一枚上手の相撲論(浅香山博之)

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腐らず頑張る尊さ示した 稀勢の里の横綱昇進

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2017/3/10 6:30
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 12日に初日を迎える大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)で「横綱・稀勢の里」がデビューする。この晴れ舞台を迎えるまでに優勝次点12回。新入幕から所要73場所での横綱昇進は昭和以降もっともスロー出世だという。幾多の挫折を乗り越え1月の初場所で初優勝と綱の地位を同時につかみ取った努力の人は、腐らずに頑張り続けることの尊さを示してくれた。

初場所千秋楽で白鵬(奥)にすくい投げで逆転勝ちした稀勢の里=共同

初場所千秋楽で白鵬(奥)にすくい投げで逆転勝ちした稀勢の里=共同

強さはあの腰の重さにある

 1月の初場所も安定して強かった。千秋楽の白鵬戦は大横綱のプライドをかけた押しに俵に詰まりながらもこらえ、すくい投げで逆転勝ち。稀勢の里の強さはあの腰の重さにあると確信する一番だった。初場所全体で見てもそこが光っていたと思う。

 優勝1回での昇進をどう思うかメディアの人から聞かれることが多い。自分は5回優勝したが、次の場所は成績が悪かったりケガで休んだりと、安定して結果を残せなかった。横綱は土俵に上がり続け、なおかつ勝ち続けなくてはならない地位だ。ちょこちょこ休むような人間には務まらない。だから私はどれだけ優勝しても横綱にはなれなかったと思っている。

主な力士の横綱昇進直近5場所の成績
力士勝敗勝率
朝青龍61-14.813
白鵬46-14-15休.613
日馬富士60-15.800
鶴竜56-19.747
稀勢の里61-14 .813

(注)白鵬の休場は負けとみなす

 かたや稀勢の里は初土俵以来、2014年初場所千秋楽の1日しか休場がない。しかもここ1~2年はコンスタントに10~13勝の好成績を残し続けてきた。昨年は年間最多勝に輝き、白鵬には目下3連勝中だ。横綱とも対等に戦い、昨年1年でみれば3横綱よりも結果を残している。白鵬は別格の存在だが、最近はほかの2横綱に比べても稀勢の里のパフォーマンスの高さが際立っていた。稀勢の里に唯一足りないのが賜杯だった。だから、優勝をきっかけに昇進するのは個人的には全く問題ないと思う。ここで上げずにいつ上げるのかという印象さえある。

 故障知らずなのは常に前に出ているからだ。若いころから引き技や強引な投げをほとんどしない力士だ。後ろに下がりながらのこうした逆転技は自分の体重に相手の体重も加わってくるので、ケガをしやすい。そういうことをしなくても勝てるのが本当の強さだ。若い衆にはそこを見習ってほしい。シンプルに前に出る相撲であれだけ勝てる本物の強さを備えている点でも稀勢の里は横綱にふさわしいと思う。

春場所に向けて高安(左)と稽古する新横綱・稀勢の里=共同

春場所に向けて高安(左)と稽古する新横綱・稀勢の里=共同

貫いてきた真っ向勝負

 ここまで真っ向勝負を貫いてきたこともたたえたい。ほかの横綱を批判するわけではないが、稀勢の里は立ち合いでのかち上げや張り手で相手を萎縮させて主導権を握ったり、立ち合いの変化で勝負を決めたりはしない。初場所でも新関脇の正代が初日の白鵬戦で「張り手をされるかも」とびびってしまったことが報道されていたように、白鵬や日馬富士の取り口は相手に恐怖心を抱かせている面も否めない。

 稀勢の里は基本的にそういう打撃技も注文相撲もしない。だから、相手は思い切ってぶつかっていける。これが平幕相手に取りこぼす一因だろう。それでも信条を曲げることなく、今回結果を出したことに何よりの価値があると思う。

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