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厳しい耐久戦 心が丸裸にされた冷雨の中のレース
編集委員 吉田誠一

(1/2ページ)
2017/3/29 6:30
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 55歳で迎えた55回目のフルマラソンだから、何かいいことがあるんじゃないかとちょっと期待したが、ゴー、ゴー、ゴー、ゴーとはいかなかった。3月26日、佐倉朝日健康マラソン(千葉)で冷たい雨の中、みなさんと一緒につらい思いをした。

 3月下旬のマラソンといえば、普通は「暑くなったらどうしよう」と心配する。ところが今回は冷たい雨と風に体を冷やされ、厳しい耐久戦を強いられた。

気温が低く雨が降り、厳しい耐久戦を強いられた

気温が低く雨が降り、厳しい耐久戦を強いられた

 気温が低く、雨という天気予報だったので、寒さは覚悟していた。スタート時の佐倉の気温は7度。号砲直前に本格的な雨が落ち始めた。「めげるなあ」というつぶやきがあちこちから聞こえた。

 もっとも、序盤は脚力と精神に余裕があるので、雨はさほど気にならなかった。初めて3時間半を切った07年の第1回東京マラソンが冷たい雨の中のレースだったことに基づき、自分は雨に強いと言い聞かせもした。本当のところはよくわからないが……。

急な上り坂でリズム狂う

 スタート直後の下り坂を利用して、うまくランニングフォームを整えることができたので、気分は爽快だった。いつものことだが、好記録を出すチャンスかもしれないと思った。

 前半はだれでも夢を見ることができる。それがマラソンのいいところだ。しかし、早い段階で変な夢を抱いてしまうのは優れたマラソンランナーではない。

 目標は3時間25~30分に置いたので、1キロを4分50秒ペースで進めたいと思っていた。25キロまではそのペースをクリアしている。

 しかし、精神的にかなり余裕があったのは15キロまでだった。15キロ過ぎの急な上り坂でリズムが狂った。いつまでたっても上りは苦手で、後続ランナーにどんどん抜かれた。

 ここで心にダメージを受けたことが、折り返し点を過ぎてから徐々に失速する原因になった気がする。「よし、あと半分」ではなく「まだ半分かよ」という受け止め方しかできなかった。それは寒さで体を痛めつけられたせいでもある。

 ビニールのゴミ袋に頭と腕を通す穴を開けてかぶっていたので、上半身はぬれずに済んだが、布製の手袋が雨でぐしょぐしょになったため、かえって手が冷えた。これでは逆効果だと思い、手袋を捨てたが、ますます手はかじかんだ。

 ロングタイツでフルマラソンはつらいので、短パンにランニング用腹巻きを着用していたが、徐々に腰回りが冷え、後半は断続的に腹痛が起きた。

 こうなると、ペースダウンは避けられず、折り返してからは1キロごとのラップタイムが5分~5分15秒に落ちた。ところどころで奮起するが、ペースが安定しない。

いつまでたっても上りは苦手だ

いつまでたっても上りは苦手だ

 つらいレースをしていると、徐々に肉体が溶け出し、心が丸裸にされていく感覚を覚える。走っているのは、自分の肉体であるというより、むき出しになった自分の心であり、精神であり、人格であるのではないかと感じる。

 苦しくなると、自分は精神そのものだけになり、なえた魂のみがよろよろと走っている。苦悩の塊だけが走っている。ぼんやりとした心だけが走っている。心が体を走らせているというより、心そのものが懸命に走っている。

 こうやって苦闘していると、結局、自分の実体は精神にあるということに気づく。肉体はその精神が仮の形としてかぶっているだけなのではないかという気がしてくる。

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