7月の米鉱工業生産(22:15)
  • 7月の米設備稼働率(22:15)
  • 7月の米景気先行指標総合指数(23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2、ワシントン)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(18日2:00)
  • カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が討議に参加(18日2:45)
  • 5~7月期決算=ウォルマート・ストアーズ
  • インドネシアが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/18の予定>
  • 【国内】
  • なし
  • 【海外】
  • 7月の中国70都市の新築住宅価格動向(10:30)
  • 4~6月期のマレーシア国内総生産(GDP)
  • 8月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ、23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(23:15)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]