「善玉ハッカー」学生チーム 神戸発、国際大会で活躍(ひと最前線)
サイバー防衛 腕競う

2015/11/26 6:00
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 サイバーセキュリティーの攻略法に精通し、対策の不備を企業などに指摘、向上に役立ててもらう「善玉ハッカー」。彼らが腕を競う大会で名をはせる神戸発のチームがある。中心メンバーは有数の進学校、灘高校(神戸市)の卒業生や在学生、京大の学生ら。その視野はセキュリティーにとどまらず、培った技能の活用を見すえる。

 チーム名は「イプシロン・デルタ」。解析学で極限を定義する論法のことだ。響きの良さから名付けたという矢倉大夢(19)は今春、灘高校から筑波大学に入学した。小学校時代にパソコンをいじり始め、灘中のパソコン研究部でプログラミングを始めた。その流れでのめり込んだのが「CTF(キャプチャー・ザ・フラッグ=旗取りゲーム)」だった。

 CTFはプログラミングや暗号の知識を総動員し、システムの中に隠された答え(フラッグ)を探し出す競技。攻防戦方式の大会では他チームのすきを見つけて攻撃し、自分たちの脆弱性を是正して防御する。一連のセキュリティー技術は、実際のサイバー攻撃への対応に通じる。

 早熟な矢倉は中2で情報処理推進機構(IPA)のセキュリティ人材育成キャンプに参加した。そこで出会ったのが、神戸市内の別の高校に通っていた山崎啓太郎(22、現在は京大工学部)だ。

 ゲームの改造からプログラミングに興味を持った山崎の得意技はアプリケーションソフトの開発。長時間の作業も苦にならず、普段もパソコンで作業する間に挙動のおかしいサイトなどを見つけて企業に伝えることが少なくない。アルバイトはアプリの受託開発だ。

 その山崎が「海外勢を含めても学生レベルではかなり高い能力がある」と評するのが、現役の灘高生、小池悠生(16)。矢倉の高校の後輩だが、フラットな人間関係も手伝って年上の矢倉を名前で「ヒロム」、山崎をあだ名の「チャゲ」と呼ぶ。10月に東京で開かれた情報セキュリティーの国際会議では講師も務めた。「僕よりすごい16歳は世の中にたくさんいる」と本人は謙遜するが、業界で注目を浴びる存在だ。

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 普段は別々に活動する3人だが、大きな大会があると「イプシロン・デルタ」としてCTFの腕を披露する。丸2日にわたることもある大会を仮眠でしのぎ、エネルギードリンクを片手に集中し続ける。2014年8月には別のチームと組み、米国で開かれた世界最大のイベント「DEFCON(デフコン)」にも出場した。今年は予選で敗退したが、矢倉は雪辱に向け「難しい過去問を解いて研さんしている」と話す。

 能力的には日本のサイバーセキュリティーを背負う彼らだが、自らの関心はセキュリティー以外に向き始めている。

 例えば矢倉が取り組むのは、聞きたい音楽を見つける推薦機能の開発だ。進学先に筑波大を選んだのも、近くにある産業技術総合研究所に同分野の研究員がいたから。特別に研究室に入れてもらい、学業との忙しい両立生活を送る。

 山崎も「もともとサービスやものを作るのが好き。セキュリティーにも関心はあるが、セキュリティー対策がなされた製品を開発するという手もある」と話す。小池も「今決めているのは『情報系の大学』に進み『情報系の仕事』につきたいということだけ。巡り合わせもあるし」。どのような形で結実するにせよ、それぞれがCTFで培った技能は次代に役立っていくはずだ。=敬称略

(神戸支社 下前俊輔)

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