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いにしえ探究 走る学者 古代学への情熱(1)
軌跡

2017/6/6 6:00
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 京都市の三条通りにシックなレンガ造りのビルが立つ。辰野金吾が設計した旧日本銀行京都支店(国重要文化財)だ。今は京都府京都文化博物館の別館となっているが、かつては古代史学者、角田文衛(1913~2008)率いる古代学協会が「平安博物館」として利用した。

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以前は「平安博物館」だった旧日本銀行京都支店(京都市)
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以前は「平安博物館」だった旧日本銀行京都支店(京都市)

 「古代学」。考古学と文献史学を融合し、世界的な視野に立つ自らの学問体系を角田はこう呼んだ。福島県に生まれ、京都帝国大学で考古学を学び、大阪市立大学助教授だった1951年に有志と立ち上げた学会が古代学協会だ。

 外国語に堪能で世界各地の古代史を研究。並行して紫式部ら平安期の人物研究にも打ち込むなど、学識と研究対象の幅広さで知られた。教えを受けた同志社女子大学教授の山田邦和は「史料を行間まで徹底的に読み込み、アクロバティックに論を組み立てた」とその学風を語る。

 学者らしからぬ大胆な行動力も群を抜いた。歴史と国文学専門の大学創設を目指して奔走したこともあった。大阪商工会議所会頭、杉道助の知遇を得て杉が発起人となり57年、協会を財団法人化。秘書として角田を50年間支えた西井芳子は「杉が経済界に声をかけ支援者が広がった」と説明する。

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古代学協会を率いた古代史学者の角田文衛=同協会提供
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古代学協会を率いた古代史学者の角田文衛=同協会提供

 日銀京都支店が移転し旧館が空いていると知った角田は、研究博物館への転用を思い立つ。経済人の後押しで日銀総裁と交渉し「代金は全国募金で充当」との異例の売却契約をまとめて68年、平安博物館が開館した。教授・助教授制を採り、ピーク時は約50人もの研究者が常勤や非常勤で在籍した。山田は「建物は古く資料を詰めた箱が各所に山積みだったが、一級の学者が自由に研究に取り組んでいた」と振り返る。

 館長に就いた角田は膨大な数の論文を著す傍ら毎週上京し、自ら企業を回って運営資金を集めた。最盛期には賛助会員約375社、会費収入は年9500万円に上った。「企業トップに研究や調査の意義を情熱一本やりで説明した」と西井。山田は、ワコール創業者の塚本幸一が「角田は金の話は一切しないが、出さないといけない気になる」とこぼすのを耳にした。

 だが財政は苦しく、重文である建物の保全のため86年閉館。資料ごと京都文化博物館へ移管し、協会は引き続き館内に拠点を構えた。今は公益財団として角田の情熱を継ぐ。(敬称略)

 大阪・文化担当 竹内義治が担当します。

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