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陰影復活 彫りと対話 竹笹堂の版木修復(ここに技あり)
京都市

2017/3/7 6:00
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 全国各地の寺社には、参拝者らに配る仏画や経典、お札などを刷った版木が数多く眠っている。京都市下京区にある木版工房「竹笹堂」は200年以上前に作られ、摩耗した版木を修復する作業を請け負う。長年使い込まれた版木と対話するかのように、職人が表面を確かめる。

ほこりや墨を取り除いた版木。指で触って彫りの深さや角度を確認する
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ほこりや墨を取り除いた版木。指で触って彫りの深さや角度を確認する

■200年で墨が固着

 版木は何度も刷ると表面に墨や膠(にかわ)がこびりつく。「墨が固着するのがだいたい200年。扱うのはそれ以前のものが多い」と刷り師でもある竹中健司社長(47)。

 作業はまず、版木を水や湯に漬けて墨を柔らかくする。1カ月のときもあれば、半年かかることも。化学薬品を使えば簡単だが、木が傷むので絶対にしない。柔らかくなった墨を、彫り師が彫刻刀で丁寧に取り除く。修復の前と後に刷った仏画を比べると、修復後は線が鮮やかに伸び、明らかに絵全体の力強さが増す。

 一から版木を作り直すこともある。現在依頼が来ているのは、鳥取県三朝町にある三仏寺の奥院、国宝の投入堂で見つかった版木だ。かつて寺が参拝者に配るため、投入堂周辺の山道を描いた絵を刷っていた。当初は墨の単色だと思われたが、後になって多色刷り木版画だと判明した。

 今回は色を重ねる版木が失われていたため、版画の完成品をもとに何度も推測を重ねて色版を制作していく。「年代、彫りの角度、刷りの方法など様々な情報をもとに復刻する」と竹中社長は明かす。

■カバー・帯地にも

 木版印刷業を営んでいた家業の「竹中木版」を引き継ぐ形で1999年に創業した。5年ほど前から版木の修復を開始。年2、3件だった依頼は、現在月2件程度に増え、全国各地から依頼が舞い込む。

 彫り師や刷り師、デザイナーら約10人を抱え、ブックカバー、きものの帯地なども手掛ける。CG(コンピューターグラフィックス)では表現できない木版ならではの風合いを好む顧客から注文がくる。

 竹中社長は「古い寺では檀家に仏画を配るため木版の技術が広がった。貴重な技や思いが詰まっているからこそ、版木をよみがえらせ、次代へつなげなければならない」と話す。

文 大阪・文化担当 安芸悟

写真 山本博文

〈カメラマンひとこと〉 版木をゆっくりとなぞる指が、彫りの特徴を見極めていく。繊細な手つきはまるで患者を触診する医師のようだ。全体の様子が分かるように作業台の上からカメラを構える。手元を照らす明かりが版木に半逆光で当たると、彫りの輪郭が浮かび上がった。

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