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1球の大切さ 球児に説く 元プロ野球選手・中谷仁氏
智弁和歌山高野球部コーチ

2017/6/24 6:30
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 ドラフト1位で阪神に入団し、楽天、巨人でも捕手としてプレーした元プロ野球選手の中谷仁さん(38)が今年4月、母校である智弁和歌山高野球部の専任コーチに就任した。自身が主将を務めて甲子園で優勝した1997年夏を含め、春夏合わせて計3度の全国制覇を誇る名門も、2011年夏を最後に甲子園での白星から遠ざかる。同校を率いるのは甲子園歴代最多63勝の名将・高嶋仁監督。「高嶋先生にもう一花咲かせてもらう」。高校時代の恩師を支え、強豪復活を果たすつもりだ。

中谷さんは「意図と根拠のある、納得できる1球を」と説く

中谷さんは「意図と根拠のある、納得できる1球を」と説く

 12年限りでプロ野球選手を引退。14年に高校や大学の指導者となれる「学生野球資格」を回復した。「将来、母校の手伝いを頼まれたときに備えて」との考えからだったが、実際に昨年、高嶋監督や学校法人の理事長から就任を要請された際には思い悩んだ。野球教室や中学生のクラブチームの指導で安定した収入を得ていた上、母校のコーチとなれば休みはほとんど取れない。妻の反対もあり、当初は熱心な誘いを何度か断った。だが、「もう一回、甲子園優勝という一つの目標を高嶋先生と同じ気持ちで目指せる。こんなありがたく、やりがいのあることはない」という思いが日増しに強まり、気持ちが固まった。今年1月からの臨時コーチを経て、新年度からは学校職員となり、常勤のコーチとして連日、部員の指導にあたっている。

 強肩強打の捕手として入団しながら、なかなか芽が出なかった現役時代。転機となったのは阪神から楽天への移籍だった。当時の野村克也監督の信頼を得て、09年には自己最多の55試合に出場した。主に投手と捕手のバッテリーを指導する今、根底にあるのは「ノムさんの準備野球」だという。

 野村監督からは「戦う前に勝敗の7~8割は決まっていると思え」と準備の大切さを教えられた。選手たちには、対戦する相手打線の特徴を事前に分析した上で、その長所を封じるような攻め方、配球をブルペンでの投球練習の段階から徹底するように求める。「普段の練習から試合を想定した準備をすることで『こんな場合はどうしたらいいのか』という疑問がいくつも生まれ、それが選手としての感性を育む」

 15年間の現役生活では、捕手がはっきりと投手にサインの意図を伝え、バッテリー間で意思を統一することの重要性を学んだ。「より低く投げるとか、打者を詰まらせるためにより威力のある球を投げるとか、その1球で何をしたいのかが2人で共有できていれば、たとえ甘い球になっても最悪の結果は免れる可能性が高い」。教え子たちには、捕手と投手の日ごろからの密なコミュニケーションがいかに大事か、口酸っぱく説き続ける。

 原点には、1球の怖さを痛感させられた楽天時代の苦い経験がある。先発マスクをかぶった09年クライマックスシリーズ第2ステージの日本ハムとの初戦。九回、先輩投手からサインに首を振られ「絶対に内角攻め」と思っていた自分の意志を曲げた。遠慮して何となく出した外角直球のサインはすぐにうなずかれ、流れのままに投じられた1球が、吸い込まれるように左翼席へ飛び込んだ。逆転サヨナラ満塁本塁打。勢いを止められたチームは日本シリーズ進出を逃した。悪夢の光景とともに「タイムをかけてマウンドに話をしに行き、その1球に万全の準備をしていれば」との後悔は消えない。

 夏の甲子園出場をかけた高校野球の予選は、負けたら終わりの一発勝負の世界。後輩たちに自分と同じ後悔はさせたくない。「意図と根拠のある、納得できる1球を」。恩師がもう一度、甲子園でほほ笑む姿を夢見て、教え子たちに高い意識を植え付けようとしている。

(常広文太)

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