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[FT]プーチン氏と踊る安倍氏 対ロ交渉は慎重に(社説)

2016/11/9 3:30
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 安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領と気になる外交ダンスを踊っている。ウクライナやシリア問題を巡り、日本の同盟国である欧州連合(EU)の国々や米国とロシア政府が溝を深める中、安倍氏がこのタイミングでプーチン氏と会談するのは理解しがたい。

 だが、安倍氏は長期的な世界の動向を見据えた結果、動かざるを得ないのだ。難題は、この戦略的根拠と短期的に予想される深刻なリスクとのバランスをどうとるかだ。

日ロ首脳会談で握手する安倍首相とロシアのプーチン大統領(9月2日、ロシア・ウラジオストク)=共同
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日ロ首脳会談で握手する安倍首相とロシアのプーチン大統領(9月2日、ロシア・ウラジオストク)=共同

 プーチン氏の日本訪問は来月の予定で、同氏の大統領在任中の11年間で初めてのことだ。両首脳は大きな成果を上げようと尽力している。安倍氏は北方領土として知られる北方四島(ロシア名はクリル諸島)の返還交渉の行き詰まりを打開すると公言している。北方四島は第2次世界大戦後にロシアに編入された。北方領土問題が障害となり、両国は領土紛争を正式に終わらせる平和条約を締結できないでいる。

 北方領土問題の解決は、象徴的ではあるが、安倍氏にとって重要な政治目標だ。田中角栄元首相が1972年に日中国交正常化を行ったが、その成功は戦後外交の中で最も大きな成果だといわれている。安倍氏には、ロシアへの影響力を増すことで中国とロシアの同盟関係が緊密化するのを防ぐ狙いがある。

 ロシアへの接近は日本の対中国戦略の一環でもある。東シナ海の尖閣諸島(中国名は釣魚群島)を巡る領土紛争や、中国による海上ガス田開発で、日中関係は緊張が高まっている。安倍氏はロシアに近づくことで中国とロシアを引き離したい考えだ。

 日本はその地ならしに、ロシアとの経済関係を拡大する構えだ。安倍氏は先週、モスクワに世耕弘成経済産業相を派遣し、経済協力を協議させた。プーチン氏はこのアプローチに好意的だ。延び延びになっているシベリアをはじめとするエネルギー開発プロジェクトを推し進めるために、外国からの投資を切望している。同氏は北方領土の返還交渉に前向きな意向で、日本はそこに活路を見いだしている。

 中国が強気姿勢を増す中、国際社会は勢力均衡の安定を維持することに注力している。日本のアプローチはその点では有用だろう。ロシアが永遠に中国の勢力圏に押し込まれて独裁主義国家圏の「従属的パートナー」となるリスクが減るからだ。ただし、それを防ぐには数十年かかるだろう。

■日本、G7連携を損なう恐れ

 中期的には、日本のプーチン氏との接近は、主要7カ国(G7)の連携を損ない、対ロ制裁を揺るがす恐れがある。

 日本の国益へのリスクもある。専門家の多くは北方領土の小さな2島の返還しか望めないと考えている。日本とソ連は1956年に日ソ共同宣言に署名した。同宣言は日ロの平和条約が締結された場合に北方四島のうち最も小さい歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを定めている。この2島は4島の陸地面積の7%ほどであり、経済や安全保障面での価値はほとんどない。日本は、このわずかな利益のために、米国やEUを遠ざけるリスクをとるべきではない。

 また、日本は、たとえ平和条約の締結後であっても、対中戦略で大きく有意義な支援をロシアから得られると期待すべきでない。ロシアは中国を非常に警戒してはいるものの、天然ガスを東方に送るパイプライン建設をはじめとする中国との経済協力関係を強化したいという願いのほうが、依然として強い。

 日本が、アジアで勢力を増す中国への対抗策を模索しながら、長年の紛争を終わらせたいと願うのは理解できる。だが、G7の結束を犠牲にそれを行うのであれば、重大な過ちだ。

(2016年11月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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