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FOMC議事要旨、米利上げ3回説に一石

2017/5/25 9:53
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 「2017年の米利上げは3回」との説が後退する兆しが見られる。年内2回か3回か。市場にとって大きな影響がある命題だけに注目度は高い。

 震源地は、24日発表になった5月2~3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨。市場の想定よりはるかに詳細に、年内の米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小が議論されていた。市場の注目点は、年内にバランスシート縮小を始めるなら、利上げは少なくとも「1回休み」になるのではないか、との可能性だ。

 すでに、イエレンFRB議長に近いとされるダドリー・ニューヨーク連銀総裁や、イエレン議長の出身母体であるサンフランシスコ連銀のウイリアムズ総裁が「バランスシートを縮小するなら、利上げペースも相当に緩やかにすべきだ」と論じている。バランスシートの縮小と利上げを同時に発動しては、金融引き締め効果が強すぎるとの判断だ。ブレイナードFRB理事に至っては「バランスシート縮小は利上げの代替手段」とまで言い切っている(ただし、ハト派の代表格である同氏も、トランプ政権の掲げる大型財政政策が本当に実行されるなら利上げ容認の姿勢である)。

 FOMCでここまで資産縮小議論が展開されたのは、量的緩和で国債や住宅ローン担保証券(MBS)を「爆買い」した結果、FRBの資産総額が異常に膨張したからだ。これから利上げすれば保有する巨額の債券が値下がりし、FRBは大きな損失を被る。それゆえ、保有債券額を減らす必要があるのだ。これは、リーマン・ショックへの有事対応として実行された異常な金融政策を正常に戻す作業でもある。量的緩和の後始末とでもいえようか。有力な金融引き締め政策となるので、利上げと同様に市場の注目度が高い。

 FRBが国債やMBSを買いまくり、その対価としてドルを市中にばらまくのは容易。だが、逆に市中に流通しているドルを減らすとなると、「過剰流動性依存症」気味の市場がショック反応を起こすリスクがある。その例として必ず引き合い出されるのが、13年5月の「バーナンキショック」だ。当時、フル回転で進行していた量的緩和の縮小(いわゆるテーパリング)を当時のFRB議長バーナンキ氏が「示唆」しただけで、マーケットは大混乱。株は急落した。当のバーナンキ氏も自身のブログで「資産縮小するなら、とにかく慎重に」と強調している。

 今回、FOMCで議論されたバランスシート縮小の方法はバーナンキショックの経験が生かされた形跡がある。実に慎重で、市場へのショックを最小限に食い止める工夫がされている。

 例えば、満期を迎えた債券に目を付けている。保有債券の中で償還を迎える部分は、放置すれば元金がFRBに戻ってくる。市中からドルを引き揚げることには違いがないが、ヘッジファンドの先回り売買などで市場混乱が必至な保有債券の売却よりはマイルドだ。今回のFOMCでは、(1)FRBの資産総額に上限を課すること(2)その上限は3か月ごとに経済状況を見ながら柔軟に減らしていくこと(3)上限を上回る額については償還を迎えた債券を再投資せず、FRBの保有債券額を自然減させることが議論された。

 だが、償還を迎える保有債券はこれまで、戻ってきた元金で再び債券を買っていた。結果的に、FRBの資産総額も減らさなかった。それだけに、今回のFOMCでここまで具体的に、FRBのバランスシート減少が話し合われていたこと自体が、市場にとっては驚きだった。市場では今後、6月利上げを織り込みつつ、資産縮小議論に関するFRBの要人発言を材料視しながら9月と12月の利上げの可能性を探る議論が活発になされることになろう。

 長期的には、4.5兆ドルに膨れあがったFRBの資産総額を最終的にどこまで減らすのかという点も重要だ。2兆ドルから2.5兆ドル程度は残す必要がある、との議論が根強い。市中に出回る通貨量が以前よりはるかに増えていることから、その量を調節する金融政策手段も切り札のひとつとして持っておきたい、とのFRBの意図も透ける。

 とはいえ、初体験だった量的緩和と同様に、量的引き締めもまた、まったくの未体験ゾーンだ。任期終了を来年に迎えるイエレン議長としては、少なくとも金融正常化の道筋だけはつけて、後継者にバトンタッチしたいところであろう。

 トランプ大統領には「私は低金利を好む」と先制攻撃発言されてしまった。これまで「データ次第」と繰り返し、政治的独立性も死守してきたイエレン議長だが、実質的には「トランプ次第」の様相も呈している。年後半のドル安・円高要因として、米国金融政策の新たな展開から目が離せない。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸’s OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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