駐韓大使帰任 政府、強硬姿勢を転換

2017/4/4 1:29
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 韓国・釜山に設置された慰安婦問題を象徴する少女像を巡り、日本政府がとった駐韓大使の一時帰国という強硬策は、成果なく終わった。韓国では北朝鮮に融和的とみられる革新系政権が誕生する機運が高まっている。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の挑発が続くなか、日本政府には日韓関係をこれ以上、膠着状態に陥らせるべきではないとの判断が働いた。

 「この日しか残っていなかった」。外務省幹部は3日、長嶺安政駐韓大使の帰任発表を受け、こう漏らした。3日は韓国の最大野党「共に民主党」が大統領選候補に文在寅(ムン・ジェイン)前代表を選出する重要な節目の日とみて、大使帰任の判断に転じた。

 こうした政府の基本方針は、3月31日に安倍晋三首相と岸田文雄外相、杉山晋輔外務次官らが協議してほぼ固まった。首相周辺も3日、記者団に「ずっとタイミングを考えていた。大統領選の日程と候補者が決まる時だ」と打ち明けた。

 一方の韓国政府も打開策を探ってきた。2月のドイツ・ボンでは韓国側の要請を受け入れる形で日韓外相会談を開催。3月に入り、黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行兼首相が、2015年に安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)前大統領が合意した従軍慰安婦問題に関する日韓合意に関し「合意を実践していくべきだ」と発言した。ただ、日本政府が求めた「撤去への具体的な行動」(外務省幹部)には遠く及ばなかった。

 日韓合意を主導したのは朴前大統領だ。日本政府は朴氏が罷免を免れ、残り任期の間に撤去へ向けた権限を行使することに期待をかけていたが、3月に朴氏が罷免され、次期大統領選で保守系が劣勢な状況が強まった。「今の韓国の政治状況で撤去を直ちに実現することは難しい」(日本政府関係者)と、現実的な帰任判断を模索しはじめていた。

 決定的だったのは朴氏の逮捕だ。保守政権への風当たりが強まり、革新系政権の誕生する現実味が増した。一時帰国が5月の新政権発足後まで長引けば、帰任させるきっかけを失いかねない。そこで日本政府は韓国の新政権との人脈づくりや、現政権からの引き継ぎに期待をかける方針に転じた。政府関係者は「新政権が『反日』に傾く前に手を打つ必要があった」と語る。

 核実験やミサイルの発射準備を整える北朝鮮をめぐる緊張も高まっている。6、7日に米中首脳会談を控え、トランプ米大統領は「中国が北朝鮮問題を解決しなければ我々がする」と単独行動を辞さぬ構えに言及した。

 日韓議員連盟幹事長の河村建夫氏(自民)は記者団に、今回の帰任について「ギリギリのタイミングだ。このタイミングの帰還は良かった」と指摘した。もっとも、安倍首相周辺は「少女像の撤去の担保がないなか、中途半端な判断になってしまった」と、苦渋の決断だったと明かした。

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