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「米国第一」に模範解答 鴻海、巨額投資の深謀
大槻智洋 TMR台北科技 代表

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2017/2/21 2:00
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 “Made In U.S.A.”の復活に向け、内外の製造業に強いメッセージを投げかけている米国のドナルド・トランプ大統領。それに応えるかのように世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)、鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコン:Foxconn)が動き出した。鴻海の動きは一見、トランプ大統領の意向に沿うための“建前”にも見えるが、実は電子機器の生産の潮流変化を捉えた“したたかな戦略”と見る業界関係者もいる。EMSの動向に詳しいTMR台北科技の大槻智洋氏に、鴻海の狙いを解説してもらう。

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 フォックスコンが表明した米国への巨額投資は、製造業の実態を知る者にとって“尋常な判断”ではない。誰もが「製造業の中心は英国→米国→日本→中国と、西から東に移転してきた。今さら西(米国)に帰るわけがない」と産業史の観点から批判できる。

 しかし、フォックスコンはこれまで数々の常識を覆してきた私企業である。かつて「筺体(きょうたい)屋がデスクトップパソコンの製造なんて」「デスクトップパソコン工場が携帯電話なんて」と評されながら、それを覆すことで年間売上で15兆円を超える巨大EMSに成長した(図1)。フォックスコンは今、自動車のように電子機器も大消費地で生産する時代を見据えている。

図1 シャープ製品を説明する郭台銘氏(右から3番目)とシャープ社長の戴正呉氏(右から2番目)ら(撮影:筆者、2016年1月)
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図1 シャープ製品を説明する郭台銘氏(右から3番目)とシャープ社長の戴正呉氏(右から2番目)ら(撮影:筆者、2016年1月)

■米国投資でリードタイムを短縮

 フォックスコンはこれまで米国から遠い中国で、スマートフォン(スマホ)やパソコン、サーバー、テレビといった電子機器を集中生産してきた。製造原価を抑えるためだ。しかし、電子機器の世界では、かつてのように値段を下げさえすれば、販売台数が一気に増える時代は過ぎ去りつつある。

 孫社長がトランプ大統領に対して、フォックスコンの投資によって5万人の雇用機会を作り出すと説明した「2021年」以降(上の【これまでの主な動き】参照)に、EMSの中で差異化点となるのは「Q・C・D(品質・コスト・納期)」の中で、QかDだ。Qの差異化は簡単には行かないが、Dには直接効く手段がある。

 それが「現地生産」である。液晶パネルや電子機器の出荷元が中国から米国になるので、EMS/ODMサービスの顧客企業(以下、ブランド企業)の販売リードタイムが短縮する。電子機器をより速く調達できるので在庫を一層絞りつつ、わずかな販売トレンドの変化に即応しやすくなる。フォックスコンは、部材サプライヤーがこぞって米国に工場を運営するようになるのを待つ必要はない。中国でやっているように「HUB(ハブ、部材倉庫)」を米国で運営すればいいのだ。

 実は大手EMSはみな、「VMI(Vender-Managed Inventory )」という管理手法に基づくHUBを中国で運営している。その根幹はEMSの生産予測に基づいて、サプライヤーが所要量の部材を自主的にHUBに積むこと。その在庫はあくまでサプライヤーのもので、サプライヤーは「富山の薬売り」のように使われた分に応じた料金だけをEMSに請求する。

 つまり量産に用いた瞬間に初めて、その部材はフォックスコンのものになる。仮にある在庫が所要量未満で量産に支障をもたらしたら、当該サプライヤーは取引停止処分を下され得る。

 現地生産にはこのほかの利点として、雇用を含めた地域経済への貢献、それを通じた関税/非関税障壁リスクの抑制がある。ただし、電子機器や電子部品は無税協定のITA(情報技術協定)の対象になっているので、これらの利点は自動車などに比べて小さい。

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