熊野の外国人客拡大、陰で支える(次代の創造手)
田辺市熊野ツーリズムビューロー ブラッド・トウルさん(39)

2014/8/7 6:30
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■「宿の予約対応が日本語では… 受け入れ体制整えば来る」

 熊野古道で知られる世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を訪ねる海外からの観光客が後を絶たない。陰で支えるのが観光団体、田辺市熊野ツーリズムビューロー(和歌山県田辺市)の職員で、カナダ生まれのブラッド・トウルだ。

◎  ◎

 今夏、熊野本宮に近い宿の女将たちが外国人客のもてなしについて会合を持った。「ベジタリアンへの対応がわからない。肉、魚、香辛料、どれがよくてどれがだめなの」

外国人旅行客と旅館女将をつなぐブラッドさん(和歌山県田辺市)
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外国人旅行客と旅館女将をつなぐブラッドさん(和歌山県田辺市)

 指南役がブラッドだ。「ベジタリアンもいろいろで、魚はダメだが、すしは好きという人もいる。5つに区分けした表を作った」「今度、旅館側が対応できる(料理の)表も作ろうか」

 かつて「外国人客お断り」と考えていた熊野古道周辺の宿もあったが、状況は様変わりした。大浴場の看板の上に「Onsen Bath」の文字。フロントでは宿のサービスを日英併記したマニュアル「指さしツール」を使う。

 いずれもブラッドの発案だ。客にすべて合わせるのでなく、宿ができることを理解してもらう。「お互いにストレスがない。そうでないと長続きもしない」

 1999年、外国語指導助手(ALT)として、旧本宮町(現在の田辺市)へ。すぐに熊野古道の自然や歴史の魅力にひき付けられた。帰国後も愛知万博のスタッフや北海道でのスキーインストラクターとして来日し、仕事の合間に熊野を歩きまわった。

◎  ◎

 2004年、熊野古道が世界遺産に登録された。05年、本宮町などが合併し現在の田辺市が誕生、観光振興策を束ねる「田辺市熊野ツーリズムビューロー」が設立されることになった。ALTで滞在した縁で職員として声がかかり、二つ返事で引き受けた。

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 世界への情報発信を担うことになった。まず、迎える側の意識改革に取り組んだ。例えば「外国人は来ないから看板へのローマ字表記は不要」という宿に対してはこう訴えた。「それは逆。時刻表や宿の予約が日本語では、プランが立てられない。受け入れ体制を整えれば来るよ」

 英語のメニューを作ったり、シャンプーとリンスの英語のシール添付を助言したりした。提案を受け入れるところがポツポツと現れ、そうした宿を外国人客が訪れるようになる。

 湯の峰温泉の「旅館あづまや」女将で熊野本宮観光協会会長の菊池博子は「温泉の説明や食事内容を英語でどのように表現したらわかりやすいか、みてもらって助かった」と振り返る。

 田辺市中辺路町で「民宿ちかつゆ」を営む木下久はいう。「実際に客が増え、こんなところでも可能性があるんだと実感できた。彼の功績だ」

 ビューローは10年に第2種の旅行業免許を取得した。個人の好みに応じたコース提案や宿泊先の予約・決済までこなす旅行会社の機能も持った。13年の熊野本宮温泉郷の外国人宿泊数は2859人と過去最高を記録した。

 世界遺産の登録から10年。ブラッドは「いま持っているものを守ることが魅力を高める」と考える。受け入れ側に改善できるところはないのか。次なる10年、その先に向けて考えることは山ほどあるという。「夏休みはない。でも好きなことだから大丈夫」と笑う。=敬称略

(和歌山支局長 土田昌隆)

 

〈ばっくぼーん〉カナダで自然に親しむ
 もともとが自然派です。だから、この環境をすぐに受け入れられたのかもしれません。生まれはカナダ内陸部のサスカチワン州。3時間も4時間もハンドルを切る必要がないようなところです。大学を出た後も、カナディアンロッキーでハイキングガイドやスキーのインストラクターをやりました。
 暇ができればバックパックを背負ってアジアを歩きました。ヒマラヤに登ったこともあります。自然の中でずっと遊んでいた感じですね。
 好きだったスキーはこの3~4年、1度も行っていません。昔は毎日やっていたんだけど。夏休みも特に予定はありません。近くの河原でバーベキューをやるくらいかな。

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