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検証、熊本地震で食器1つ落ちなかった住宅

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2016/10/18 6:30
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日経ホームビルダー

 2016年4月に発生した熊本地震以来、繰り返しの地震に耐え、住み続けられる家づくりに対する意識が高まっている。その対策の一つとして注目されているのが、制振システムだ。制振システムは、躯体(くたい)の変形を抑えることで、家の躯体自体へのダメージを低減する。装置が地震のエネルギーを吸収し、変形量を抑えるのが基本的な仕組みだ。また耐力壁とは異なり、変形後も元に戻り、再び変形を抑える減衰力を発揮。繰り返しの地震に対応できる特徴を持つ。

 大地震動が繰り返し発生した場合、この制振システムを採用した家はどのような状態になるのか――。その答えのヒントを探るべく、熊本地震に遭遇した制振住宅に住むAさんに、当時の状況などを尋ねた。

 熊本地震が発生してから半年。この節目に改めて住み続けられる家づくりについて考える。

■隣の実家は物が散乱

写真1 A邸で本震後に撮影されたキッチンの様子。棚から食器が落ちるなどの被害はなかった。本震後は、両親や親戚などがA邸に集まり、避難所としての役目を担っていたという。住まい手に与える安心感は強かったようだ(写真:住まい手Aさんが提供)
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写真1 A邸で本震後に撮影されたキッチンの様子。棚から食器が落ちるなどの被害はなかった。本震後は、両親や親戚などがA邸に集まり、避難所としての役目を担っていたという。住まい手に与える安心感は強かったようだ(写真:住まい手Aさんが提供)

 熊本市南区川尻に住むAさん(30歳代)一家は、Aさん夫婦のほか、生後約半年と2歳の子供と共に暮らしている。家は2015年10月に竣工したばかり。「今後50年以内に大地震が起こる確率の高さをニュースで知って、家を建てるなら対策が必要と考えた」というAさんは、ハウスメーカーや工務店を巡り、地震への対応を比較検討。最終的に制振システムを採用した住宅を建てるに至った。

 そんなAさんの家(A邸)を、2度の大きな地震が襲った。4月14日に熊本地方で発生したマグニチュード(M)6.5の前震と、4月16日のM7.3の本震だ。

 本震の際は、2階にある寝室で家族そろって寝ていたというAさん。揺れが収まってから被害状況を確認したところ、室内は物がほとんど倒れていなかったほか、壁に目立つようなクラックも見当たらなかった(写真1)。翌朝もう一度被害状況を確認したところ、「不安定な台の上に乗せていた液晶テレビが倒れていたのと、冷蔵庫が2~3cm動いていた程度だった」と振り返る。

 ところが、すぐ隣に建つAさんの実家では、A邸とは対照的に、地震による惨状が広がっていた(写真2)。棚が倒れ、あらゆる物が床に散乱。足の踏み場もない状態だった。

写真2 A邸の隣りに建つAさんの実家(築約30年の木造軸組工法)の本震後の様子。2階の部屋では本棚が倒れ本が散乱していた(写真:住まい手Aさんが提供)
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写真2 A邸の隣りに建つAさんの実家(築約30年の木造軸組工法)の本震後の様子。2階の部屋では本棚が倒れ本が散乱していた(写真:住まい手Aさんが提供)

■塗り壁にクラックもなし

 Aさんが住む熊本市南区川尻は、JR熊本駅から南に約6kmの距離にある地区だ。気象庁の発表によると、本震の際に近隣地区の城南町や富合町で震度6弱を記録。だがAさんは、「すぐ近くに建つ造り酒屋の蔵では、酒造用の大きなタンクが本震で倒れた。川尻では震度6強ぐらいの強い揺れだったと感じている」と説明する。

 そんな大きな揺れを2回も受けていながら、なぜA邸では被害がほとんどなかったのだろうか。

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