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[FT]混戦の仏大統領選、躍り出た穴馬(社説)

2017/1/24 15:05
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 欧州全域で中道左派政党は窮地に陥っている。ギリシャとスペインでは、緊縮財政に対する反発が急進左派の台頭を引き起こした。北欧では大部分の国で、極右のポピュリズム(大衆迎合主義)政党が反移民感情と欧州連合(EU)への懐疑の高まりを追い風にしている。伝統的な社会民主主義政党のジレンマがどこよりも深刻なのがフランスだ。オランド大統領の支持率が壊滅的な水準に落ち込んで社会党は混乱、支持者がマリーヌ・ルペン氏の極右政党、国民戦線(FN)に流れている。

 オランド氏の後継候補を決めるレースで現在トップに立つのが、左翼の反主流派で理想主義の一面を持つアモン前国民教育相だ。知名度は比較的低かったが、社会党の大統領予備選の第1回投票で本命候補だったバルス前首相を2位に蹴落とした。このまま決選投票で候補指名を勝ち取る公算が大きいが、大きな波紋を広げることになるだろう──自身が属する社会党と、欧州の今後に極めて重要な意味を持つ選挙の結果の両方に対して。

 社会党支持者にとってアモン氏の大統領候補指名は、オランド氏と党内改革派が追求したリベラルな企業寄りの政策が、一定の成功は収めたもののはっきりと拒絶されたことを表す。また、バルス氏が首相として党を中道寄りに動かし、移民問題とフランスの世俗主義に対して強硬な姿勢を取ったのに対し、社会党の伝統的な優先課題が再確認されたということにもなる。

 これはリスクを伴う針路となるが、必ずしも愚かしくはない。世論調査は、誰が選ばれても社会党の候補は大統領選の第1回投票で落選すると示唆している。保守派のフィヨン元首相、中道のマクロン前経済産業デジタル相、ルペン氏が優勢だ。それでも急進派のアモン氏は、どうしてもオランド政権の失政と結びつけられてしまうバルス氏よりも有権者の熱気を呼びやすい。また、細かい派閥に分裂した社会党を結束させ、共通のビジョンを核に党再編を始めやすい立場にもあるかもしれない。

 加えて、共通点を指摘される英国のコービン労働党首と異なり、アモン氏はフランスを過去に引き戻そうとはしない。ロボットへの課税やベーシックインカム(基礎所得保障)の導入という提案はユートピア的かもしれないが、グローバル経済の性格の変化を踏まえている。

■候補の選択肢はルペン氏だけではない

 しかしながら、社会党予備選の真の勝者はマクロン氏のように見える。マクロン氏は多くの点でバルス氏と考え方が一致するが、独立系候補として立つことを選んだ。マクロン氏は、本来ならライバルに投じられるはずの中道左派票の多くをすくい取れる状況になった。また、アモン氏がFNに流れていたブルーカラー労働者の有権者の一部を引き戻せれば、マクロン氏は決選投票進出への道がよりはっきり見えてくるだろう。

 とはいえ、政治経験に乏しく政党基盤を持たないマクロン氏は依然、厳しい戦いに直面している。今のところ大きな資産は楽観主義と現代性、社会的流動性を高めるという約束、既存政治からの決別を象徴する存在というイメージだ。社会党の幹部らが支持に回る可能性もあるが、政策課題に影響力を振るおうとする思惑も絡んでくると、マクロン氏は手放しで喜べない。独立の立場を維持するために、政策を詳しく打ち出し始める必要がある。

 選挙のたびに同じ政治家と同じ政策が居並ぶのにうんざりしているフランスの有権者にとって、今年の選挙戦はいくらか期待を持てる展開になっている。ルペン氏の訴求力はなお強く、これからの数カ月は神経がすり減るような日々になるだろう。だが、過去との決別を象徴する候補はルペン氏だけではない。既存政治に見捨てられていると感じ、政治システムを揺り動かしたいと思う有権者には、明らかに別の選択肢がある。

(2017年1月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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