ブルース半世紀 原点回帰 ギタリスト・内田勘太郎さん
新作アルバム、戦前古典への愛 今なら楽しんで演奏できる

2017/3/19 6:00
共有
保存
印刷
その他

 日本を代表するブルースバンド、憂歌団などの活動で知られる大阪市出身のギタリスト、内田勘太郎(63)が新作アルバム「ディープ・ボトル・ネック・ギター」(極東楽音)を発表した。自らの原点である米南部のデルタ・ブルースへの回帰を打ち出し、半世紀近いブルース探求の円熟味を感じさせる。

 「何かを長くやってると皆、原点に帰りたくなるのかな。ローリング・ストーンズの新作がブルースのカバーだと聞いて、そんなことを思った」。ベテラン同士の思わぬ共鳴に内田は笑顔をみせる。新作アルバムは歌の無いインスツルメンタルの曲が並ぶ。全曲がトレードマークといえる「カルピス」のびんを使ったボトルネック奏法だ。

 第2次大戦前にミシシッピ川流域など米南部で隆盛した弾き語りのデルタ・ブルースに照準を合わせた。「15歳の時から向き合ってきた音楽だが、今まではレコードではやっちゃいけないとどこかで封印していた。それが最近はストレートなブルースをやってもいい、やるのが楽しいという気持ちになってきた」と心境を明かす。

 1曲目「ミシシッピから遠く離れて」や3曲目「デルタ・ソング」といった曲にその意気込みが良く表れている。10代のころ大阪・心斎橋にあったレコード店「サカネ楽器」に通うようになり「ブルースという深い世界を探検するようになった。米国のRCAレーベルから出た古典に触れて、戦前にこんなすごい音楽があったんだと気付かされた」と振り返る。

 本格的なブルースの間に園まりの昭和歌謡「逢(あ)いたくて逢いたくて」、親交のあったムッシュかまやつ「どうにかなるさ」と邦楽のカバーが違和感なくはさまれる。自然体で様々なジャンルを飛び回る姿勢は交友の広さを物語る。

 ロックからポップスまでベテラン、若手を問わず共演を重ねてきた。「前は自分だけのオリジナルな音楽をやらなければと思っていた。でも今は好きなものをやれば、それが自分なりの音楽になる。何でもありなんだという意識がある」

 今回、録音に使ったのは長年の愛器である1970年製の「チャキP―1」。塗装もはげ落ちて年季が入っているがデビュー以前に憂歌団の盟友、木村充揮と交換した思い入れの深いギターだ。

 70年に憂歌団を結成する前から知り合い、大いに薫陶を受けたのが京都市で活動していたウエスト・ロード・ブルース・バンドのギタリスト、塩次伸二だった。セッションに誘われ共演するうちに、様々なブルースミュージシャンを知り、奏法にも開眼していく。

 ブルースというと、シンプルなコード(和音)進行にのっとってメンバー同士が延々とソロを続けていくというイメージがある。そういったセッションのし易さはブルースの大きな魅力だが、内田の演奏はひと味違う。ジャズ演奏などで使われる緊張感のあるコードを用いて、新鮮な響きをもたらすのが持ち味の一つ。

 「シンプルなコードでブルースだけっていうのは、自分としては面白くない。昔からジャズギタリストの演奏を聴いていたけれど、彼らはちょっとクール過ぎるところがある。その両方を聴いて色々と考えてきた」と話す。

 昨年出した初のエッセー集「ブルース漂流記」(リットーミュージック)からも、そんな融通無碍(ゆうずうむげ)の境地に達した音楽性がにじみ出る。「昔からブルースってのは名演はあっても名曲は無いと言われる。一人ひとりにブルースの精神があって、それが音楽ってことなんだ」と話す。4月10日に大阪市浪速区、同12日に兵庫県西宮市で公演する。

(大阪・文化担当 多田明)

共有
保存
印刷
その他

電子版トップ

【PR】

【PR】

主要ジャンル速報

北海道 7:01
7:00
東北 7:01
7:00
関東 7:01
7:01
東京 7:01
7:00
信越 7:02
7:01
東海 12:59
7:05
北陸 12:00
25日 7:01
関西 6:00
6:00
中国 12:00
6:02
四国 12:00
6:02
九州
沖縄
6:00
25日 22:09

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報