軽妙大阪弁、上方落語の粋 黒川博行、直木賞受賞作が映画化

2017/1/15 6:00
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 大阪府羽曳野市在住の直木賞作家、黒川博行の活躍が目立つ。ヤクザと堅気の2人組が登場する人気の疫病神シリーズで、同賞受賞作「破門」が映画化され、28日から全国公開される。シリーズ最新刊「喧嘩(すてごろ)」も出たばかり。アウトローに託して、大阪のディープな魅力を描き出す手法に迫った。

「破門」原作者の黒川博行(右)と監督の小林聖太郎(大阪市中央区)
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「破門」原作者の黒川博行(右)と監督の小林聖太郎(大阪市中央区)

 佐々木蔵之介演じるヤクザの桑原、横山裕ふんする建設コンサルタントの二宮。映画「破門 ふたりのヤクビョーガミ」は仕事も性格も対照的なデコボココンビが映画製作の出資金を持ち逃げされ、詐欺師を追いかけるうち、組同士の抗争に巻き込まれる。

 監督を務めた小林聖太郎は大阪市出身。佐々木、横山ら出演者も大半を関西出身で固めた。黒川作品最大の魅力である軽妙でディープな大阪弁が飛び交う。

 小林は黒川作品の重要な要素に「土地に対する嗅覚」を挙げる。「東横堀川沿いの空き倉庫、毛馬にある組事務所……。実際にそんな場所があるか知らないが、大阪の人間なら説明しなくても絵が浮かんでくる」

 撮影時も街の描写には細心の注意を払った。「雰囲気だけ出ればいいのではない。例えば国立文楽劇場近くのパーキングから車が出入りする時、堺筋に出るなら方向はこっちじゃないという具合。細かくてどうでもいいことかもしれないが、僕はそう思わない」

 1997年に第一作を発表し、ファンの間でも人気が高い疫病神シリーズ。現在6作が刊行され、最新作は昨年12月に出た「喧嘩」(KADOKAWA)だ。

 大阪府議会議員の補欠選を巡り、現職の事務所に火炎瓶が投げ込まれる。二宮が厄介な事件の解決を請け負うも、ヤクザが絡んでおり、桑原の手を借りることに。調べを進めるうち、背後でうごめく巨大な利権が浮かび上がる。

 こんな場面がある。ホテルのラウンジで二宮が「なにか食いたいんですけど」と言う。顔を合わせる度に食事をたかる二宮に「おまえはパブロフの犬か」と桑原が突っ込む。粗暴なやり取りの中に、ウイットや洗練がちりばめられている。

 黒川は「漫才のようだとよく言われるが、違う。自分では上方落語の独特の間や、落とし方を手本にしている」と明かす。実際、執筆時には1人パソコンの前で落語をしているという。

 「しゃべりにしゃべった後、皮も身も断って、残った骨だけが文章になる。書かれている5倍くらい話しているのでは」と笑う。息をもつかせぬ展開に定評があるが「全部を最初から構成することはない。切っ掛けさえしっかりしていれば、後は物語が転がっていく」。

 黒川作品は映画化されることが多いが「映画は原作者の手を離れた監督のもの」ときっぱり。その考えに沿って、小林は「悪役を際立たせて関係をわかりやすくした。また、二宮が人間的に少し成長する物語として背骨を通している。原作を知らなくても楽しめるはず」と話す。

 映画の現場からは一歩引いたような黒川だが、こっそり画面で存在感を示す。昨年話題になった「後妻業の女」と同じく、原作者のカメオ出演が「破門」のどこかに仕込まれている。「記念のアルバムみたいなもの。でも本当はヤクザ役とかやってみたい。向いてると思うんやけど」と相好を崩した。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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