名伯楽、門下生 花開く 若手トロンボーン奏者続々
呉信一、指導40年

2016/5/29 6:00
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 クラシック界で関西ゆかりのトロンボーン奏者の活躍が目立つ。金管楽器では花形のトランペットに比べて目立たないが、広い音域を持ち、オーケストラで様々な役割を担うトロンボーン。国内外で脚光を浴びる若手を育てたのは長く関西で演奏活動や指導に当たってきた名伯楽だ。

難度の高い曲やポップな曲など幅広い演奏を響かせた藤原功次郎(兵庫県川西市のみつなかホール)
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難度の高い曲やポップな曲など幅広い演奏を響かせた藤原功次郎(兵庫県川西市のみつなかホール)

 7日、川西市みつなかホール(兵庫県川西市)で、地元出身のトロンボーン奏者、藤原功次郎(31)のリサイタルが開かれた。シャンソン「愛の賛歌」や超絶技巧が求められる「チャルダッシュ」などを披露した。

 この楽器を本格的に始めたのは中学3年。ピアノや作曲を学んでいたが「オケを見て、トロンボーンの動きや中低音の響きに憧れた」。現在、日本フィルハーモニー交響楽団の首席を務め、年約40回ものリサイタルを開く。TBS系で放送中のドラマ「99.9―刑事専門弁護士」の劇中曲の演奏も担う売れっ子だ。

 トランペットに比べると、トロンボーンはソロで活動するのは難しい。「オケでホルンやトランペットが吹きやすい環境を作るのが仕事。リサイタルも作曲も劇中曲も、全てオケのためという気持ちでやっている」と藤原は話す。

現在も第一線で活躍する呉信一
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現在も第一線で活躍する呉信一

 その藤原が「関西トロンボーンのDNAの根本」と慕うのが、神戸市出身で大阪フィルハーモニー交響楽団首席や京都市立芸術大学教授などを務めた呉信一だ。藤原とは直接の師弟関係ではないが、共演は数多い。「太くて温かい響きに呉先生の人柄がにじんでいる」

 呉は一昨年、京都市芸大の教授を定年退職。現在もいずみシンフォニエッタ大阪などに所属し第一線で活躍する。指導で心掛けるのは「自分のコピーを作らないこと」と強調する。「僕の成功談より失敗談を聞かせる。人生に失敗はつきもの。自分なりに失敗を重ねた者が、いい奏者になれる」との信条を持つ。

 26日、京都コンサートホール(京都市左京区)の「おんがくア・ラ・カルト」に登場したのは辻姫子(26)。愛媛県出身で京都市芸大で呉に学んだ。同大大学院在学中に兵庫芸術文化センター管弦楽団に入り、昨年から東京フィルハーモニー交響楽団の副首席を務める。呉から「プロのオケマンとしての姿勢を学んだ」と振り返る。その指導を「1から10までではなく、1だけ教え2から10は自分で探させる」と説明する。

 7月1日にアクア文化ホール(大阪府豊中市)でリサイタルを開く玉木優(35)も呉門下生。兵庫県芦屋市出身で、現在は南デンマークフィルハーモニー管弦楽団の副首席だ。「呉先生は常におおらかな態度で接してくれるが、そんな中にも厳しさと情熱が感じられる」。今回の公演を「自分の音楽と純粋に見つめ合えるようになった。節目の演奏にしたい」と力を込める。

 トロンボーンはオケで時に前面に出たり、他の楽器の旋律のつなぎ役を務めたりと幅広い役割が求められる。呉は「今の若者は間接的に得た情報で演奏してしまう。本来は自分で考えることが大切」と指摘する。その上で「トロンボーン奏者に一匹オオカミはいない。互いの音を聞き合うアンサンブル能力が必要だから」と話す。自らの内面や楽器、他の奏者と謙虚に向き合うのが優れたトロンボーン奏者だ。40年以上教えてきた呉の遺伝子は脈々と受け継がれている。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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