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短期円高、長期円安を予感させるFOMC声明

2017/6/15 9:33
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 円相場は米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文発表前に、一時108円台にまで急伸していた。きっかけは、米国の5月の消費者物価上昇率が横ばいの事前予測に対し、前月比0.1%低下となったこと。さらに、5月小売売上高も横ばいの事前予測に対し、前月比0.3%減となった。原油価格も1バレル44ドル台まで急落した。

 かねて不安視されていた「インフレ率停滞傾向」を裏付けるような数字ゆえ、市場には追加利上げペースが更に緩やかになる、との思惑が一気に拡大したのだ。

 しかし、FOMCでは、インフレ率停滞は一時的との見解が再確認され、かつ、金利予測を示すドットチャートは前回と変わらなかった。利上げ回数は年内あと1回、来年は3回との見方を維持したのだ。その時点で、円相場は1ドル=109円台半ばまで戻した。

 それでも、前日比では、円高進行となった。

 結局、市場は米連邦準備理事会(FRB)の消費者物価見通しを楽観的と見て、信じていないようだ。短期政策金利はFRBが押し上げることができるが、長期金利は市場が押し下げる。長期的な経済活性化に自信が持てず、10年債の利回りは利上げにもかかわらず2.1%台に低迷している。10年債利回りと2年債利回り格差は0.8%程度となり、急速に縮小中だ。イールドカーブ(利回り曲線)のフラット化現象が進行している。

 一方、ドル高効果のあるFRB保有資産縮小については、縮小ペースが極めて緩やかであることが具体的に数字で示された。そこまで開示することはサプライズであり、資産縮小によるドル高効果は限定的と市場では評価された。さらに、発表されたペースでの資産圧縮であれば、実質的な過剰流動性相場は続くとの認識が市場では広まっている。

 なお、記者会見で、イエレンFRB議長は「トランプ大統領との会話は無いが、任期はまっとうする」と語った。現在空席のFRB副議長、理事のポストについては明言を避けた。ポストの任命についてはトランプ大統領主導となるのは不可避であろう。すでにFRB理事の具体的候補者として、大学教授のグッドフレンド氏の名前が「大統領が検討中」としてマーケットに流れている。FRBが採用していないマイナス金利の支持者で、リーマン・ショック後のFRBに対して批判的な姿勢も見せた人物だ。FRBが徐々にトランプ色に染まってゆく過程を連想させる。

 そのトランプ大統領は「私は低金利を好む」と明言している。今後の利上げ決定が「データ次第」ながらも、「トランプ次第」となる可能性も無視できないだろう。特に、大型減税・インフラ投資の財政政策の実現性は、金融政策に大きな影響を与える。

 総じて、日本株にとっては円高という逆風が吹くが、一方で、流動性相場継続の中で世界のマネーが日本株にも回遊するシナリオも現実味をおびる。

 円相場は、目先は円高傾向だが、米国が今年後半と来年に計4回の利上げをこなさねばならぬことを考慮すれば、中長期的にはドル高・円安圧力が徐々に高まりそうだ。資産縮小も今後ペースが速まれば、市場の底流としてドル高バイアスも無視できない。

 今後の市場展望に多くのヒントを残したFOMCだったといえよう。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸’s OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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