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アイデアは若手に任せろ 日本車初エアバッグ開発者
CTO30会議(10)

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2017/5/2 6:30
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日経BPクリーンテック研究所

 本田技術研究所で1987年に日本初の量産車向けエアバッグの開発・市販に成功するというイノベーションを起こした小林三郎氏。大半の経営陣が反対する中、粘り強く開発を続け、製品化にこぎ着けた。その経験から語るイノベーションの極意は、“本質”と“コンセプト”を徹底的に考えることだ。では、従業員にそれを促すには、経営陣や組織はどうあるべきか。現在、中央大学大学院フェローの小林氏に聞いた。

――エアバッグの開発では、当時の経営陣の大半が反対したと聞きました。それが今や、ほとんどの自動車が標準装備しています。なぜ、こうしたことが起こるのでしょうか。

写真1 中央大学大学院フェローの小林三郎氏(撮影:新関雅士)
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写真1 中央大学大学院フェローの小林三郎氏(撮影:新関雅士)

小林 当時、久米是志専務(後にホンダ3代目社長に就任)以外の経営陣は全員反対しました。豊富な経験や知識を持つ人たちは、いくらでも、できない理由を頭に浮かべてしまいます。そうした例はエアバッグ以外にも、数多くあります。例えば、ソニーのウォークマン。これも全役員、技術の専門家が、録音機能のないテープレコーダーは売れないと言って大反対だったと聞いています。しかし実際はご存じの通り世界的大ヒットになりました。

 何か革新的なこと、イノベーションを起こそうと思ったら、10人中9人が賛成するようなものでは、既に遅すぎるのです。9人が反対するようなものの中にダイヤの輝きを持った発明があるのです。

 知識や経験が豊富になる40代以降は、それらがかえって邪魔になり、ダイヤの輝きを持つアイデアを生み出せません。アイデア出しは若手に任せたほうがいいのです。だから本田技術研究所では「40歳定年制」という考え方をしていました。もちろん、40歳を過ぎたらやるべきことがなくなるのかといえば、そんなことはありません。役割を、イノベーションを考えることではなく、イノベーションをマネージメントすることに変えていけばいいのです。

――イノベーションをマネージメントするにはどうすればいいのでしょうか。

小林 まず、イノベーションはオペレーションとは違うということを認識しなければいけません。オペレーションは論理的に正解を追求できるもので、必ず正解があります。しかし、イノベーションを論理的に作り出すことはできません。必ず実現する保証もありません。せいぜい全体の10%くらいしか成功しないでしょう。過去の事例が当てはまらないのがイノベーションなのです。

 実現する保証がないわけですから、それは大きなリスクを伴います。未来価値の大きいことで、他社がやっていないことに、リスクを取って挑戦することが求められます。そうした判断をリーダーがしなければいけません。それができないリーダーは、イノベーションをマネージメントできません。

――イノベーションをマネージメントするうえで、数あるアイデアの中から、どれを推進し、どれを却下するのか、どのように判断すればいいのでしょうか。

小林 アイデアを出してきた若手に本質的な質問を投げかけることです。そうすることで、その若手がどれほど熟慮してきたか、どれだけ真剣に考えているかを見抜くことができます。繰り返しますが、まだ見ぬ価値を生み出そうというのですから、内容の良し悪しで判断しようとしてはいけません。

 私がエアバッグについて説明したとき、久米専務から「高信頼性確保のキー要素は何か」と聞かれました。予期せぬ質問でしたが、「故障の極小化、故障時に最低性能を保持、故障の予見性」となんとか3つ挙げました。すると専務は、すかさず「では、4つめと5つめは何か」と尋ねてきます。答えられずにいると、専務は「何も分かってないな」と言うと、「ほんとにこの人に開発を任せておいて大丈夫なのか?」とつぶやきながら部屋を出ていきました。打ちのめされた気持ちでした。でも、こうした質問をすることで、熟慮することが大切だと教えてくれたのだと思います。

 イノベーションにおける熟慮とは、要素を無数に挙げて、それらを整理しながら、最終的にいくつかの本質的な要素にまとめ上げることです。そうすることで、物事の本質を捉えることができるのです。

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