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擬音語・擬態語多い大阪人 商人・お笑い魂どっさり(とことんサーチ)
ドーンと 交渉で臨場感 ずるずるっ 落語にリズム

2017/8/8 17:00
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 「この道、ドン、ドーンと行けばええ?」。ある日、タクシーに乗ると運転手から尋ねられた。大阪では日常生活で、こんな擬態語・擬音語(オノマトペ)をよく耳にする気がする。なぜだろう。

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 三島由紀夫も「文章読本」で「関西の人の方が、東京の人と比べると日常会話にも擬音詞をよく使います」と書いた。製薬会社のファイザーによる2013年のアンケート調査では、患者が痛みを医師らに伝えるのにオノマトペを使うかどうかを質問している。

 結果は「よくある」「ときどきある」と答えた人の割合は90%の京都府が1位で、大阪は6位(86.5%)。上位には関西が多いが、大阪人が一番使う印象があったので、やや意外だ。

 頻度を表す「ちょくちょく」を例に挙げ、梅田などの繁華街や取材先で出会った関西在住100人に日常会話で使うか尋ねた。この語は大阪出身のフリーアナウンサー、豊島美雪さんの共著「キュッと曲がって90度! 関西オノマトペ用例集」にも登場する。日常会話で使うことが「ある」「たまにある」と答えた人は京都出身は94%。大阪は75%、兵庫は71%だった。関西以外出身でも73%に上った。

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 しかし初対面の人との会話で使うか重ねて尋ねると、京都出身は39%、兵庫で46%にとどまった。一方、大阪出身だと63%に上った。関西以外出身だと13%にすぎない。

 豊島さんも「初対面の人にも使う。ラジオだとリスナーに近づこうとするほど使っている」と振り返る。大阪大学文学研究科の金水敏教授によると、オノマトペの使用頻度と人間関係の近さには相関関係があるとの研究が存在するという。大阪人は親しい間柄を構築するために多用する傾向があるのかもしれない。

 江戸時代、商人の町だった大阪。そこでは言葉による交渉がものを言う。しかし出し抜いて相手との関係が崩れてもいけない。上方文化評論家の福井栄一さんは「オノマトペで臨場感を持って話し、ウソはつかないけれど“話を盛る”独特のサービス精神が根付いた」と語る。商人間の潤滑油の役割を果たしていたのか。

高座で「時うどん」を語る桂文我さん。オノマトペがどんどん飛び出す
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高座で「時うどん」を語る桂文我さん。オノマトペがどんどん飛び出す

 福井さんは「オノマトペの多用など会話術が高度化し、『商都』に加えて『笑都』になった」と話す。お笑いともつながりがあるらしい。

 金水教授は、柳家小さんさんが語る江戸落語「時そば」と、桂文我さんによる上方落語「時うどん」を比べた。オノマトペの登場は江戸の2カ所に対し、上方が8カ所。「熱いうどんをずるずるっとよばれてしゅっと帰って……」などリズム感が面白い。

 文我さんに聞くと「落語でオノマトペを多用し始めたのは初代の桂春団治(1878~1934年)」と指摘する。それ以前の落語の文献では登場回数は少ないという。擬態語・擬音語が多いと臨場感が出てコント性が高まる。「当時流行していたポンチ絵を言葉で表すようなものだったのだろう」(文我さん)。初代・春団治が活躍したのは大正から昭和初期、大阪が栄華を極めた「大大阪時代」だ。

 金水教授によると「~でんな」「わて」といった大阪弁らしいコテコテの表現はこの頃に確立した。しかも「お笑いの言葉と、日常語は影響し合っているだろう」という。関西人、特に大阪人はお笑いのオノマトペを日常に取り込んでいるのかもしれない。

 オノマトペには“商都”と“笑都”の心意気が息づく。そう考えると、立派な文化遺産に思えてきた。どんどん使い、ぼちぼち守っていきたい。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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