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揺らぐ耐震先進国 被害最小化へ、「高耐震化」急務

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2016/9/1 6:30
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日経アーキテクチュア

 2016年4月の熊本地震を経て、例年とは違う心持ちで今日の「防災の日」を迎えた読者は多いだろう。日経アーキテクチュアは、熊本地震から4カ月の間に明らかになった事実や調査結果を、日本全体の地震対策の現状と照らしつつ、「安心して暮らせる明日」への提言としてまとめた特集記事を最新号(8月25日号)に掲載した。ただ、建築の専門家だけでその提言を共有していても、社会の意識は大きくは変わらないため、同号を全国約1800の自治体の首長宛てに無償で送付した。ここでは、特集記事の中から一般の読者にも知ってもらいたい総括部分を紹介する。

 熊本地震は、「耐震先進国」である日本の建築物の信頼性を揺るがした。8000棟を超える住宅の全壊被害は、東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ被害の大きさだ(図1)。被災地で見られた建物被害の多くは、決して未知のものではない。過去の地震と同様の被害パターンが各所で繰り返された。

図1 過去の地震被害と想定される巨大地震被害の比較。熊本地震の被害は2016年8月3日時点。死者数は関連死を含む(資料:内閣府、総務省消防庁などの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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図1 過去の地震被害と想定される巨大地震被害の比較。熊本地震の被害は2016年8月3日時点。死者数は関連死を含む(資料:内閣府、総務省消防庁などの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 災害拠点の機能不全、支援物資の滞留、長期化する避難生活、大量に発生する災害廃棄物――。熊本地震の発生以降に次々と表面化した問題は、耐震化の重要性という原点を改めて突き付けた(図2)。

図2 建物被害が二次的被害を拡大する。熊本地震では、建築物の被害を起点に、災害拠点機能の喪失、避難の長期化、災害廃棄物の大量発生という問題が連鎖した。被害拡大を最小限にするには、大元の建築物の安全性を高めることが最も効果的だ(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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図2 建物被害が二次的被害を拡大する。熊本地震では、建築物の被害を起点に、災害拠点機能の喪失、避難の長期化、災害廃棄物の大量発生という問題が連鎖した。被害拡大を最小限にするには、大元の建築物の安全性を高めることが最も効果的だ(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 1981年の新耐震基準の導入から35年。だが、既存建築物の耐震性の問題は解消されていない。過去の震災で積み上げてきた教訓は生かされているのか。被害の実態から学ばなければ、震災は何度でも繰り返される。熊本地震の教訓を踏まえ、いかに建築・都市の安全性を高めていくか、建築界は今問われている。

■重要度に応じて耐震性高めよ

 建築基準法では大地震時に、人命保護のための倒壊防止を最低条件としている。地震後の建築・都市の機能維持という目標は、そこにはない。

 日本学術会議の分科会は2016年8月1日、「大都市を大地震から護る」と題する提言の素案を公表(図3)。「大都市を構成する建物やインフラは、社会的重要度に応じて耐震性を従来よりも高めるべきだ」と強調した。2016年内にも提言をまとめる予定だ。

図3 大震災の起こらない都市を目指せ。日本学術会議の分科会が8月1日のシンポジウムで発表した提言の素案。大都市の震災軽減につながる強靱な都市・社会の構築を目指す(資料:和田 章)
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図3 大震災の起こらない都市を目指せ。日本学術会議の分科会が8月1日のシンポジウムで発表した提言の素案。大都市の震災軽減につながる強靱な都市・社会の構築を目指す(資料:和田 章)

 素案作成に携わった和田章・東京工業大学名誉教授は「熊本地震では最大18万人が避難を余儀なくされたが、大都市で大規模地震が起こればさらに大変な被害になる。高耐震化推進のための社会システムの整備が必要だ」と指摘する。

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熊本地震では自治体の庁舎も被害を受けた

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