極小の間、休まず変化 カプセルホテル(未来への百景)
大阪市

2015/1/20付
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 寝具やテレビ、照明などをコンパクトに収めたカプセルホテルは今や「メード・イン・ジャパン」の優れ物として、海外でも知られている。ぎりぎりまで切り詰めた空間がかえって外国人の好奇心を誘うようだ。訪日外国人が急増する中、「泊まってみたい」と訪れる観光客が増えているという。

遮光カーテンを下ろすと幅約1メートル、奥行き約2メートルの個室ができあがる
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遮光カーテンを下ろすと幅約1メートル、奥行き約2メートルの個室ができあがる

 カプセルホテルの第1号は1979年、大阪・梅田に誕生した。手掛けたのはサウナを経営するニュージャパン観光(大阪市)。当時は高度成長期。「残業後のサラリーマンがサウナ店内のあちこちで仮眠をとっているのを見て、少しでも快適なスペースを提供したい」と考えた同社初代社長の中野幸雄氏と常務の見達和男氏が思いついた。

 当初は繊維強化プラスチック(FRP)を基本素材に使い、天井の隅などは丸みを帯びたデザイン。基本コンセプトは建築家の黒川紀章氏が担当し、家具メーカーのコトブキ(現コトブキシーティング、東京・千代田)が製造した。

 ニュージャパン観光と黒川氏らを結びつけたのは、70年に大阪府吹田市で開かれた大阪万博だった。「人類の未来と調和」をうたい、黒川氏はカプセル型住宅を提案。ニュージャパン観光はブースで輸入品を販売し、コトブキシーティングも会場のFRP製椅子などを手掛けたことが縁になった。

 開業時の宿泊料金は1泊1600円。「ビジネスホテルの半額以下に設定しよう。2倍のお客さんが来れば採算は合う、という算段だったと聞いています」とニュージャパン観光の中野好絵専務。深夜のタクシー代よりは安いと、人気を呼んだ。大阪の成功に触発され、東京など各大都市で同様の施設が相次いで開業した。

 誕生から36年を経てカプセルホテルは進化している。ニュージャパン観光が昨年7月、大阪・難波店の仮眠スペースを改装し、サウナやスポーツジムと一体で設けた区画がその一つ。コトブキシーティングが製造、内寸は幅1.05メートル、奥行き2.07メートル、高さ1.04メートルと各10センチ前後従来より広い。天井の隅を丸から角にして圧迫感を減らした。

 基本素材もFRPからアルミに変わった。一番の理由は「アルミの方がリサイクルしやすい」(コトブキシーティング)。

 快適さと環境への配慮。時代の要請に応えて、カプセルホテルは変わり続ける。

文 編集委員 小橋弘之

写真 伊藤航

〈取材手帳から〉 カプセルホテルは現在、全国で200軒弱が営業し、計約2万5000室あると推計される。製造最大手のコトブキシーティングによると、バブル崩壊後に営業軒数は6割ほど減ったが、この2、3年は引き合いが増えているという。
 低迷を脱した理由は、若者や女性、外国人の宿泊利用が増えているためだ。海外でも収益を見込める事業として着目する向きがあり、コトブキシーティングは今年からシンガポールやフランスで本格的に販売する方針だ。海外の一部では似た宿泊施設があるが、近い将来、純日本仕様のカプセルホテルが各国に広がるかもしれない。

〈カメラマン余話〉 新聞社には泊まり勤務がある。入社した頃の寝床は布団が硬く、空調も不十分でろくに眠れなかった。取材した最新型カプセルホテルは広く、軟らかな布団に枕が2つ。テレビも付いている。泊まりの設備がこうだったら、寝過ごしたかもしれない。

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