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緊張の悪影響を可視化 「メンタル」制御への一歩
NTT「スポーツ脳科学プロジェクト」(下)

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2017/3/17 6:30
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 脳を鍛えてアスリートのパフォーマンスの向上を支援する、新しいトレーニング法を確立する――。NTTは2017年1月、「スポーツ脳科学(Sports Brain Science:SBS)プロジェクト」を正式に発足した。

 これまでの実験室での脳科学研究に、練習や試合を含むリアルな状態での選手の計測結果を組み合わせて解析し、アスリートの脳内情報処理とパフォーマンスの関係性を明らかにする、これまでにない取り組みだ。前回に続いて、実験で得られた新たな知見などを紹介する。

SBSプロジェクトで活用する、「スマートブルペン」での計測の様子。バッターは慣性センサーを内蔵したウエアを着用、さらに視線を追跡する「アイトラッカー」をかけて打撃し、生体情報をリアルタイムに取得する。写真は東大野球部の選手
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SBSプロジェクトで活用する、「スマートブルペン」での計測の様子。バッターは慣性センサーを内蔵したウエアを着用、さらに視線を追跡する「アイトラッカー」をかけて打撃し、生体情報をリアルタイムに取得する。写真は東大野球部の選手

 「練習では調子が良かったのに、試合で緊張して実力を発揮できなかった」――。これはプロであれ、アマチュアであれ、どのアスリートにも起こり得る非常に悩ましい現象だ。しかも、本人がそれを自覚しても制御するのは難しい。

 緊張によって心拍数が上昇することは誰でも知っている。しかし、心拍数は運動そのものによっても上昇するため、実際、どの程度の影響があるのか、分かっていないことも多い。そこでNTTは、試合時のメンタル状態が引き起こす心拍数の上昇とパフォーマンスの関係を解明する実験に取り組んでいる。

■「体が思うように動かない」

 この実験では、着るだけで心拍数などを計測できる機能素材「hitoe(ヒトエ)」を活用する。練習でhitoeを組み込んだウエアを着た投手がピッチングし、hitoe電極で心拍を、ウエアに付属のトランスミッターに内蔵した加速度センサーで体幹部分の加速度を計測。加速度(運動強度)と心拍数から運動由来の心拍数を推定するモデルを作る。

 そして、実際の試合時にも同じウエアを着て心拍数と加速度を計測。上記の心拍推定モデルから、メンタルに起因する心拍数の変化分を抽出する。

試合中のメンタル(緊張)による心拍数の上昇の推定法。野球の練習時と試合時の心拍数と加速度をそれぞれ計測し、練習時のデータから運動由来の心拍数予測モデルを作成。試合中の心拍数の変化から、メンタル由来の成分を抽出する(図:NTT)
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試合中のメンタル(緊張)による心拍数の上昇の推定法。野球の練習時と試合時の心拍数と加速度をそれぞれ計測し、練習時のデータから運動由来の心拍数予測モデルを作成。試合中の心拍数の変化から、メンタル由来の成分を抽出する(図:NTT)

 下の図は、実際の試合で計測した、投手のメンタルに起因する心拍数の上昇分をグラフにしたものである。被験者はSBSプロジェクトのリーダーを務める、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員の柏野牧夫氏。横軸は時間、縦軸は運動量から予測される心拍数(baseline)と実測心拍数の差分(縦軸)である。

柏野氏が実際の試合で登板した際に記録した、メンタル由来の心拍数の上昇分。正確には、運動量から予測される心拍数(baseline)と実測心拍数の差分。登板時には緊張によって60bpmも上昇しており、身体が思うように動かない状態であったことが分かる(図:NTT)
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柏野氏が実際の試合で登板した際に記録した、メンタル由来の心拍数の上昇分。正確には、運動量から予測される心拍数(baseline)と実測心拍数の差分。登板時には緊張によって60bpmも上昇しており、身体が思うように動かない状態であったことが分かる(図:NTT)

 試合中は常に心拍数が上昇しているが、実際にピッチャーとして登板しているときは通常より60bpm(拍/分)も上昇し、最大心拍数は170bpmに達した。一般に最大心拍数の目安は「220マイナス年齢」なので、「身体が思うように動かない状態にあった」と同氏は振り返る。

 このため、ピッチャーゴロを一塁に送球する際、練習ではほとんどしたことがないショートバウンドの送球をしてしまったという。さらに、通常は100km/h程度のボールを100球投げても疲れないのに、試合では20球強でヘロヘロの状態になった。同氏は、緊張による心拍数の上昇でエネルギーを消費したと推測している。今回の実験は、過度の緊張がパフォーマンスに悪影響を与えることを裏付けているわけだ。

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