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コメ先物、逃げ水の本上場 JAの説得カギ

2017/8/13 0:30
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 大阪堂島商品取引所が申請したコメ先物の正式上場が延期となった。6年の試験期間を経て、満を持して政府に申請したが、価格形成への影響を懸念した自民党による政治介入で待ったがかかり、7日に試験上場の延長で決着した。卸大手や農家からはコメ先物の利便性を指摘する声も出ており、自民党の農林族を支えるJAグループを巻き込み、理解を得られるかが課題となる。

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 「コメは日本人にとって特別だと改めて思った」――。異例となる3度目の試験上場が決まり、堂島商取の岡本安明理事長は政治に振り回された心情を吐露した。承認への期待感が高かっただけに、落胆は大きい。

 7月21日の自民党農業プロジェクトチームの会合。座長の宮腰光寛議員は「民主党時代にスタートしたコメ先物は我々の求める政策と少し違う」とけん制し、堂島商取の関係者は肝を冷やした。

 旧民主党の政策へのアレルギーが強いのに加え、安倍政権の支持率低下も重なり、農林族議員の抵抗は再燃。「先物はリスクヘッジに必要」との意見が複数あったものの、同月27日に再度開いた会合で自民は「本上場の申請は認めがたい」と取りまとめた。

 正式上場を指す「本上場」は法律に基づき行政が判断する。農林水産省はコメ先物について「(試験期間の)取引量は全農産物のトップ」「未参加者も3割が試したいと回答」といったデータを示し、当初は認可に前向きだった。

 コメを生産する農家の姿勢も変わりつつあり、先物取引でコメ価格の変動に対応する農業法人も増えている。木津みずほ生産組合(新潟市)の坪谷利之代表は「先物市場で価格が乱高下するとの懸念は、コメが足りなかった時代の発想」と一蹴する。今や国内は年間8万トンペースでコメ需要が減っている。坪谷氏は45ヘクタールと大規模にコメを生産しており「損をしないためのヘッジが重要」と話す。

 一方で、守旧派の農林族は零細なコメ農家も票田だ。政策的なコメ価格の高値誘導を求める零細農家の要望が根強い中、価格が下がることも前提にした民間のリスクヘッジは政治力を阻むものと映る。国による減反政策が今年で終わるため、「来年産の米価をどう安定させるかが優先」(葉梨康弘議員)との声も多い。

 自民党の農林族を支えるJAグループは、まとめ役の全国農業協同組合中央会(全中)が反対の意見書を出したことがある。改革派の奥野長衛・前会長でさえ「コメを投機の対象としてはならない」とかたくなな姿勢を崩さない。

 グループ内の商社機能を担う全国農業協同組合連合会(全農)は、国内コメ流通の3割を握っている。現状では全農や地域のJAが参加しないと、先物取引は本格的な飛躍を見込みづらい。

 JAグループや農林族の理解を得るには「先物市場の参加者が増えれば、様々なショックを吸収できる」(西南学院大学の本間正義教授)との利点を共有できるかがカギだった。ところが、堂島商取は根回しを怠った。JAグループの幹部は「せめて投機を抑える方法について堂島が説明に来ればいいものを、あいさつもないから拍子抜けした」と明かす。

 堂島商取の幹部は「下手に動いて反対論が盛り上がるのを避けた」とふり返る。自民の会合で農水省は「投機による価格の急変動を抑える仕組みもある」と説明したが、勝負は既についていた。

 今後2年の試験上場期間内に堂島商取が取引を増やせても「本上場には不十分」と政治家が納得しない可能性も残る。先物への理解を深めてもらうための取り組みや、妥協点を見いだせる議論を尽くす必要がある。

(中西誠、今橋瑠璃華)

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