最新の市場情報

※営業日はリアル更新
日経平均株価(円) 19,289.43 +210.10
日経平均先物(円)
大取,17/06月
19,280 +190

[PR]

豊島逸夫の金のつぶやき

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

米追加利上げ、「世界の中銀」矜持示したイエレン氏

2017/3/16 5:59 (2017/3/17 10:14更新)
共有
保存
印刷
その他

 市場が最も注目していた2017年の利上げ回数予測は、前回(2016年12月時点)と変わらず、3回であった。添付チャートを見てわかるように、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者17人が予測した金利予測の中央値は1.375%。FOMCは15日、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げて0.75~1.00%にした。予測値1.375%は年内にあと2回利上げをした場合の1.25~1.5%の中間値に相当する。つまり17年は計3回の利上げを見込んでいることを意味する。

 リスクシナリオとして4回を覚悟していたニューヨーク(NY)株式市場は安堵感で上昇。いっぽう、外為市場では、4回を見込んでドル買いポジションを膨らませていたヘッジファンドなど通貨投機筋が、手じまいのドル売りに走った。その結果、円高に振れ、日本株市場には逆風となる結果となっている。

 その他のリスクシナリオとしては、4.5兆ドルに膨張した米連邦準備理事会(FRB)の資産の縮小と、今回の利上げサイクルの最終着地点(ターミナル・レート)の引き上げが挙げられていた。前者は、イエレン議長が記者会見で、「FF金利が主たる金融政策手段」と語り、政策手段としての資産縮小は否定した。後者は、添付チャートの「長期」の欄で明らかなとおり、前回に比べて著しい変化はない。

 総じて、イエレン議長の戦略どおり、市場に大きな影響を与えず、3月利上げが実施された。

 とはいえ、イエレン議長は、今後の金融政策につき、あくまで「データ次第」をこれまでどおり繰り返すが、市場の視点では「トランプ次第」である。ボールは財政政策側に投げられた。

 従って、リスクは、トランプ大統領の財政政策、特に「驚異的」な減税が議会を通るまで手間取るシナリオだ。ムニューシン財務長官は8月までと語ったが、市場では、年末までに議会で承認されれば御の字、などと語られている。それまで、株式市場がじれずに待てるのか。さらに、伝統的に均衡財政を党是とする共和党内では、減税分を賄う財源として、国境調整税導入が考慮されているが、賛否両論が渦巻いている。その結果、財政出動が遅れる、あるいは、市場の期待を下回る規模となれば、結果的に、今回の利上げが時期尚早であったとの批判も出てこよう。

 そして、ワイルドカードが原油価格だ。

 イエレン議長は、インフレ率について、おおむねFRBの目標値である2%に近づきつつあると自信を示した。そこで、リスクは、原油生産国の減産合意が崩れるいっぽうで、米国のシェール生産量が増え、原油価格が再び下げ基調となるシナリオだ。さらに、その悪影響は株式市場にも及ぶ。

 欧州リスクも無視できない。注目のオランダ下院選は出口調査などで与党ルッテ首相有利の展開だ。とはいえ、ウィルダース氏への支持も根強く、フランス大統領選挙への影響も依然懸念される。

 今回の利上げは、これらのリスクを前提条件から外して決められた。イエレン議長の読みは、できるうちにやっておこう、もし、外的要因が悪化すれば、利下げという伝統的金融政策手段を発動できる水準までFF金利は上がっている、ということではないか。金融政策は決められたコースに乗って進行するわけではない。常に柔軟に対応する、とのイエレン発言に、その思いがにじむ。

 記者会見で、トランプ大統領と会ったかと聞かれ、イエレン議長は短い時間だが会ったと素っ気なく答えた。FRBへの政治介入の可能性が話題となるなかで、財政政策がもたつく間に、金融政策はFRBが毅然と判断する姿を印象づけたかったのかもしれない。

 トランプ大統領は、「米国は世界の警察ではない」と語ったが、ことFRBに関しては、市場は国際基軸通貨ドルの通貨の番人ゆえ「世界の中央銀行」とみなしている。その長としてのFRB議長の矜持(きょうじ)を見せつけたような利上げの次の場は6月か9月か。市場では既に先読みが始まっている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸’s OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

豊島逸夫が語り尽くす 金 為替 世界経済

出版:日経BP社
価格:1026円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

豊島逸夫の金のつぶやきをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップマーケットトップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!