ニュースの深層

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

検証、熊本地震で食器1つ落ちなかった住宅

(2/3ページ)
2016/10/18 6:30
共有
保存
印刷
その他

 A邸は間口が約5.5m、奥行きが約23mの細長い建物だ。建築基準法で求められる壁量に対する比率(壁量充足率)は、間口方向が1.19、奥行き方向が1.55。住宅を施工した工務店のコンフォートハウス(熊本市)は、住宅性能表示制度の耐震等級2~3程度の壁量(建築基準法で求められている壁量の1.25~1.5倍程度)を目安とし、住宅のバランスに当たる偏心率も小さくすることを標準仕様としている。

 そのため、A邸も細長い形状でありながら、耐震等級2に近い耐震性能を確保していた(図1)。制振システムは住友ゴム工業のミライエを採用。コンフォートハウスでは2015年から標準仕様として採用しているものだ。

図1 細長いA邸は壁量充足率1.2程度の壁量と制振システムで地震対策(資料:コンフォートハウスの資料を基に日経ホームビルダーが作成)
画像の拡大

図1 細長いA邸は壁量充足率1.2程度の壁量と制振システムで地震対策(資料:コンフォートハウスの資料を基に日経ホームビルダーが作成)

 被害が小さかった理由の一つとして考えられるのが、建物の耐震性能が高いこと。A邸の場合、壁量充足率が高いことに加え、採用した制振システムがさらに耐震性を高めた可能性も考えられる。制振システムは1階の室内壁内に4カ所設置している。国土交通省の大臣認定を取得していないが、同制振システムは1枚当たり壁倍率5倍に相当する。このことを考慮して存在壁量を計算すると、A邸は耐震等級2の性能を上回っていたと考えられる。

■本震襲来でも「子供起きず」

写真3 本震後に撮影されたA邸のリビング・ダイニングの様子。壁際に設置してあった棚なども倒れたりすることはなかった(写真:住まい手Aさんが提供)
画像の拡大

写真3 本震後に撮影されたA邸のリビング・ダイニングの様子。壁際に設置してあった棚なども倒れたりすることはなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

 だが、耐震性能だけでは説明が付きにくい現象がA邸では起こっている。一つは室内の物がほとんど倒れなかったことだ(写真3)。

 制振システムは、躯体の変形量を抑えるのが特徴だ。免震のように、地震の揺れ自体を低減するものではない。ただ、壁が大きく変形しなければ、壁際の家具などが押し倒されることも少なく、壁につくり付けた棚の揺れ幅が抑えられる効果も考えられる。物が散乱しなかったことも説明できそうだ。

 本震の際にAさん一家が2階で体験したことも、その裏付けになりそうだ。「揺れは感じたものの、子供たちは目を覚ますことなく寝ていた」とAさん。2階では、制振システムが変形量を抑えた効果がより感じられた可能性も考えられる。

 室内の壁の被害が、熊本地震での一般的な状況と比べると小さいことにも注目したい。クラックが入りやすい塗り壁や、設備機器との取り合い部などは、前震と本震の2度の大地震に遭遇していながら、ひびや割れが生じなかった(写真4、写真5)。

写真4 塗り壁は地震などでクラックが入りやすい建材だ。だが、本震後、窓まわりを確認してもクラックは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)
画像の拡大

写真4 塗り壁は地震などでクラックが入りやすい建材だ。だが、本震後、窓まわりを確認してもクラックは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

写真5 キッチンの上部には天井付けの換気設備が取り付けられていたが、本震後に確認しても、取り合い部にクラックなどは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)
画像の拡大

写真5 キッチンの上部には天井付けの換気設備が取り付けられていたが、本震後に確認しても、取り合い部にクラックなどは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 次へ
共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

日経BPの関連記事

【PR】

ニュースの深層 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

北海道豪雨では多くの畑が被害を受けた(2016年8月31日、北海道北見市)

北海道で「気候変動予測」加味した水防災対策 [有料会員限定]

 2016年8月に北海道を襲った一連の台風による「北海道豪雨」は、これまでにない新たな課題も浮かび上がらせた。氾濫流による農業被害である。四つの台風による被害面積は4万ヘクタール弱。農作物が浸水や流失…続き (4/21)

写真6 白花橋の近くに架かる川上橋。橋が周辺の土地よりも低い谷地形に架かっていたため、雨水が集まり、橋台背面土を洗い流した(写真:北見工業大学)

少雨地帯が先駆ける新・水防災対策、北海道豪雨の教訓 [有料会員限定]

 堤防や橋台背面の浸食、盛り土の崩壊、落橋――。2016年8月に北海道を襲った一連の台風による豪雨は、過去の水害と比べて人的被害がそれほど大きくなかったものの、今後の河川事業に重要な教訓が詰まっている…続き (4/20)

図3 離陸する飛行試験機2号機。2017年1月5日には、米国ワシントン州のグラント・カウンティ国際空港を発着する飛行試験を開始した。現在、4機体制で飛行試験を実施している(写真:三菱航空機)

三菱重工、知見不足が招いたMRJ5度目の延期 [有料会員限定]

 ジェット旅客機「MRJ」の量産初号機の引き渡し時期は2020年半ばに変更――。三菱重工業と三菱航空機(愛知県豊山町)は5回目の納入時期変更を2017年1月23日に発表した(図1)。2015年12月時…続き (4/7)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年4月28日付

2017年4月28日付

・プログラミング技術高い学生、面接行くと支援金 ギノ、IT企業の採用後押し
・旭化成 深紫外線LEDで殺菌 窒化アルミニウム活用
・メタウォーター、カンボジアで省エネ設備 浄水場ポンプの消費電力削減
・三井化学、化学品製造に使う触媒酵素、社外向けに開発
・ALSOK、水害時の避難を支援 介護施設の計画づくりや訓練…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト