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奇人変人の才能見抜け 「プレステ生みの親」のCTO論
CTO30会議(11)

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2017/6/9 6:30
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日経BPクリーンテック研究所

 1994年12月に発売された「プレイステーション(PS))」(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)は、家庭用ゲーム機としては初めて累計出荷台数が1億台を超え、世界的なムーブメントを巻き起こした。その仕掛人が久多良木健氏だ。社内を説得し、他社を巻き込み、時代を先取りした技術をベースに市場を生み出した。新しい価値創造をけん引するCTO(最高技術責任者)としての役割を果たしたと言っていいだろう。同氏は「CTO30会議」で「事業創造への挑戦とCTOの役割」と題し、CTOの役割や陥りやすい罠について講演した。その講演を踏まえてCTOのあるべき姿について久多良木氏に聞いた。

――講演の中で、ソニーの創業者である井深大氏と盛田昭夫氏は、CEO(最高経営責任者)と同時にCTOの役割を担っていたと話されましたが、当時のソニーはどんな企業でしたか。

写真1 サイバーアイ・エンタテインメント 代表取締役社長兼CEO 久多良木健氏(撮影:新関雅士)
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写真1 サイバーアイ・エンタテインメント 代表取締役社長兼CEO 久多良木健氏(撮影:新関雅士)

久多良木 CEOやCTOだけでなく、CMO(最高マーケティング責任者)などの役割も兼ねておられたのではないでしょうか。もちろん、そんな肩書は当時のソニーにありませんが、やられていたことはまさに同じです。自ら世界中のマーケットに赴き、自分の言葉で話ができる。“オールマイティ”と言ってもいい活動ぶりです。トランジスタラジオや5インチのマイクロテレビなどの先進的な世界初の商品を次から次へと発売して、とにかくソニーはかっこよかった。私は、働くならここしかないと思っていました。

 井深さんや盛田さんというソニーの創業メンバーだけでなく、岩間さん、木原さん、森園さん、大曾根さんといったソニーの黄金時代を支えた経営幹部の面々は、皆同様に経営マインドを有する優れたエンジニアでもありました。会社全体がワクワクしながら夢を追い求めていた時代が創業から30年あまりあったでしょうか。今で言えば米Tesla(テスラ)のイーロン・マスクや米Google(グーグル)のラリー・ペイジなどの顔が浮かぶでしょう。共通しているのは、技術が分かるだけでなく、自分たちのやりたいことを実現するために事業を立ち上げている。

――ソニーにそうした働きぶりの人がいなくなってしまったのはなぜでしょうか。

久多良木 2000年頃に、エンジニアのモチベーション向上のために「コーポレートリサーチフェロー」という制度が新設されました。領域別に突出した技術を持っている人にフェローという称号を授与する制度です。一方で会社の規模拡大に伴い、経営のプロフェッショナル化が進行しました。これが経営と技術を図らずも遠ざけてしまったのではないでしょうか。

 エンジニアは経営のことを考えずに済むようになったため、自分の好きな領域の研究を追い求めれば済むようになった。おかげで、それぞれの要素技術はすごいのですが、そこに経営者の視点としての突出したビジョンが急速に失われていきました。どこにプライオリティをつけて、どうやって大きな仕事に育てればいいのか分からなくなってしまったということです。

――改めてCTOに必要な資質で最も大事なことは何でしょうか。

久多良木 未来の核となりそうな技術を見極めて、そこに至るプロセスや道筋を示すことです。CTOは1人で事業をするわけではありません。チーム全体で取り組む必要があるわけですから、その道筋をチームメンバーにかみ砕いて示さなければなりません。目標を定め、そこに至るロードマップを策定し、ストーリーを描いて、示すことが大事です。

 そうして5年先、10年先、15年先には実現可能となるだろう世界をイメージしてみる。描いた世界は各ステージで達成すべき目標というべきかもしれません。ここからバックキャストして、今すべきことを考えるわけです。

――CTOを突き動かすものは何でしょうか。

久多良木 あくなき好奇心でしょうね。目につくあらゆるものに好奇心を抱いて、どうやって実現しているのだろう、どうしたら実現可能かと、持てる妄想をフル回転させて都度考える。そのためには、特定の領域だけを深く追い求めているだけではダメで、例えその場では未消化であったとしても、さまざまな領域や事象に積極的に触れてみる必要があります。

 そういう意味では、CTOは、ある程度ロマンチストであることが必要なのかもしれません。大きなロマンがないと人々は共感してくれませんから。イーロン・マスクなどは、その最たる例ではないでしょうか。

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