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「二重ローン救済策」が熊本地震で初適用

2016/5/9 23:00
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日経ホームビルダー

 熊本地震では、自然災害で住宅ローンなどの弁済が困難になった被災者が債務整理を行いやすくする制度が初めて適用される。債務整理後も信用情報が毀損しないので新たに住宅ローンを借りることができ、「二重ローン救済策」とも言われる制度だ。ただし、十分な資力のある被災者には適用されず、破産手続における「支払不能」または恐れのある場合に限られるので注意が必要だ。

 初適用になるのは、2016年4月に始まった「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」だ。全国銀行協会が中心になって2015年12月に作成した。この手続きを使えば、被災者は2000年に施行された「特定調停法」に基づく債務整理を行いやすくなる。破産法や民事再生法などに基づく法的倒産手続と違って、債務整理終了後も信用情報が毀損しないため、新たに住宅ローンを借りることも可能となる。工務店やビルダーにとっては、被災者の生活再建のために上手な活用方法をアドバイスしていくことが信頼獲得につながりそうだ。

 自然災害で自宅が被災して貸家を借りたり、仕事が続けられなくなって収入が途絶えたりして既存の住宅ローンの返済が困難になった場合、まずは金融機関に支払い猶予や返済条件の変更などを相談して弁済継続の可能性を探る。そのうえで被災者生活再建支援金や、死亡や重度障害で支給される災害弔慰金・障害見舞金のほか、地震保険の保険金や新規の住宅ローンなどを使って生活再建の基盤となる住宅の取得が可能かどうかを検討することになる。

 しかし、こうした方法が困難な場合、既存債務をいったん整理(免除)する手続きを取る。これには自己破産や会社倒産などの法的整理と、民事調停などの私的整理があるが、個人や個人事業主でも民事調停を利用しやすくするために制定されたのが特定調停法だ。その手続きは事案によって異なり複雑なため、とくに活用が見込まれる事案については個別にガイドラインを策定して利用者の便宜を図っている。

■弁護士などの費用を国が全額助成

 自然災害による被災者のためのガイドラインは、東日本大震災後に作成された個人版私的整理ガイドラインで1300件を超える債務整理が行われた実績を踏まえて、災害救助法が適用となる甚大な自然災害の被災者を対象に定められた。手続き支援を行う弁護士などの費用を国が全額助成(特定調停などの費用を除く)し、新たに特定調停のスキームを活用することで原則6カ月以内でスムーズに債務整理を終了できるようにするのが狙いだ。

 特定調停による債務整理を成立させるためには、債権者に対して財産状況を全て開示し、破産や民事再生の手続きと同等以上の債権回収を見込める「調停条項案」を提示して同意を得る必要がある。国・地方から支給される被災者生活再建支援金や、災害弔慰金・障害見舞金は差し押さえ禁止財産となるが、生活に欠かせない自由財産として手元に残せる現預金にも上限が設定される。原則として上限を超えた現預金や土地などの財産を処分して弁済に当てる必要があり、地震保険の保険金も裁判所の判断で弁済に回さなければならない可能性がある。

※<>内は手続きに要する時間の目安(資料:日経ホームビルダー)
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※<>内は手続きに要する時間の目安(資料:日経ホームビルダー)

 今回のガイドラインは「二重ローン救済策」とも言われるが、誰でも既存債務が免除され救済されるわけではなく、破産手続における「支払不能」またはおそれのある場合に限られる。十分な資力のある被災者には適用されない。まずは債務額が最も多いメーンの金融機関、またはフラット35の利用者は住宅金融支援機構の相談窓口に問い合わせて「支払不能」の状態かどうかを判断するのが近道だ。

■「二重ローン救済策」のフロー

 債務整理に着手する場合の手続きは、フローチャートに示す流れとなる。

 メーンの債権者から手続き着手の同意が得られれば、登録支援専門家を派遣する四つの団体(資料1)に依頼。専門家から連絡があったら、委嘱状を確認したうえで必要書類の作成作業に入る。必要書類(資料2)は債務整理の申出書が受領された後に追加できる場合もあるので、出来るだけ早く「弁済の一時停止」をしたい場合は債務整理の申し出を急ぐ必要があり、必要書類のうち事前に準備できるものはそろえておくのが良いだろう。

 調停条項案の作成では、全債権者と事前協議を行い、全債権者から同意を得られる弁済案を作成できるかどうかがポイントになる。同意の見通しが得られれば個別面談や債権者説明会を開催して調停事項案を提出し、全債権者から同意の回答を得たら、必要書類等(資料3)をそろえて簡易裁判所に特定調停を申し立てる。同意しない債権者がいても、その債権額が少額なら、その債権者を除く調停事項案で特定調停に持ち込める場合もある。

●登録支援専門家の依頼先(資料1
 (1)日本弁護士連合会および弁護士会
 (2)日本公認会計士協会および各地域会
 (3)日本税理士会連合会および各税理士会
 (4)日本不動産鑑定士協会連合会および不動産鑑定士協会

●債務整理申出書の必要書類など(資料2
 (1)住民票の写し
 (2)陳述書および添付資料(給与明細書・源泉徴収票・課税証明書の写しなど)
 (3)財産目録および添付資料(預貯金通帳・証書の写しなど)
 (4)債権者一覧表
 (5)家計収支表(直近2カ月)
 (6)事業収支実績表(直近6カ月)=事業者の場合
 (7)り災証明書、被災証明書など

●特定調停申立の必要書類など(資料3
 (1)特定調停申立書
 (2)特定債務者の資料など
 (3)関係権利者の一覧表
 (4)資格証明書
 (5)特定調停申立費用(数千円、債権者の数や減免額などで異なる)

 被災者の生活再建が進めば、いずれ一定の収入が得られるようになるだろう。その時に既存債務の整理が終了していれば、新たに住宅ローンを借りて新築しやすくなる。工務店や住宅会社も、被災者を支援しながら新しいガイドラインが実際にどのように運用できるのかを把握していく必要がありそうだ。

(ライター 千葉利宏)

[日経ホームビルダーWeb版 2016年5月9日掲載]


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