日経産業新聞セレクション

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

がん治療・解体新書(1) 親玉をたたけ 頂上作戦

(1/4ページ)
2017/5/15 6:30
共有
保存
印刷
その他

 101万人――。国立がん研究センターの発表が医療界を震撼(しんかん)させた。2016年にがんと診断された人の数で、100万人突破は初めて。今や、日本人ががんを罹患(りかん)する割合は男性が63%、女性47%(2012年)。2人に1人どころではない。しかし、手はずはある。死亡者の8割を占める「転移・再発」を防ぐのだ。「がん? あるけど元気です」。そんな時代が幕を開ける。

■手ごわいゾンビ

遺伝子改変ウイルス「G47Δ」を投与してから36時間後、がん細胞が小さくなり始めている=東大提供
画像の拡大

遺伝子改変ウイルス「G47Δ」を投与してから36時間後、がん細胞が小さくなり始めている=東大提供

 やはりそうか――。マウスに移植したはずのがん細胞。その転移が進んでいなかったのだ。この瞬間、慶応義塾大学病院・臨床研究推進センター長の佐谷秀行教授は自分の理論が正しかったことを確信した。

 マウスに移植したのはがん幹細胞(CSC)。がん細胞の親玉で、人類を悩まし続けたがんの再発・転移の元凶だ。CSCを移植させたマウスに佐谷教授は試験中の薬剤を投与、見事に成果を上げたのだった。

 開発が順調に進み、薬剤開発にこぎ着けられれば世界初の快挙。人類未踏の頂きに佐谷教授のプロジェクトチームが立つ。人類とがんとの戦いは「人類勝利」に大きく傾く。国民の健康を維持・増進させる創薬をサポートする日本医療研究開発機構(AMED)も全面支援の方針だ。

 「元から断て」――。トイレの消臭剤のCMではない。今、日本で進むがん治療の最前線の話だ。佐谷教授は、あちこちの学会や講演会を飛び回り、がん治療は親玉を叩(たた)くことこそ大切と説く。

 がんの親玉。最近、一気に注目され始めたCSCは、一般のがん細胞とは峻別(しゅんべつ)される特別の存在と言える。1990年代に発見され研究者の間で話題になることはあったが、不明な点が多く、今ほど重視されることはなかった。

画像の拡大

 CSCの最大の特徴は強い生命力だ。薬剤などの攻撃にも耐え忍び、親玉でない一般のがん細胞が死滅するのにCSCだけは生き残る。そして時間をおいて力を取り戻し、「増殖→再発→転移」という過程をたどり、最後は人を死に至らしめる。

 CSCが厄介なのはその生命力だけではない。がん組織を生み出す能力の高さだ。CSCが生み出す細胞は2種類ある。一つは普通のがん細胞。そしてもう一つが自分と同レベルの強力な細胞、つまりクローンだ。

 がん細胞を生み出すだけでも手ごわい。なのに親玉である自分と同等の組織も作り出すとなるともはや一筋縄ではいかない。薬剤投与後も生き残り休眠、しばらくして再び場所を移したりしながら自己複製を始め腫瘍を再構築するのだ。

 まるでゾンビ。CSCを叩かない限りがんの息の根を止めることはできない。つまり治療後、再発・転移そしてまた治療という負のサイクルを断ち切れないわけだ。

 人類はがんには勝てないのか……。

 しかし、佐谷教授の研究はここで立ち止まらなかった。「なぜ、CSCには抗がん剤も放射線も効かないのか」。難問に突き進んだのだ。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
共有
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

【PR】

日経産業新聞セレクション 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

ちょっと紹介 明日(21日)の紙面

■孫氏、視線は300年先
 日経産業新聞の明日(21日)の紙面を紹介。ソフトバンクがサウジアラビアなどと共同で10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を発足させてから20日で3カ月がたちました…続き (8/20)

資生堂のしわ改善効果のあるスキンケア商品の人気は高い(都内のドラッグストア)

しわ取り化粧品、最高益の立役者 資生堂とポーラ

 資生堂とポーラ・オルビスホールディングス(HD)が相次いで発売したしわ改善効果のある化粧品の売れ行きが好調だ。いずれも「しわを改善する」などと表現することを承認されており、中高年女性らへのアピールに…続き (8/18)

JFE環境が増設した水銀ランプの処理ライン(横浜市)

水俣条約が発効 水銀ランプ処理需要に的

 水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す国際条約「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」の発効を受け、環境各社が関連需要の取り込みに動いている。JFEエンジニアリングは水銀ランプの解体ラインを増設、2…続き (8/18)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

8/20 22:00更新 ビジネスリーダー 記事ランキング

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<8/14の予定>
  • 【国内】
  • 4~6月期の国内総生産(GDP)速報値(内閣府、8:50)
  • 8月のQUICK外為月次調査(11:00)
  • 7月の投信概況(投資信託協会、15:00)
  • 4~6月期決算=富士フイルム、出光興産
  • 【海外】
  • 7月の中国工業生産高(11:00)
  • 7月の中国小売売上高(11:00)
  • 1~7月の中国固定資産投資(11:00)
  • 1~7月の中国不動産開発投資(11:00)
  • タイ市場が休場
  • 7月のインド消費者物価指数(CPI)
  • 7月のインド卸売物価指数(WPI)
  • 6月のユーロ圏鉱工業生産(18:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/15の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 7月の首都圏・近畿圏のマンション市場動向(不動産経済研究所、13:00)
  • 6月の鉱工業生産指数確報(経産省、13:30)
  • 【海外】
  • 豪中銀理事会の議事要旨公表(1日開催分、10:30)
  • 4~6月期の独国内総生産(GDP、速報値)
  • 7月の英消費者物価指数(CPI、17:30)
  • 7月の米小売売上高(21:30)
  • 7月の米輸出入物価指数(21:30)
  • 8月の米ニューヨーク連銀製造業景況指数(21:30)
  • 6月の米企業在庫(23:00)
  • 8月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数(23:00)
  • 6月の対米証券投資(16日5:00)
  • 5~7月期決算=ホーム・デポ
  • 韓国とインドが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/16の予定>
  • 【国内】
  • 8月のQUICK短観(8:30)
  • 1年物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 7月の訪日外国人客数(日本政府観光局、16:00)
  • 【海外】
  • 6月の対米証券投資(5:00)
  • タイ中銀が政策金利を発表
  • 4~6月の英失業率(17:30)
  • 4~6月期のユーロ圏域内総生産(GDP)改定値(18:00)
  • 7月の米住宅着工件数(21:30)
  • 米エネルギー省の石油在庫統計(週間、23:30)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月25~26日開催分、17日3:00)
  • 5~7月期決算=シスコシステムズ
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/17の予定>
  • 【国内】
  • 7月の貿易統計速報(財務省、8:50)
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 5年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 【海外】
  • 7月の豪雇用統計(10:30)
  • 4~6月期のフィリピン国内総生産(GDP)
  • 7月の英小売売上高(17:30)
  • 6月のユーロ圏貿易収支(18:00)
  • 欧州中央銀行(ECB)理事会の議事要旨公表(7月20日開催分)
  • 米新規失業保険申請件数(週間、21:30)
  • 8月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(21:30)
  • 7月の米鉱工業生産(22:15)
  • 7月の米設備稼働率(22:15)
  • 7月の米景気先行指標総合指数(23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2、ワシントン)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(18日2:00)
  • カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が討議に参加(18日2:45)
  • 5~7月期決算=ウォルマート・ストアーズ
  • インドネシアが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/18の予定>
  • 【国内】
  • なし
  • 【海外】
  • 7月の中国70都市の新築住宅価格動向(10:30)
  • 4~6月期のマレーシア国内総生産(GDP)
  • 8月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ、23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(23:15)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]