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がん治療・解体新書(3)細胞のゴミ袋、実は元凶

(2/3ページ)
2017/5/17 6:30
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 この事実はがん患者で実際に確認済みだ。例えば、卵巣がんを罹患(りかん)した人の腹膜にがんが転移するケースが多いが、実はこれはエクソソームの仕業だった。

■乳がんの謎を解く

 転移のメカニズムを確かめるため落谷氏らが、卵巣がんが出すエクソソームを腹膜中皮細胞にかけると、細胞が死ぬことが分かった。「顕微鏡で見たら腹膜にボコボコ穴が空いていた」(落谷氏)。穴はがん細胞の転移の足場となってしまう。

エクソソームで穴が開いたマウスの腹膜(落谷氏提供)
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エクソソームで穴が開いたマウスの腹膜(落谷氏提供)

 エクソソームのメカニズムの解明は、医学界での長らくの謎を解く鍵ともなった。その一つが乳がんの転移の問題だ。

 乳がんは比較的、治りやすいがんとされ、早期発見なら90%以上が完治する。なのに転移の威力はすごい。通常なら異物が侵入するはずもない脳への転移の比率が全体の4割を占めるのだ。これが分からなかった。

 脳には血液脳関門という強固なバリアーがある。極小サイズの低分子薬すら通さない。ところがなぜ、がん細胞は関門を突破できるのか。

 この解答こそ乳がんが出すエクソソームにあった。「乳がん発」のエクソソームに由来する特定のマイクロRNAが強固な血液脳関門に穴をあけていたのだ。

 本来なら脳は血液脳関門という強固なゲートに守られている。ゲートの骨格はアクチンというたんぱく質で形成されており通常、がん細胞は侵入できない。

 ただ、アクチンにも弱点がある。コフィリンというたんぱく質には弱いのだ。接近されると分解され「グニャグニャに柔らかくなってしまう」(落谷氏)。

 そうならないよう通常、「PDPK1」というたんぱく質がアクチンを守っている。コフィリンがアクチンにアプローチするのを妨げている。PDPK1という門衛がアクチンでできた脳のゲートを守っているわけだ。

 ところが「乳がん発」のエクソソームに由来するマイクロRNAはこのPDPK1を排除してしまう。「もう、PDPK1はいらない」というメッセージをゲートに送り、PDPK1を消滅させてしまう。門衛がいなくなり丸裸になった脳の関門はひとたまりもない。コフィリンによってゲートは「グニャグニャ」になり、その隙間からがん細胞が侵入する。

 これは患者の血液を使った実験でも裏付けられた。落谷氏らが乳がん患者の血液を調べると、脳転移のある人は血液脳関門をグニャグニャにするマイクロRNAが極端に多いことが分かった。

■抗がん剤の効果も減殺

 エクソソームが、抗がん剤の効き目を減殺する働きを持つことも明らかになりはじめた。例えば治療効果が高いことで知られる抗がん剤の「ハーセプチン」。通常は効くはずなのだが、一定の割合の患者にはどうしても効かない。これが長らくの謎だった。

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