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ガーナのオンコセルカ症、制圧へ着々 顧みられない熱帯病(6)

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2017/6/12 6:30
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Financial Times

 フランシス・クアイさんは焼け付くような昼時に、ヤシの木が両側に並ぶほこりっぽい道を歩き、泥まみれの掘っ立て小屋の集落へと向かう。持ち運んでいる木の棒は、長辺に黒い線が4本書かれている。ファ・アセムチェという集落に着くと、木陰の開けた場所で棒をまっすぐに立て、3歳の男の子の身長を測る。そして水と一緒に飲むよう薬を1錠手渡し、ノートに少年の名前をダニエル・バー・ジョシュアと書き込む。

 クアイさんは、この手続きを行うために年に2度ガーナ全土で動員される数千人のボランティアの一人だ。単純な作業だが、これにより今後数年で、オンコセルカ症の病禍をガーナから一掃できるかもしれない。昆虫が媒介となって感染するこの疾患は、全世界で3700万人を苦しめており、感染者の圧倒的多数がアフリカに集中している。

アスベンデ近くの川。オンコセルカ症は川にすむ黒バエにかまれることで感染する(c)Cristina Aldehuela
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アスベンデ近くの川。オンコセルカ症は川にすむ黒バエにかまれることで感染する(c)Cristina Aldehuela

 話し言葉で河川盲目症として知られるオンコセルカ症は、急流河川の岸辺に繁殖する黒バエ(ブユ)にかまれることで感染する寄生虫により引き起こされる。治療せずに放置すると、寄生虫が体内で成長し、かゆみとしこりを生み、最終的には目に入ったときに失明をもたらす。当初は犬の体内の寄生虫と闘うために開発された医薬品イベルメクチンの定期的な投与がオンコセルカ症の予防と治療に効果を発揮する。

 各地を移動する際に体重計が簡単に手に入らないことから、クアイさんは測定棒を使って人々の体の大きさを推定し、どれくらいの薬剤が必要か判断してから、1~4錠の錠剤を与える。カカオ農園を営むクアイさんは昨年、向こう4年間でオンコセルカ症の制圧を目指す野心的な全国キャンペーンに取り組むために採用された(専門用語で制圧とは、発症数を人口の0.1%未満まで減らすことを意味する)。「愛国心からやっているんです」とクアイさんは言う。

 ガーナ政府と英国の慈善団体サイトセーバーズなどの非政府組織(NGO)の資金で運営されているプログラムは、イベルメクチンを開発し、ほぼ30年にわたって寄付してきた米医薬品大手メルクの工場から始まる。薬は、ガーナのへき地で感染リスクにさらされている数百万人の人に薬を届けようとするクアイさんのようなボランティアに出荷される。ファ・アセムチェ集落があるガーナ南部のビリムノース郡では、昨年、6万2000人がイベルメクチンを与えられた。

オンコセルカ症にかかって盲目になったアスベンデの住民(c)Cristina Aldehuela
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オンコセルカ症にかかって盲目になったアスベンデの住民(c)Cristina Aldehuela

 「集団投薬(MDA)」と呼ばれるこの対策が始まって以来、大きな進歩が見られた。だが、対策が始まったのは1998年のことだ。キャンペーンは今も続いており、ガーナではまだ推定500万人が感染のリスクにさらされている。

 この数年で、河川盲目症の症例を報告する地区の数が急減しており、プログラムのコーディネーターたちはこれを受け、目標をオンコセルカ症の抑制から制圧を計画する段階へと変更する自信を深めている。だが、最後の大詰めは難しい。イベルメクチンは人間の体内でミクロフィラリアと呼ばれる幼虫しか殺さないため、最大で15年(体内で生き続けて生殖する成虫の寿命)にわたって毎年投与しなければならない。これには継続的な医薬品配布と、労力を要する患者の監視が必要になる。

 「地域社会にアクセスするのが大きな課題になっている」。ビリムノース郡の行政の中心地ニューアビレムの衛生官を務めるトマス・アズラゴ氏はこう語る。この地区には救急車が1台もないうえ、自動車が著しく不足しており、医療関係者がへき地に赴くためのオートバイが数台あるだけだ。無給の薬品配布ボランティアを見つけ、つなぎとめるのも常に容易だとは限らない。競合する疾病対策プログラムの数が増え、人々に助言を与え、医薬品やマラリア対策用の蚊帳(かや)などの商品を配布することを各方面から求められることから、ボランティアの善意はパンク寸前になっている。

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