Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]ロシアのサイバー攻撃に足並みそろえ対抗を(社説)

2017/1/10 14:30
保存
印刷
その他

Financial Times

 米情報機関の見立てでは、ロシアのプーチン大統領がドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利を望み「情報工作戦」を仕掛けて同氏が勝つ見込みを高めることを命じた。ロシア政府が背後にいるとされるハッキングや情報漏洩、虚偽情報の拡散がどの程度トランプ氏の勝利に貢献したかを測るのは不可能だ。だが、仕掛けた側は「紛れもない成功」と捉えているに違いない。投票サーバーをハッキングせずして影響を及ぼす比較的廉価な手法であり、他の場面でも繰り返して使える価値ある手法だ。

年末の記者会見に参加したプーチン大統領(2016年12月23日、モスクワ)=ロイター
画像の拡大

年末の記者会見に参加したプーチン大統領(2016年12月23日、モスクワ)=ロイター

 トランプ氏がこの見方をはねつけるのは無理もないだろう。ただ、かねて警告を受けていた欧州各国首脳にとってこのままでいいという理由はない。民主主義のプロセスを揺るがすようなロシアの行動は、当然のことながら過大評価も誇張もすべきではない。それは弱さをさらけ出すことになり、プーチン氏の思うつぼだからだ。だが、同氏の騒動を巻き起こす力を見くびるのはひどい過ちに等しい。ロシア政府は旧ソ連時代に磨きを掛けたプロパガンダという暗黒の手法をさらに近代化させて用い、絶大な効果を得た。

 米大統領選前にも、ロシアのサイバー戦士が欧州に狙いを定めていた証拠が次々と見つかっていた。ドイツの情報機関は、ロシアの情報機関が2015年5月にドイツ議会のコンピューターネットワークに侵入したと確信している。昨年、メルケル独首相の難民政策を巡り分裂をあおろうとするロシアのプロパガンダ媒体が急増したが、これがロシア政府の意図を多く物語っている。欧州連合(EU)の機関も次々とサイバー攻撃に遭っている。ロシアが東欧の極右民族主義勢力を支援する作戦を裏で工作していることも分かっている。

■一体化した戦略が急務

 この脅威は状況に照らして考える必要がある。欧州は自らが生んだ多くの問題で混乱している。自国の問題すべてを西側諸国のせいにするのはプーチン氏のお決まりのやり方だが、欧州の政治家はこれをまねたい誘惑に屈してはならない。すなわち、欧州が大衆の不満に対処できないのをロシアのせいにすべきではない。

 スパイ活動の一環としてハッキングを行っているのは何もロシアだけではない。同国の活動が他と異なるのは、政局のさらなる悪化を狙っており、情報利用や虚偽ニュースの拡散に悪意が感じられる点だ。米大統領選での情報漏洩のタイミングは民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の陣営の弱体化を狙って、計算されたもののように見えた。

 欧州は米国よりも主要メディアへの信頼が厚いかもしれないが、それでもソーシャルメディアを通じた巧みな戦術には、はまりやすい。メルケル氏は、今秋に予定されている連邦議会選挙へのロシアによる介入の可能性を警告したが、同氏が懸念するのには理由がある。メルケル氏は、ロシアがクリミアを併合した際に同国に対する経済制裁を真っ先に提唱した1人だった。プーチン氏が晴らしたい恨みは多い。

 ドイツ政府は、偽りでかつ悪意ある情報を流したメディアに重い罰金を科すことを検討している。これは言論の自由を不当に制限するものと見られるかもしれないが、欧米民主主義の弱体化を意図したプロパガンダ戦争という文脈においては、中傷や扇動行為に対して既存の法律を執行する以上のことが必要だろう。同国の政治政党もサイバー攻撃による介入に対抗するための連携を模索している。これも前向きな一歩だ。

 15年3月に欧州理事会はロシアの虚偽情報の活動を監視するためにタスクフォース「イースト・ストラットコム」を立ち上げたが、これまでのところ、資金不足だ。この状況は変えなければならない。欧州関係者は、慎重にこの脅威の本質を分析し、雑音からメッセージを見極めなければならない。資金を十分に確保し、一体化された戦略を練ることが急務だ。

(2017年1月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の逮捕でサムスンの統治改革は大幅に遅れそうだ=ロイター

ロイター

[FT]韓国、サムスン事件を変革の好機に(社説)

 韓国サムスン電子の「皇太子」で事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の逮捕は、韓国の政財界に広がった腐敗の象徴として見ることができる。あるいは、この種の説明責任が考えられないものである場合も多…続き (2/20)

インドの電力問題を解決するには料金の引き上げは不可欠だ(ムンバイ)=ロイター

ロイター

[FT]インドの電力安定供給、資金難で遠のく

 インドでは、送配電会社から発電会社への支払いが資金難で滞っており、13億人の国民に安定した電力を供給する壮大な計画が失敗の危機にひんしている。
 2014年に政権を握ったモディ印首相は、19年までに安…続き (2/20)

フリン氏(右)の辞任で混乱を深めているトランプ政権=ロイター

ロイター

[FT]米政権、問われる対ロ関係

 トランプ米大統領はホワイトハウスで好きなように振る舞えると思っていた。だが、イスラム圏7カ国の市民らの入国を一時制限した大統領令については、シアトル連邦地裁が差し止め命令を出した。そして今度はフリン…続き (2/19)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<2/20の予定>
  • 【国内】
  • 1月の貿易統計(財務省、8:50)
  • 1月の主要コンビニ売上高
  • 榊原経団連会長の会見(15:30)
  • 【海外】
  • 2016年10~12月期のタイ国内総生産(GDP)
  • ユーロ圏財務相会合
  • プレジデントデーの祝日で米国市場が休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<2/21の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 1月の全国百貨店売上高
  • 1月の全国スーパー売上高
  • 1月の食品スーパー売上高
  • 【海外】
  • 豪中銀理事会の議事録公表(7日開催分、9:30)
  • 欧州連合(EU)財務相理事会
  • 2月の仏購買担当者景気指数(PMI、速報値、17:00)
  • 2月の独PMI速報値(17:30)
  • 2月のユーロ圏PMI速報値(18:00)
  • 2月の米製造業PMI速報値(IHSマークイット調べ、23:45)
  • 1月の北米地域の半導体製造装置BBレシオ(22日8:00)
  • 16年11月~17年1月期決算=ウォルマート・ストアーズ、ホーム・デポ
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<2/22の予定>
  • 16年12月と16年の毎月勤労統計確報(厚労省、9:00)
  • 1月の中国主要70都市の新築住宅価格動向(10:30)
  • 1月のマレーシア消費者物価指数(CPI)
  • 2月の独Ifo企業景況感指数(18:00)
  • 1月の米中古住宅販売件数(23日0:00)
  • 米5年物国債入札
  • ブラジル中央銀行が政策金利を発表
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月31日~2月1日開催分、23日4:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<2/23の予定>
  • 1月の企業向けサービス価格指数(日銀、8:50)
  • 16年12月の景気動向指数改定値(内閣府、14:00)
  • 木内日銀審議委員が山梨県金融経済懇談会で講演(10:00)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 20年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 木内日銀審議委員が記者会見(13:30)
  • 進藤鉄連会長の会見(14:30)
  • 1月のシンガポール消費者物価指数(CPI)
  • 韓国中銀の金融通貨委員会
  • 米7年物国債入札
  • マザーズ上場=ユナイテッド&コレクティブ、レノバ
  • 札証アンビシャス上場=フュージョン
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<2/24の予定>
  • 閣議
  • プレミアムフライデー開始
  • 1月のシンガポール鉱工業生産指数
  • 2月の米消費者態度指数確報値(ミシガン大調べ)
  • 1月の米新築住宅販売件数(25日0:00)
  • インド市場が休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]