Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]ベネズエラ危機は深刻な段階に(社説)

2016/8/19 14:30
共有
保存
印刷
その他

Financial Times

 テロ、「不公正な」貿易協定、そして、移民問題。これらが米大統領選の議論の主要テーマで、外交政策にかかわる問題はほとんどない。だが、これまで取り上げられていない外交問題が浮かび上がる可能性がある。それはベネズエラだ。ベネズエラは長い間「眠れる犬」だった。周辺国はうるさ型のベネズエラが眠っていてくれたほうがありがたい。だが、それはもうあまり長くは続かないかもしれない。ベネズエラの複合的な危機が国際問題化しつつあるからだ。

 今月、ベルリンの壁の崩壊をほうふつとさせる光景が見られた。15万人以上のベネズエラ国民が国内で手に入らない食料や薬などの生活必需品を求めて、それまで閉鎖されていたコロンビアとの国境を通過したのだ。難民申請を希望するベネズエラ人の数は急増した。5月時点の米国への難民申請者数は昨年同時期の2倍となった。ブラジルとガイアナも食料を求めるベネズエラからの難民を国外退去させているという。

 一方で、ベネズエラではマラリアが再発生している。同国は1961年に人口密集地域からマラリアを世界で初めて根絶した国となったが、それ以来のことだ。他の疾病も発生する可能性があり、公衆衛生の管理が脅かされている。また、同国は違法薬物の密輸で、北は米国、東はブラジルやアフリカ、そしてその先の欧州への中継点にもなっている。

 ベネズエラは批判されると、その問題の存在を否定するか、他に責任を転嫁するのが常だ。潘基文(バン・キムン)国連事務総長は今月、「政情不安定」が原因で同国で頭をもたげている「人道危機」について「非常に懸念している」と述べた。これに対しベネズエラ国連大使は、潘氏の表現を「奇妙だ」と述べ、潘氏の情報の出所に疑問を呈した。つい最近では、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイの3国は、ベネズエラが「メルコスル(南米南部共同市場)」の持ち回り議長国へ就任することを阻んだ。ブラジル外相は「ベネズエラは自国の面倒さえみきれていない」と述べている。これに対し、ベネズエラのマドゥロ大統領は、メルコスルは「右派の暴徒」に乗っ取られたと、同氏ならではの反応を示した。

 ベネズエラは新政権を樹立する必要があり、それは2018年の議会選挙の前でなければならない。幸い、迅速な政権移行を可能にする憲法上の手続きで、大統領の罷免の是非を問う国民投票を実施することができる。マドゥロ氏は当然、自身が追放されかねないため、この野党主導の動きに抵抗している。同氏の管理下にある政府当局がその手続きを止めてはいるものの、完全に中止されたわけではない。このことは、同氏が支持基盤だと主張するチャビスタ(チャベス前大統領の支持者)の間でさえも同氏が支持を失っていることを裏付けている。7月の世論調査では、チャビスタの7%しか同氏の再選を望んでいないという結果が出ている。

 こうした状況でマドゥロ大統領の退任は避けられない。国民のほとんど誰もが同氏が去ることを願っている。大きな問題はそれをどう実現するかだ。来年1月10日までに国民投票が行われれば、改めて議会選挙が実施されるだろう。それは野党と南半球の有力な国々が望んでいることだ。国民投票がそれ以降になれば、マドゥロ政権の副大統領が残る任期を全うすることになる。新しい展開があれば、もっと早い段階で変化を引き起こす可能性もある。

 野党は9月1日に大規模集会を開く予定だ。これまでどおりなら、どちらの陣営からもならず者らの勢力がデモ行進を混乱に陥れることが考えられる。陸軍や国家警備隊が秩序回復のために市民に向けて発砲することはあるだろうか。それはあり得る。そして、もしそうなれば、国際社会はどう反応するだろうか。

 カラカスで流血の事態があれば、米大統領選の議論の内容も変わる可能性がある。さらに重要なのは、中南米諸国が積極的に対応することだ。野党と政権側の話し合いを仲立ちしようとしている南米諸国連合(UNASUR)が有力な役割を担おう。ただ、UNASURがベネズエラにさらに深く関わることになれば、これは非常に皮肉なことだ。マドゥロ氏が師と仰ぐチャベス氏は、12年前にUNASURの共同創設者となった際、同連合を南米における「蛮行に立ち向かう甲冑(かっちゅう)」だと宣言した。国際社会がベネズエラの悲惨な状況を救う手助けができなければ、この言葉はチャベス氏の言葉の中で一番真実に近い言葉となるだろう。

(2016年8月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

11日、米ニュージャージーで北朝鮮のミサイル問題について報道陣に語るトランプ米大統領=ロイター

ロイター

[FT]米の再三の防衛誓約は日本の疑いの反映 [有料会員限定]

 ギリシャの哲学者プラトンは、聞こえのいい話を繰り返すことに害はないと言った。そしてきょう、米国は日本の防衛に対する責任を改めて確認する。トランプ米大統領就任以来、実に28回目となる。…続き (8/17)

米大手企業も米国のNAFTA離脱に懸念の声をあげ始めた(16日、NAFTA再交渉会合の記者会見後、握手を交わす左からライトハイザー米通商代表、フリーランド・カナダ外相、グアハルド・メキシコ経済相)=AP

AP

[FT]米カーギル、NAFTA離脱に反対表明 [有料会員限定]

 米穀物最大手のカーギルはトランプ米大統領に対し、北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱は、米国の経済と労働者に「破壊的」影響を及ぼす過ちになりかねないと警鐘を鳴らした。…続き (8/17)

パキスタンで燃やされるインド国旗。印パの建国の父たちは宗派対立は望んでいなかった=AP

AP

[FT]印パ分離独立70年、現代にも通じる教訓(社説) [有料会員限定]

 今週、インドとパキスタンでは祝賀と哀悼が絡み合っている。両国は大英帝国植民地からの独立と目覚ましい経済発展を祝う一方、ヒンズー教徒が多数を占めるインドとイスラム教徒が圧倒的に多いパキスタンに分割され…続き (8/17)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<8/14の予定>
  • 【国内】
  • 4~6月期の国内総生産(GDP)速報値(内閣府、8:50)
  • 8月のQUICK外為月次調査(11:00)
  • 7月の投信概況(投資信託協会、15:00)
  • 4~6月期決算=富士フイルム、出光興産
  • 【海外】
  • 7月の中国工業生産高(11:00)
  • 7月の中国小売売上高(11:00)
  • 1~7月の中国固定資産投資(11:00)
  • 1~7月の中国不動産開発投資(11:00)
  • タイ市場が休場
  • 7月のインド消費者物価指数(CPI)
  • 7月のインド卸売物価指数(WPI)
  • 6月のユーロ圏鉱工業生産(18:00)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/15の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 7月の首都圏・近畿圏のマンション市場動向(不動産経済研究所、13:00)
  • 6月の鉱工業生産指数確報(経産省、13:30)
  • 【海外】
  • 豪中銀理事会の議事要旨公表(1日開催分、10:30)
  • 4~6月期の独国内総生産(GDP、速報値)
  • 7月の英消費者物価指数(CPI、17:30)
  • 7月の米小売売上高(21:30)
  • 7月の米輸出入物価指数(21:30)
  • 8月の米ニューヨーク連銀製造業景況指数(21:30)
  • 6月の米企業在庫(23:00)
  • 8月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数(23:00)
  • 6月の対米証券投資(16日5:00)
  • 5~7月期決算=ホーム・デポ
  • 韓国とインドが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/16の予定>
  • 【国内】
  • 8月のQUICK短観(8:30)
  • 1年物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 7月の訪日外国人客数(日本政府観光局、16:00)
  • 【海外】
  • 6月の対米証券投資(5:00)
  • タイ中銀が政策金利を発表
  • 4~6月の英失業率(17:30)
  • 4~6月期のユーロ圏域内総生産(GDP)改定値(18:00)
  • 7月の米住宅着工件数(21:30)
  • 米エネルギー省の石油在庫統計(週間、23:30)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月25~26日開催分、17日3:00)
  • 5~7月期決算=シスコシステムズ
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/17の予定>
  • 【国内】
  • 7月の貿易統計速報(財務省、8:50)
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 5年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 【海外】
  • 7月の豪雇用統計(10:30)
  • 4~6月期のフィリピン国内総生産(GDP)
  • 7月の英小売売上高(17:30)
  • 6月のユーロ圏貿易収支(18:00)
  • 欧州中央銀行(ECB)理事会の議事要旨公表(7月20日開催分)
  • 米新規失業保険申請件数(週間、21:30)
  • 8月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(21:30)
  • 7月の米鉱工業生産(22:15)
  • 7月の米設備稼働率(22:15)
  • 7月の米景気先行指標総合指数(23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • 日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2、ワシントン)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(18日2:00)
  • カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が討議に参加(18日2:45)
  • 5~7月期決算=ウォルマート・ストアーズ
  • インドネシアが休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<8/18の予定>
  • 【国内】
  • なし
  • 【海外】
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(2:00)
  • カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が討議に参加(2:45)
  • 7月の中国70都市の新築住宅価格動向(10:30)
  • 4~6月期のマレーシア国内総生産(GDP)
  • 8月の米消費者態度指数(速報値、ミシガン大学調べ、23:00)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の初会合(ワシントン、20日まで)
  • カプラン・ダラス連銀総裁が討議に参加(23:15)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]