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大関昇進に再び挑む夏場所 大相撲・高安晃(上)

2017/5/13 6:30
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 3日、東京・両国国技館で一般公開された横綱審議委員会の稽古総見。日馬富士から稽古相手に指名された関脇高安が土俵に入ると、客席から大きな拍手が起きた。

 横綱の速い攻めに当初は防戦一方の高安だったが、途中から形勢が逆転する。力強い上手投げや突き落としで横綱を土俵にはわせた。最後は3連勝と盛り返し4勝6敗。その後のぶつかり稽古では白鵬の胸を借りて砂まみれになった。

夏場所の目標は「15日間取り切って全勝したい。大関よりもそこです」

夏場所の目標は「15日間取り切って全勝したい。大関よりもそこです」

 「きつい稽古はなかなか自分からはできないので、引っ張ってもらってありがたい。たくさんのファンに声をかけていただき、恩返ししたい気持ちも強くなった。夏場所まで連日、きょう以上の稽古をしていきたい」

 14日に初日を迎える夏場所で大関昇進に挑む。初場所は小結で11勝、春場所は関脇で12勝を挙げた。昇進に必要な目安は直近3場所で33勝とされ、星勘定では10番で届く。直近5場所で4度2桁勝っていることを考えれば、ハードルはそれほど高くない。

 「春場所は充実していた。立ち合いが良く、自分の型にはまった相撲を多く取れた」と振り返る。初日から10連勝し、兄弟子の稀勢の里と共に賜杯レースを引っ張った。

 強烈な印象を残したのが5戦全勝同士で顔を合わせた6日目の照ノ富士戦だ。右のかち上げから力強い突き放しをさく裂させ、巨漢大関に何もさせず押し出した。熱戦の予想を覆す圧勝に、照ノ富士も観客もしばしあっけにとられた。

こだわるのは「勝ち方」

 186センチ、174キロ。フィリピン出身の母を持つ。褐色で分厚い体躯(たいく)は、ゴムまりのような弾力を感じさせる。突いてよし、組んでよし。投げやひねりも強烈なオールラウンダーだ。「突っ張ってから展開する相撲が合っている」と考えるが、最近は突っ張りだけで勝負が決まることも増えた。「突き押しをもっと磨きたい。一方的な相撲がいい」。勝てばいいというレベルは過ぎた。こだわるのは「勝ち方」だ。

 初めて大関昇進に挑んだ昨年の九州場所は7勝8敗に終わった。今回の自信のほどを尋ねると、無言で大きく2度うなずいた。見据えるものはさらに先にある。「15日間取り切って全勝したい。大関よりもそこです」

 大関を目指す三役時代というのは、土俵人生を通しても得がたい季節だ。元横綱千代の富士の九重親方は2015年九州場所のテレビ解説中、直前に死去した元横綱の北の湖前理事長を破って初優勝した関脇時代の映像を見て涙を流した。それは故人への哀悼だけでなく、自らの青春への郷愁でもあっただろう。元横綱の朝青龍も思い出の一番に、三役時代に勝った横綱武蔵丸戦を挙げている。

 いまの高安もそうだ。すべてが手に入りそうな伸び盛りの充実感と渇望。失うもののない強みも加わって、みずみずしい生命力と希望にあふれている。

〔日本経済新聞夕刊5月9日掲載〕

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