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マグロ幼魚に手を焼く 海を耕す(2)
軌跡

2017/3/15 6:00
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 水産庁は6日、太平洋クロマグロの小型魚(30キロ未満)の漁獲量が規制上限値743.7トンの95%を超えたとして、沿岸漁業の九州西部ブロックに操業自粛を要請した。既に別の2ブロックにも同じ要請済み。乱獲で太平洋クロマグロは激減し、資源保護のため国際的な規制強化が進む。

和歌山県串本町で行われた養殖クロマグロの世界初の採卵(1979年6月)
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和歌山県串本町で行われた養殖クロマグロの世界初の採卵(1979年6月)

 漁獲したクロマグロの80%を消費する日本は早い段階から事態を危惧。水産庁は1970年、「マグロ類養殖技術開発企業化試験」事業を始め、近畿大学水産研究所も参画した。クロマグロの幼魚(ヨコワ)を生け捕りにし、養殖いけすで育てて採卵、人工ふ化とつなげ、第2世代を成魚まで育てて採卵できれば、完全養殖のサイクルが完成する。

 後に第3代水産研所長となる熊井英水が漁師たちに相談すると「ヨコワは手でつかむと指の跡から皮膚がただれて死ぬから無理」と口をそろえた。1人だけ「定置網にかかったヨコワをバケツですくい、船の水槽でしばらく飼った」と話す船頭がいた。その言葉を頼りにヨコワを飼育したが、やはり全滅を繰り返し、3年の試験期間が終わった。

 他の研究機関が撤退するなか、水産研はプロジェクト終了後も養殖したハマチやタイの売り上げを使って研究を続けた。「国立大学にはできない手法。私学の強みを発揮した」と熊井は語る。水槽の形状やエサなどを改良。74年から飼っていたヨコワは5年で体長1.5~2メートルのマグロに育った。79年6月、ついに世界初の養殖マグロによる自然産卵、受精に成功した。

 しかしふ化したクロマグロの子供は2年続けて全滅。83年からは産卵も途絶えた。91年ごろ熊井が手詰まりを報告すると、近大の第2代総長、世耕政隆は言った。「生き物は長い目で見ないといかんよ」。この一言が研究を救った。(敬称略)

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